生命線!井戸掘りと最初の水
家づくりは順調です!
建設作業と並行して、俺はレオと数人の兵士を連れて、水源の確保に向かった。湖の水は美しく澄んでいるが、生で飲めばどんな寄生虫や細菌がいるか分からない。安全な飲料水は、生命線だ。
「この辺りの地形から見て、おそらく、この緩やかな窪地の地下に水脈があるはずだ」
俺は、植物の生え方や土の湿り具合から、最も可能性の高い場所を特定した。地質学の知識が、こんなところで役立つとは。
「ここを掘る。井戸を作るんだ」
井戸という概念そのものが、彼らにとっては新鮮だったらしい。川や湖から水を汲むことしか知らなかった彼らは、地面から水が湧き出すという俺の話を、半信半疑で聞いていた。だが、俺たちをここまで導いてきた俺への信頼が、彼らの体を動かした。
黙々と、ただひたすらに、俺が指定した場所を掘り進めていく。最初は乾いた土が、やがて湿った粘土層に変わり、そしてついに、シャベルの先にじわりと水が滲み出た瞬間、彼らは泥だらけの顔のまま、子供のように歓声を上げた。その最初の水を、皆で回し飲みした時の、喉に染み渡るような冷たさと、土の匂いが混じった甘い味を、俺は一生忘れないだろう。
そして、食料。
これは、リリアーナが買って出てくれた。
「私に、畑仕事を任せてください。王都から持ってきた種が、きっと役に立つはずです」
彼女は、女性たちや、重い木材を運ぶ組には入っていない手の空いた仲間たちに指示を出し、湖畔の最も日当たりの良い土地を耕し始めた。その手際は、王女だったとは思えないほど見事なものだった。彼女が土に触れている時の横顔は、王城にいた頃のどんな着飾った姿よりも、ずっと生き生きとして見えた。この土地が、彼女からも「王女」という名の鎧を脱がせ、一人のたくましい女性へと変えつつあった。
だが、種が芽吹くまでには時間がかかる。当面の食料を確保するため、俺は数人の元兵士を率いて、森へと狩りに出ることにした。
森の中は、危険と同時に、恵みに満ちていた。
俺たちは、慎重に森の奥へと分け入った。兵士たちは、かつての軍隊での経験から、警戒を怠らない。だが、彼らの知識は、対人間のものであり、この未知の森では役に立たないことも多かった。俺は、本で読んだサバイバルの知識を元に、彼らに獣の痕跡の読み方、風向きを読んで匂いを消す方法などを教えながら進んだ。
「ケンタ様、あれは!」
兵士の一人が指さした先で、巨大な獣の足跡がぬかるみに残っていた。蹄の形、その深さ。間違いなく、大型の獣だ。
「……レイザー・ボア、か」
ベテランの兵士が、顔を青くして呟いた。猪に似た、巨大な魔獣。その突進は騎士の盾さえも砕き、その牙は鉄の鎧をも貫くという。騎士団が一個小隊を組んで、ようやく討伐できるかどうか、というレベルの怪物だ。
「退きましょう! 我々だけでは、到底敵いません!」
兵士たちが色めき立つ。だが、俺は冷静だった。レイザー・ボアの生態は、本で読んでいる。その突進力と頑丈な皮膚は脅威だが、弱点もある。
「……いや、やる。ただし、まともに戦うんじゃない。罠を仕掛ける」
俺は、獣が通りそうな道――獣道を特定し、そこに巨大な落とし穴を掘るよう指示した。それは、数人がかりで半日を要する、過酷な肉体労働だった。皆が疲労困憊になる中、俺は、森の中で強烈な匂いを放つキノコを見つけ、それをすり潰して、罠の風上へと続くように点々と撒いていった。レイザー・ボアは、嗅覚が異常に発達しているが、視力は弱い。匂いで誘き寄せ、足元をすくう。それが俺の戦術だった。
家と、水と、食料!
これが確保できれば生きられる!
がんばれーーー
明日も19時に。
どうぞよろしくお願いいたします。




