十九人から五百人の街へ
湖畔で明かされたリリアーナの想い――
トーキョー村が生まれて、二年が過ぎた。
その二年という歳月は、俺たちの故郷を大きく変えた。 噂が、噂を呼んだのだ。
「魔の森に、税も飢えもない楽園がある」
「追放された賢者が、魔族さえも手懐け、奇跡の作物が実る土地を治めている」
「そこには、万病を癒すという湯が湧き出ている」
そんな、お伽話のような噂を信じ、最初にやってきたのは、クロムウェル男爵領から逃げてきたボルグたちのような、圧政に苦しむ人々だった。彼らは、トーキョーの豊かさと自由に涙を流し、喜んでここの住人となった。
次にやってきたのは、富と機会を求める者たちだ。
魔の森の珍しい産物――漆や薬草、魔物の素材などを求める行商人。ギデオンたちが作る、魔鋼石を加工した見事な武具や農具の噂を聞きつけた職人たち。そして、未踏の森に眠る古代遺跡や、強力な魔物の討伐に挑む冒険者たち。
俺たちは、彼らを選別し、受け入れた。
このニホン国の理念に賛同し、自らの汗で未来を築く覚悟のある者だけを。そうして、かつて十九人だった俺たちの共同体は、今や人口五百人を超える、多様な人々が暮らす小さな街へと変貌を遂げていたのだ。俺たちの最初の家であり、村のシンボルだったロングハウスは、今や活気あふれる集会所兼食堂として使われている。
俺が設計した水田は、初年度から驚くほどの収穫をもたらした。火山灰の肥沃な土壌と、湖の清らかな水。そして何より、村人たちの懸命な労働が、光り輝く黄金色の稲穂となって結実したのだ。
収穫した米を、村の中心に作った大きな竈で炊き上げた日。炊き立ての白飯を頬張った村人たちが、あまりの美味さに言葉を失い、次々と涙を流した光景は、俺の一生の宝物だ。俺自身、故郷を離れてから初めて口にするその味に、柄にもなく涙がこぼれた。
醤油と味噌も、長い試行錯誤の末、ついに完成した。初めて作った味噌で仕立てた、レイザー・ボアの肉と野菜たっぷりの味噌汁。醤油で香ばしく焼き上げた川魚。俺の故郷の味が、この異世界で完全に再現された瞬間だった。日本の食文化は、トーキョー村の生活を、生存から享楽へと、劇的に引き上げてくれた。
噂を聞きつけて、あるいは圧政から逃れるようにして、村を訪れる者は後を絶たず、俺たちの「国」は、日ごとに大きく、豊かになっていった。
日本の食文化は、本当に素晴らしいと思います!
明日も19時に公開します。
久しぶりに、あの人が登場!!
どうぞよろしくお願いいたします。




