月下のプロポーズと俺たちの結婚式
アリアのおかげで、自分の気持ちに気がついた主人公でした。
その夜、俺はリリアーナを、完成したばかりの水田が見渡せる丘の上に誘った。月明かりが、風にそよぐ青々とした稲を、銀色の絨毯のように照らしている。
「すごいだろう。俺たちの、宝物だ」
「はい……。本当に、夢のようです。ケンタ様が、この地に導いてくださったおかげです」
「いや」
俺は、彼女に向き直った。
「リリアーナ、君がいてくれたからだ。君の笑顔があったから、俺も、皆も、ここまで頑張れた」
俺は、ぎこちなく、彼女の前に片膝をついた。生まれてこの方、経験したことのない、人生最大級の緊張が、心臓を鷲掴みにする。
「俺は、王様じゃないし、ここは城じゃない。立派な指輪の一つも、用意してやれない。……だけど、俺と一緒に、この村を、未来の『ニホン』という国を、創ってくれないか。リリアーナ、俺と、結婚してください」
俺の、精一杯のプロポーズ。
リリアーナは、大きく目を見開いた後、その紫色の瞳から、大粒の涙をぽろぽろとこぼした。そして、世界で一番美しい笑顔で、頷いた。
「……はいっ! 喜んで……!」
俺たちの結婚式は、収穫祭の最終日に行われた。場所は、ギデオンが村の職人たちと数日かけて作り上げてくれた、湖畔のセレモニースペースだ。白樺の木で組まれたアーチには、村の女性たちが森で摘んできた色とりどりの花が飾られ、夜の闇が訪れると、俺たちが植えた光るキノコが、まるで星空のように、幻想的な光を放っていた。
リリアーナは、村の女性たちが総出で縫い上げた、シンプルな生成りのドレスをまとっていた。王都のどんな豪奢なドレスよりも、彼女の美しさを引き立てている。俺も、新調してくれた麻の服に袖を通し、少し気恥ずかしい思いで、彼女の隣に立った。 神父も、司祭もいない。俺たちは、五百人を超える村人全員を証人として、自分たちの言葉で、未来を誓った。
「俺は、君に出会って、生きる意味を知った。この国を、俺たちの家を、そして君と、これから生まれてくる家族を、俺の持つ全ての知識で、命を懸けて守り抜くことを誓う」
「私は、あなたに出会って、自分の足で立つことの喜びを知りました。この国を、私達の家族を、その未来を、私の持つ全ての愛で、育んでいくことを誓います」
俺たちが誓いの口づけを交わした瞬間、村中から、地鳴りのような歓声と、祝福の拍手が沸き起こった。その輪の中心で、一番大きな声で野次を飛ばしていたギデオンが、次の瞬間には、皺だらけの顔をぐしゃぐしゃにして、誰よりも大声で号泣しているのが見えた。
祝宴は、まさに村人全員の手作りだった。中央には、男たちが仕留めたレイザー・ボアの丸焼き。テーブルには、リリアーナの畑で採れた、見たこともないほど巨大な野菜料理の数々。そして、俺が指導して試作した、木の実の酒が、樽で振る舞われた。 宴の途中、ボルグが、おずおずと俺たちの前に進み出た。
「領主様、リリアーナ様。……俺たちによくしてくださって、本当に、ありがとうございます。飢えて死ぬだけだった俺たちが、こんなに腹いっぱい飯を食って、笑える日が来るなんて……夢のようです。このご恩は、一生忘れねえ。この命、お二人と、このトーキョーのために、いつでも差し出しますだ」
ギデオンも、酒で顔を真っ赤にしながら、大声で叫んだ。
「わしは、ただの頑固じじいだったが、領主様に出会って、ものづくりの本当の楽しさを思い出した! こんなに胸が躍る毎日は、生まれて初めてだ! お二人とも、末永く、お幸せにな! 乾杯!」
堅苦しい儀礼はない。ただ、誰もが心からの祝福を口にし、歌い、踊り、笑い合った。俺とリリアーナも、輪の中心に入り、村人たちと肩を組んで、夜が更けるまで踊り明かした。俺は、生涯の伴侶を得た。
そしてトーキョーは、名実ともに、一つの巨大な家族になったのだ。
はい、喜んで〜
いやーーー
めでたいですな!
明日の19時にアップします。
どうぞよろしくお願いいたします。




