星空の下の告白
なにもかもが順調です。さらに・・・
数日後。ゼオンは、また来る、と言い残し、再びドラゴンに乗って、風のように去っていった。
彼の来訪は、村に大きな変化をもたらした。魔王と友誼を結ぶ俺への畏敬は、もはや絶対的なものになっていたし、何より、魔族という存在が、必ずしも敵ではないという事実を、皆が肌で感じることができた。世界は、自分たちが思っていたよりも、ずっと広い。その感覚が、村人たちの心を、少しだけたくましくしたようだった。
その夜。俺は、リリアーナと二人、湖のほとりを散歩していた。湖畔には、俺たちが植えた光るキノコが、蛍のように淡い光を放ち、幻想的な小道を作っている。
ゼオンの来訪、新しい移住者、村の発展。目まぐるしい日々が、嘘のように静かだった。
「……すごい方ですね、ゼオン様は」
リリアーナが、ぽつりと言った。
「魔王様と、あんな風にお話しできるなんて。ケンタ様は、本当に、私の知らない世界をたくさんご存知なのですね」
「俺は、本で読んだことを、実践してるだけだよ。俺一人じゃ、何もできなかったさ。ギデオンがいて、レオがいて、そして……君がいてくれたからだ」
俺は、立ち止まって、彼女に向き直った。
「リリアーナ。君が、あの時、俺を追いかけてきてくれなかったら、俺は、とっくに心が折れていたと思う。君が、この村の太陽みたいな存在だから、皆、笑顔で頑張れるんだ。ありがとう」
それは、俺の、精一杯の感謝の言葉だった。
リリアーナは、驚いたように目を瞬かせ、そして、ふわり、と花が綻ぶように微笑んだ。
「……いいえ、違います」
彼女は、一歩、俺に近づいた。その紫色の瞳が、真剣な光を宿して、俺を射抜く。
「私は、英雄様を追いかけてきたのではありません。……私が愛した、一人の男性を、追いかけてきただけです」
愛した、男。
その言葉の意味を、俺の処理能力の低い脳が理解するのに、数秒かかった。
「……え?」
「私、ケンタ様のことが、好きです。あなたが英雄だからではありません。あなたが、どんな時も、知識を信じ、人を信じ、諦めない人だからです。そんなあなたの隣で、生きていきたいのです」
夜の静寂に、彼女の澄んだ声が、あまりにもはっきりと響いた。俺は、生まれてこの方、経験したことのない衝撃に、心臓が大きく跳ねるのを感じた。
俺は、震える手を伸ばし、彼女のその小さな手を、そっと握った。
言葉は、出なかった。ただ、握り返してくれた彼女の指先の温かさだけが、全てを物語っていた。俺は、彼女をそっと引き寄せ、抱きしめた。彼女の柔らかな髪の匂いがして、胸が、どうしようもなく、熱くなった。
星空の下、俺たちの楽園で、新しい絆が、確かに結ばれた夜だった。
キターーーーーーーー
明日から新章突入します。
19時更新です。
どうぞよろしくお願いいたします!




