第二次討伐軍、開戦!知恵の砦 vs. 王国の物量
元魔王様のおかげで帰還はできましたが・・・
地平線を埋め尽くす、三万の軍勢。
バルドル宰相が、国の総力を結集して送り込んできた第二次討。伐軍の威容は、前回のそれとは比較にならなかった。大地を揺るがす行軍の響き、天を突く無数の軍旗、そして兵士たちがまとう鎧が反射する陽光が、まるで巨大な鉄の津波となって、俺たちの楽園に押し寄せてくるかのようだった。
先頭に立つのは、王国最強と謳われる重装騎士団。その両翼には、おびただしい数の弓兵部隊。そして後方には、俺たちの希望を打ち砕くかのように、巨大な投石機が十数台も不気味な姿を並べていた。
「……皮肉なものだな。俺が教えた兵器で、俺たちが滅ぼされようとは」
司令塔の櫓の上で、俺は自嘲気味に呟いた。
眼下のトーキョーの街は、静まり返っていた。女子供や老人は、ロングハウスを改造した地下シェルターへと避難を終えている。城壁の上には、武装した民兵たちが、固唾を飲んで、迫り来る脅威を見据えていた。彼らの顔に、恐怖の色はない。あるのは、自分たちの故郷を断固として守り抜くという、鋼の決意だけだ。
司令塔の櫓は、かつてないほどの緊張感に包まれていた。俺の隣には、百戦錬磨の騎士団長ダリウスが、望遠鏡を覗き込みながら静かに立っている。
「……布陣は、こちらの予想通りか」
俺が呟くと、ダリウスは頷いた。
「うむ。典型的な、力押しの陣形だ。奴らは、我々のことを、まだただの反乱農民の集まりだとなめている。……レオ、最終報告を」
ダリウスの低い声に、控えていたレオが進み出た。
「はっ! 食料、矢弾、共に三週間の籠城は可能です。それ以上は…」
「三週間か。十分すぎる。ギデオン、壁は?」
階下で待機していたギデオンが、力強く答える。
「へっ。いつでも。領主様の設計と、わしらの技、そしてゼオン様から頂いた魔鋼石。そう易々と破られてたまるもんですか。奴らが壁に取り付いた瞬間、地獄を見せてやりますわい」
ダリウスは、俺に向き直った。
「……アリアは、遊撃部隊を率いて、西門に配置完了したとの連絡だ。敵の主力が正門に集中した際、側面を突く手筈になっている」
「ああ、頼んだ」
リリアーナは、既に教会を改造した野戦病院で、負傷者を迎え入れる準備を整えている。俺は、決戦前に彼女が握らせてくれた、補修された星のお守りを胸のポケットの上から強く握りしめた。
「……皆、頼むぞ。俺たちの故郷だ。必ず、守り抜く」
やがて、敵陣から一騎の騎士が、伝令としてやってきた。
「反逆者ケンタに告ぐ! 我が主、バルドル宰相閣下は、貴殿らに最後通牒を与える! ただちに武器を捨て、勇者ガイ様を解放し、城門を開けよ! さすれば、首謀者たる貴殿以外の者の命は、保証しよう、と!」
俺は、メガホンを手に、櫓の上から答えた。
「ニホン国の領主、ケンタとして答えよう。我らの土地に、土足で踏み入る者に、告げる言葉はない! そして、我らの同胞を見捨てる領主は、この国にはいない! 帰りたければ、武器を捨てて、故郷へ帰るがいい!」
交渉は、決裂。俺の返答が、開戦の合図となった。
「領主様! 敵、投石開始!」
見張りの声と同時に、ヒュン、という空気を切り裂く音が、無数に聞こえてきた。そして、次の瞬間。ズウウウウン! という地響きと共に、巨大な岩石が街の外縁の森に次々と着弾した。木々が根こそぎ吹き飛ばされ土煙が上がる。俺たちが仕掛けた森の罠は、この無差別な絨毯爆撃によって、いとも容易く無力化されていく。
さらに、後方に陣取る魔術師団が、一斉に詠唱を開始した。空から、巨大な火球が雨のように降り注ぐ。そのいくつかは、城壁に着弾し、魔鋼石で補強された壁の表面を、赤熱させた。
「……やはり、小細工は通用しないか」
バルドルは、ガイの失敗から完全に学習している。力には、力。圧倒的な物量で、俺たちの知恵を真正面から粉砕するつもりだ。
「ギデオン! こちらの投石機で、応戦! 狙いは、敵の投石機だ! 一つでも多く、沈黙させろ!」
「応!」
ギデオンの号令一下、俺たちが作った数少ない投石機が、唸りを上げて火を噴いた。だが、その反撃は、敵の魔術師団が展開した巨大な魔法障壁によって、いとも容易く防がれてしまった。
「くそっ……!」
攻守共に、完全に、手詰まりだった。
攻守共に手詰まり状態・・・
どうする!?
明日も19時に
どうぞよろしくお願いいたします。




