トーキョー独立戦争、勃発の瞬間
迷いを断ち切って、戦え!
そして、運命の日は、あまりにもあっけなく訪れた。
「東の森から、大軍です! 旗印は……アストリア王国! 数は、およそ一万!」
見張り台の兵士が、鐘を乱打しながら叫ぶ。
来たか。
俺は、アラタとリリアーナに別れを告げると、すぐさま司令塔と定めた街で最も高い櫓へと駆け上がった。眼下では、レオの号令一下、街の人々が慌てることなく、定められた配置へと散っていく。この日のために、俺たちは準備を重ねてきたのだ。
俺が、ダリウスから譲り受けた上等な望遠鏡を東に向けると、地平線の向こうから、黒い津波のように押し寄せる軍勢の姿が見えた。整然と翻る、アストリア王家の獅子の紋章。その先頭で、朝日を浴びて黄金に輝く鎧をまとった一団が、ひときわ目立っていた。
その中心にいる、一際豪奢な鎧の騎士。あれが、新しい勇者ガイ。
そして、俺は息を呑んだ。そのガイの隣で、不本意そうな、苦渋に満ちた表情で馬を駆る、真紅の髪の女騎士。
「……アリア」
彼女もまた、騎士としての忠誠と、己の信条との間で、引き裂かれながら、この場所にいるのだろう。
俺は、櫓の最上階から、街の全住民に向けて声を張り上げた。俺の声は、簡易的な拡声器の原理を応用したメガホンによって、街の隅々まで届く。
「トーキョーの、いや、ニホンの国民よ! 聞け!」
全ての動きが、ぴたりと止まる。
「王都の軍が、我らの土地を奪いに来た! 王は、己の欲望のために我らを追放した宰相の言葉に惑わされ、我らを反逆者と断じた! だが、我らは反逆者ではない!」
俺は、言葉を続ける。
「我らは、この手で、不毛の荒野を豊かな楽園に変えた開拓者だ! 我らは、生まれや身分ではなく、汗と知恵によって、平和を築き上げた誇り高き民だ! この土地は、王から与えられたものではない! 我ら自身が、血と汗と涙で創り上げた、我らの故郷だ!」
そうだ、と、あちこちから声が上がる。
「故郷を、家族を、我らの手で築いたこの平和を、理不尽な暴力に踏みにじられて、黙っているのか!」
「「「否!!」」」
地鳴りのような雄叫びが、街を揺るがした。
「ならば、戦え! 知恵と、勇気と、この故郷への愛を武器に! 我らの国を、我らの手で守るのだ!」
士気は、最高潮に達した。
我らは反逆者ではないーー!!
明日の19時にアップします。
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