第十一章 新たなる決意
「僕、学校に行こうと思う」
そう言ったとき、おじいさんは一瞬きょとんとして、困惑した顔をした。
「……どうしたんだい、急に。無理しなくていいんだよ」
「無理じゃないよ。行きたいんだ」
その一言に、心がこもっていた。
おじいさんは、少しの沈黙のあと――ふっとやわらかく笑った。
「……そうかい。いっておいで」
その日から、僕は高校へ通い始めた。
もう、迷わない。
かつての自分――三沢誠司だった頃の僕は、世界のすべてを閉じたまま生きていた。
心配してくれた上司の言葉も、そっと助け舟を出してくれていた前田さんのやさしさも。
なにもかも、届いていなかった。
“自分はコミュニケーションのとれない、仕事のできない人間だ”
そう信じ込んで、ひとりぼっちの場所から抜け出せなかった。
でも、現実は違った。僕は誰にも届かない存在なんかじゃなかった。
ちゃんと見ていてくれる人が、いた。
今は、そのことがわかる。
心が、不思議なほど軽くなっていた。
そして、思う。これからも、生きていこう。
過去にとらわれるのではなく、失ったものに縛られるのではなく、
受け取ったぬくもりを力に変えて、前に進んでいこう。
――もし、あの“審判の間”に座っていた老人が、どこかでこの人生を見てくれているのなら。
僕は、きっと驚かせてやる。
「ずいぶんと立派な人間になったな」と、そう言わせてやる。
そう決意して――僕の物語は、再び歩き出した。




