「ニホン」建国宣言!!
力ではなく、知恵で、故郷を守れ!
ゼオンが嵐のように去っていった夜。
俺は、ギデオンたちが建設を進めている、街で最も高い場所にある見張り櫓の上に、一人立っていた。
眼下には、冬の静寂に包まれた俺たちのトーキョーの街が、光るキノコの柔らかな明かりに照らされて、美しく広がっている。家々からは、夕食の匂いが立ち上り、新しくできた酒場からは、男たちのささやかな歌声が聞こえてくる。黄金色に輝く広大な水田は雪に覆われ、整然と区画された畑も冬の眠りについている。そして、全てを優しく包み込む、湯けむりを上げる温泉。
俺が、俺たちが、この一年で、ゼロから築き上げた全てだ。
「……あなた」
不意に、背後から温かいマントをかけられた。リリアーナだった。
「こんなところで、何をなさっているのです? 冷えますわ」
「ああ、すまない。少し、考え事を」
リリアーナは、何も言わずに、俺の隣に寄り添った。彼女には、俺が何に悩んでいるか、お見通しなのだろう。
「……怖いですか?」
と、彼女が静かに尋ねた。
「ああ、怖いさ」
俺は、正直に答えた。
「俺は、戦士じゃない。ただの本屋だ。人の命が失われるのも、この街が壊されるのも、考えるだけで、怖い。だがな……」
俺は、リリアーナのお腹に、そっと手を当てた。そこには、俺たちの二人目の子供が、宿っている。
「それ以上に、この子たちの未来が奪われることの方が、もっと怖いんだ」
俺は、眼下の街を見下ろしながら、静かに語り始めた。
「王都の連中は、この場所を、反逆者の砦だと思っている。富を独占し、魔族と手を組む、危険な場所だと」
「……」
「だが、奴らは何も分かっていない。ここは、砦じゃない。俺たちの、家だ」
俺は、リリアーナの肩を、そっと抱いた。
「ここは、生まれや身分で人が差別されることのない、新しい国の始まりなんだ」
「新しい、国……」
リリアーナが、俺の言葉を繰り返す。
「ああ。俺の故郷……日本が、そうだった。いや、そうあろうとしていた国だった。王や貴族なんていない。誰もが、努力すれば、自分の未来を切り拓くことができた」
俺は、リリアーナの瞳を見つめ、決意を込めて言った。
「……そうだ。だから、そう名付けよう。俺の故郷の名を、この国の、未来の名前にする。いつか、このトーキョーが首都となり、大陸中の誰もが憧れる、自由で豊かな国……『ニホン』を、この地に建国するんだ」
それは、俺が初めて、自分の野望を明確に口にした瞬間だった。ただ、平穏に暮らしたい、というささやかな願いではない。この理不尽な世界に、俺の故郷の理念を根付かせ、新しい国を創り上げるという、途方もない野望。
リリアーナは、驚くかと思った。だが、彼女は、ただ穏やかに微笑んで、俺の言葉に頷いた。
「ええ。あなたと、アラタと、この子と、そして皆と共に。この『ニホン』を、世界一、幸せな国にしましょう」
俺たちは、迫り来る戦乱の気配の中、二人、寄り添って、俺たちの街を見下ろしていた。
もう、恐怖はない。あるのは、愛する家族と、守るべき国民、そして、共に未来を創るという、鋼鉄の決意だけだった。
春は、もうすぐそこまで迫っていた。
砦ではなく、家だーーー!!
春が来る。つまり・・・
明日から新章に入ります。19時更新。
どうぞよろしくお願いいたします!!




