生命の季節と、静かなる要塞
この美しい場所を守るために戦え!
春が来た。
魔の森、いや、俺たちのニホン国の始まりの地を覆っていた雪が解け、黒い大地に若草が芽吹き始める、生命の季節。アラタは、生まれて初めて見る蝶々を、きゃっきゃと声を上げて追いかけていた。リリアーナの畑では、冬を越した麦の穂が、力強く天を突き刺すように伸びている。
だが、その穏やかな風景とは裏腹に、俺たちのトーキョーの街には、静かな緊張が張り詰めていた。建設を終えたばかりの城壁の上では、見張り櫓の数を倍にし、民兵たちが交代で、昼夜を問わず東の空を監視している。女子供までが、有事の際の避難訓練を繰り返し、その動きに無駄はない。男たちは、農具を置けば、すぐさま民兵として武器を取れるよう、常にその傍らに槍や弓を置いていた。
決戦の前夜、俺は完成した城壁の上を、一人歩いていた。眼下には、俺たちの街が、光るキノコの柔らかな明かりに照らされて、静かに息づいている。この光景を、俺は守らなければならない。
「領主様」
声をかけてきたのは、ギデオンだった。彼の手には、ゼオンの魔鋼石を使って改良された、城門の仕掛けの最終設計図が握られている。
「準備は、万端です。奴らがいつ来ようと、度肝を抜いてやる準備はできておりますわい」
「頼むぞ、ギデオン」
次に訪れたのは、民兵たちの詰め所だった。ボルグの息子をはじめ、若い兵士たちが、黙々と矢羽を整え、槍を磨いている。彼らの顔に恐怖の色はなかった。
「俺たちの家族も、畑も、全部、あの壁の内側にある。一歩だって、踏み込ませるわけにはいかねえんだ」
ボルグが、静かに、しかし力強く言った。
そして最後に、俺は我が家へと戻った。リリアーナは、眠るアラタのそばで、静かに何かを縫っていた。それは、俺が初めてこの世界に来て、戦場へ向かう時に彼女がくれた、あの、星の刺繍のお守りだった。古い布は、新しい糸で、丁寧に補修されている。
「……また、作ってくれたのか」
「はい。あなたの、お守りですから」
彼女は、そっとそれを俺の手に握らせた。
「必ず、ご無事で。アラタと、お待ちしております」
その言葉が、俺の最後の迷いを断ち切った。
いよいよ、この時が来てしまった・・・
どうやって戦う!?
明日も19時に更新します!
どうぞよろしくお願いいたします。




