トーキョーの理念を賭けた王都潜入作戦
ケンタの核心的な問いかけに、ガイの心は・・・
フィンの報せは、トーキョーの街に、目前に迫った破滅の足音を、明確に刻みつけていた。だが、その情報の中の一節が、俺の心を、鉛のような重さで苛んでいた。
『アリア様を「敵に魅入られた裏切り者」として、騎士団の指揮権を剥奪、王城の南塔に幽閉』
「……馬鹿な真似を」
俺たちのために、彼女は、全てを賭けてくれたのだ。その結果が、牢獄。このまま彼女を見捨てて、自分たちだけが籠城戦に備えるなど、俺の、そして、俺たちが築き上げてきたこのニホン国の理念が、許さなかった。
「……助けに行こう」
俺のその一言に、作戦会議室として使っているロングハウスに集まった幹部たちが、息を呑んだ。
「正気ですか、領主様!」
レオが、血相を変えて反対する。
「敵の本拠地に、わざわざ乗り込むなど、自殺行為です!」
「だが、彼女は、俺たちの恩人だ。恩人を、見殺しにはできない」
その時、静かに会議の様子を見ていたリリアーナが、口を開いた。
「……私も、ケンタ様に賛成です。アリア様は、自らの危険を顧みず、私達に未来を繋いでくださいました。その恩に、私達は、誠意をもって応えるべきです」
リリアーナの言葉が、会議の空気を決定づけた。
作戦は、無謀、そのものだった。
目的は、王都に潜入し、アリアを救出、そして、王国軍が出陣する前に、可能な限りの混乱を引き起こすこと。
俺は、ゼオンから貰った「念話石」で、密偵フィンと、慎重に連絡を取った。彼からもたらされた、アリアが幽閉されている南塔の警備状況と、城内の見取り図。それらを元に、俺は、侵入経路と脱出経路を、緻密に描き出していく。
そして、問題は、人選だった。この自殺行に、誰を連れていくか。
ゲリラ戦の達人であるボルグの息子、俊敏な元斥候兵たち。数名の精鋭を選び抜いた、その時だった。
「……俺を、連れていけ」
声の主は、ガイだった。捕虜の身ではあるが、今は、街の中で、監視付きながらも、比較的自由に過ごさせている。
「お前を?」
「俺は、あの城の全てを知っている。どこに秘密の通路があり、どこに見張りの死角があるか、全て、頭に入っている。俺がいれば、作戦の成功率は、格段に上がるはずだ」
彼の目は、真剣だった。
「……これは、俺の、贖罪だ。俺は、あんたに、そして、この街の人々に、取り返しのつかないことをした。だが、もし、俺が、アリア殿を救い出すことで、その罪の、ほんの一欠片でも償えるのなら……。俺のこの力を、今度こそ、守るべきもののために、使わせてほしい」
俺は、彼の目を、じっと見つめた。そこにはもう、嫉妬に狂った、愚かな若者の姿はなかった。自らの過ちと向き合い、それでも、再び立ち上がろうとする、一人の、不器用な男がいるだけだった。
「……分かった。信じるぞ、ガイ」
偽りの英雄の贖罪・・・
明日も19時に更新します。
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