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第二話「闇に包まれる教室」

薄暗い旧校舎の中で、僕たちは「消えた教室」に足を踏み入れていた。窓の外は、さっきまでの夕焼けから一転して、不自然なほど真っ暗になっている。時計を見ると、まだ午後五時半。普通なら、こんな時間に日が落ちるわけがない。


「これ、本当にやばいんじゃないか…?」

直樹が小声で呟く。


僕も同感だった。何か説明のつかない現象が起こっている。それが一体何なのかはわからないけど、普通じゃないことは確かだ。


「大丈夫よ。これがオカルト研究会の真髄よ」

紗月先輩は相変わらず落ち着いていた。むしろ、楽しんでいるようにさえ見える。


「先輩…これ、本当に大丈夫なんですか?」

僕は思わず聞いてしまった。


「ええ、もちろん。この教室は何か特別な場所よ。私たちはその真相を突き止めるためにここにいるんだから」


先輩の言葉は、まるで謎めいたパズルのピースを手に入れたかのような自信に満ちていた。でも、僕や直樹はそんなに楽観的にはなれなかった。闇の中にいると、背後から何かが迫ってくるような錯覚を覚える。


「でも、どうすればここから出られるんだ?」


直樹の言葉に、僕も息を飲んだ。確かに、入ってきた時とは明らかに空気が変わっている。この教室はただの場所じゃない。どこか別の世界と繋がっているような、そんな不気味な感覚が広がる。


「出る方法を探さなきゃ…」


僕たちは教室の中を見回した。机や椅子は古びているが、特に目立ったものはない。窓も触ってみたが、固く閉ざされていて、外に出られそうにはない。


「この教室がどこかに消えた理由があるはずよ」

紗月先輩は再びファイルを取り出し、手書きのメモを読み返し始めた。「ここに来る前に少し調べたけど、この学校で最初に『消えた教室』の話が広まったのは、20年前。その時、ある生徒が行方不明になってるの」


「行方不明…?」


僕は身震いした。まさか、そんな話が本当だとは思わなかったけれど、今この状況だと、現実味を帯びてくる。


「その生徒がこの教室に入った後、誰も彼を見ていない。行方不明になる直前、彼は友達に『教室が消えた』って言ってたらしいわ」


紗月先輩の話を聞きながら、僕たちは無意識に周囲を見回した。窓の外は依然として真っ暗で、何も見えない。ただ、じっとこちらを見つめているような気配がする。それは、何か存在しないはずのものがそこにいるかのような感覚だった。


「そ、それって…もしかして…」

直樹が何か言おうとした瞬間、教室の奥から微かな物音が聞こえた。


「…今、何か聞こえたよな?」


僕たちは顔を見合わせ、音がした方向に視線を向けた。教室の隅、壊れかけた本棚の陰で、何かが動いた気がした。


「誰かいるのか?」

僕は恐る恐る声をかけた。返事はない。だが、確かに何かがそこにいる。


「行ってみましょう」

紗月先輩が前に進み出た。彼女の勇敢さには驚かされるばかりだ。


「いや、待った方がいいんじゃないか?」

直樹が制止しようとしたが、紗月先輩は気にも留めず本棚の陰へ向かった。僕たちも仕方なく後を追った。


本棚の陰には、古びた黒板と、埃にまみれた机が置かれている。それ以外には何もない。だが、僕たちが近づいた瞬間、急に冷たい風が吹き抜け、教室の温度がぐっと下がった。


「なんだ、これ…」

直樹が震える声で言った。


その時、突然、黒板に白い文字が浮かび上がった。


「助けて」


「な、何だよこれ!」

僕は思わず叫びそうになったが、声が出なかった。黒板には確かに「助けて」と書かれている。だが、それはチョークで書かれたものではなく、まるで浮かび上がってきたかのように文字が現れていた。


「これが…消えた教室の正体?」

紗月先輩も驚いた様子で、黒板に目を凝らしている。


「誰かが…ここに閉じ込められてるのか?」

直樹の声が震えている。彼は黒板から目を離せない様子だ。


「可能性はあるわね。でも、どうやって?」

紗月先輩は冷静に言葉を続ける。「20年前に行方不明になった生徒が、ここに何らかの形で囚われているのかもしれない」


「だ、だけど、助ける方法なんてわからないよ」

僕は混乱していた。こんなことが現実に起こるなんて信じられない。だけど、目の前の状況はまさにそれを証明している。


その時、再び物音がした。今度は、教室の外からだ。誰かが廊下を歩いている音。ゆっくりと、こちらに近づいてくる。


「何かが来る…!」

直樹が恐怖で顔を引きつらせた。


「大丈夫。ここを調べ続けるしかないわ」

紗月先輩はそう言ったが、僕たちの不安は増すばかりだ。廊下の足音はどんどん近づいてくる。そして、教室の扉の前で止まった。


その瞬間、扉がゆっくりと開き始めた。僕たちは息を呑んで、その扉の向こうを見つめた。だが、そこには誰もいなかった。


「…いない?」


僕たちは互いに顔を見合わせた。確かに足音は聞こえていたのに、そこには何もいない。まるで見えない何かが教室に入ってきたかのようだ。


「気を抜かないで。ここは何かが潜んでいる場所よ」

紗月先輩の声が張り詰めた。


僕たちは教室の中で再び警戒態勢を整えた。この「消えた教室」に、僕たちはまだ何も知らない。だが、確実に言えることは、この教室には何か異常な力が働いているということだ。



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