「ニホン国」大防衛構想
小さな命が誕生しました。
アラタが生まれて、最初の秋が訪れた。
俺の息子は、トーキョーの街の希望の光だった。彼が初めて笑った日、初めて「あー」と声を発した日、その一つ一つが、日に日に緊張を増していく街の、唯一の癒やしだった。
リリアーナの腕の中で健やかに眠るアラタの顔を見るたびに、俺は決意を新たにする。この子の未来を、このささやかな幸福を、何としても守り抜かなければならない、と。
アリアとフィンがもたらした警告は、俺たちの楽園に、長い冬の到来を告げていた。雪が溶ける春、王国軍は、必ず来る。俺たちに残された時間は、この冬だけだ。
トーキョーは今、街全体が、巨大な要塞へと姿を変えつつあった。俺たちが最初に建てたロングハウスは、今や司令部兼作戦会議室として機能し、その周囲では、来るべき籠城戦に備え、食料の備蓄と、防衛設備の建設が、急ピッチで進められていた。
その日、俺は司令部で、レオから最新の備蓄状況についての報告を受けていた。
「領主様。この秋の収穫は、予想を上回るものでした。これで、冬を越すだけでなく、春以降の籠城戦もある程度は戦えます。ですが……」
レオは、表情を曇らせた。
「街の人口が五百を超えた今、長期戦になれば、いずれ食料は尽きる。矢や、武具の消耗も、計算以上に早まる可能性があります」
「……分かってる」
俺たちの街の豊かさの噂は、難民だけでなく、王国軍の密偵の耳にも届いているはずだ。バルドルが、この実りを、指をくわえて見ているはずがない。
「だからこそ、短期決戦で終わらせる。そのための準備だ」
その夜、俺は街の幹部たちを集めて、緊急の会議を開いた。レオ、ギデオン、そして、今や移住者たちのまとめ役となっているボルグ。彼らの前に、俺はここ数週間、寝る間も惜しんで描き上げた、大量の設計図を広げた。
「これは……!? 城壁、ですかい?」
図面を覗き込んだギデオンが、目を見開く。
「ああ。だが、ただの壁じゃない。トーキョー……いや、未来の『ニホン国』の首都を守るための、大防衛構想だ」
俺は、彼らに、王都からもたらされた脅威と、俺の決意を語った。レオは、防衛にかかる莫大な資材と労働力を計算し、顔を青くした。だが、ボルグは、拳を握りしめて言った。
「やらせてくだせえ、領主様! 俺たちは、あんたに救われた命だ。この楽園を、俺たちの手で守れるなら、どんな苦労も厭わねえ!」
その言葉に、皆が力強く頷いた。
巨大な要塞で耐えろ!!
明日19時に更新します。
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