「死刑宣告」と嵐の夜の出来事
トーキョーは一つの巨大な家族になりました。
結婚から数ヶ月が過ぎた、穏やかな午後だった。
一人の男が、村を訪れた。身なりは旅の商人だったが、その鋭い目つきと、鍛えられた立ち居振る舞いは、ただ者ではないことを示していた。
「……ダリウス様からの、言伝にございます」
男――フィンと名乗った彼は、俺の執務室を兼ねた小さな家で、人払いをした後、そう切り出した。彼は、ダリウスが俺との連絡を保つために、密かに手配した密偵だった。
「先日、アリア様がこちらに辿り着いたと伺っております。彼女の警告は、残念ながら、全て真実です。」
フィンのもたらした王都の情報は、アリアの警告を、冷徹な事実として裏付ける、詳細な内容だった。
「バルドル宰相の権力は、今や王を凌ぐほどに。賢者様がもたらした魔族との和平を、自らの功績として喧伝し、重税を民に課しては、私腹を肥やしております」
「……だろうな」
予想通りの展開に、俺はため息をついた。
「そして……新たな『勇者』ガイ。アリア様から、その性根についてはお聞き及びかと。ダリウス様からの情報によれば、宰相は、ガイに王家伝来の聖剣を与え、来るべき『聖戦』の英雄として、民衆の前で大々的に祭り上げております。」
「聖戦、か」
「はっ。宰相は、賢者様がこの魔の森に富を隠し持ち、魔族と組んで王国転覆を企んでいる、という偽りの噂を、もはや公式の布告として、王都中に流布しております。『反逆者ケンタを討ち、魔の森を解放せよ』と。討伐軍の規模は、およそ三万。王国の主力騎士団全てと、主席魔術師率いる魔術師団も動員されるとのこと。
……ダリウス様は、『これは、もはや国を二分する内乱だ』と」
アリアの警告は、友人としての「危ないぞ」という叫びだった。だが、フィンの報告は、組織からの「お前は、これだけの戦力に、これだけの罪状で、これだけの期間内に、殺される」という、冷徹な死刑宣告だった。
だが、その不穏な報せさえも、霞んでしまうほどの、大きな喜びが、俺たちを包んだ。
リリアーナの、懐妊。
俺たちの間に、新しい命が宿ったのだ。
そのニュースは、瞬く間に村中を駆け巡り、トーキョー村は、まるで自分たちのことのように、祝福の雰囲気に満ち溢れた。俺たちの村の、最初の子供。それは、この土地の未来そのものだった。
俺は、生まれてくる子供のために、そしてリリアーナのために、俺の持つ知識を総動員した。つわりに苦しむ彼女のために、消化が良く、栄養価の高い食事を考えた。鉄分を補うためのレバー料理、カルシウムを補給するための小魚のスープ。医学書で読んだ、妊婦に必要な栄養学の知識が、そのまま役に立った。
最初は「こんな大変な思いをするなんて」と弱音を吐いていたリリアーナも、村の女性たちの励ましや、俺の支えの中で、次第に母としての強さを身につけていった。日に日に大きくなるお腹を、彼女は、愛おしそうに撫でるようになった。
だが、出産は、俺の想像を絶する、壮絶なものだった。
予定日を過ぎた嵐の夜、彼女の陣痛は始まった。村の産婆や、薬草に詳しい老婆たちが集まり、万全の体制を整えたはずだった。リリアーナの回復魔法があれば、万が一の時も安心だと、誰もが思っていた。
だが、赤ん坊が逆子だということが分かった時、産婆たちの顔から血の気が引いた。この世界において、逆子は、母か子、どちらかの死を意味する絶望的な宣告だった。
どうなる!?
続きは、明日19時に。
よろしくお願いします!




