I will kill you.
突然始まります。
ほかの所にここに至るまでの話を書くかもしんないです。
楽しんでいただけたら幸いです。
きっと悪いのは私なのだ。
私の手はまだ血濡れておらず、故に他者に責を負わせた。
悪いのは私だ。
であるからこそ、私はその責を負わねばならない。
私は悪である。
もう躊躇はしない。厭わない。そう決めた。
今度は私が背負おう。
君を殺して。
そうして私は、君の前に立つのだ。
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昔から姿の変わらぬ小柄の少年が見える。
彼は私を刺すような視線で見ている。
私も同じなのだろうか。
「なあ、ルナ。」
前方から声が飛んできた。
「お前はなんで俺と戦おうとする?」
「シリウスにはわからないと思うよ。だけど、しいて言うなら」
自身でも驚くほどに冷静に言葉が吐かれていく。
「自己満足。」
「そうか。じゃあ、もう戻れないな。」
微妙にかみ合っていないような返答が返ってくる。
そして彼は続けて言った。
「俺は殺すことにしたよ。ルナ。」
誰を、とは言わなかった。十分に伝わっている。
彼の殺気が伝わってくる。
合図はなかった。
刹那、目の前には黒いガントレットを着けた彼の右手。
身をよじり回避し、後ろへ跳躍する。
腰に帯びていた白銀の長剣を抜き、斬りかかる。
袈裟斬り。突き。横薙ぎ。呼吸の隙も与えぬよう猛然と斬る。
だがそのすべてを往なされる。カウンターされる。
少し甘い一撃。手加減されていることが手に取るようにわかる一撃。体が吹き飛ぶ。
「能力なしで勝てると思ってんのか?」
彼から声が投げかけられた。
「それは甘過ぎってやつだろうが。」
自分でも、甘いとは思っていた。
「あの時もそうだったな。使ったら殺しちまうって。」
そうだっけか。
そんな気がする。
あの時は殺してしまうのが怖かった。
いつだったかに襲われて、それをこの手で殺すのが怖くて、躊躇って、結局助けてもらった。
今回は?今回も助けてもらうのか?誰に?彼に?それは、もはやただの命乞いでしかないだろう。
彼を殺すと決めておきながら、結局躊躇ってるじゃないか。彼には能力を使っても勝てないかもしれないのに。
ほんと、心底人のことを舐めている。
あれ以来、いろんなものを壊して殺して強くなった。
幼馴染だから。命の恩人だから。そう言って逃げるのはもうやめよう。
失礼になってしまう。全力で、本気で殺す。
それが私に残された最後の道だ。
「ごめん。躊躇していた。もう大丈夫。全力で――――君を殺す。」
「行使、『力: 天像 』――神撃」
「もっと出せるだろ、『魂: 黒魂 』――世壊、吹き飛ばせ!」
世界は極彩色に染まり、そしてその圧力はあっけなく消えた。その瞬間、両者が動きだす。
「『力: 天像 』――限定再現、世断」
剣を振った瞬間、世界がズレた。その剣の一直線上にあるものは等しく切り裂かれる。…はずだが、
一人だけ、受けてなおそこに立ち、そして拳を構えている。そこに傷のような傷はなく、少しの疲労も見せない。
「いいね、今のは効いた。――行くぞ、」
ギリギリ目で追えるかぐらいの速度で飛び込んでくる。
「―――シッ」五連撃。頭、右肩、左胸、脇腹、鳩尾―蹴り⁉
「もっと上げんぞォ!ラア゛ッ‼」今さっきよりも速く、重い一撃に、
「『力: 拳 』――天掌」
対応する。
二つの力がぶつかる。周りに轟音と光をまき散らして。そして長い、長い拮抗が終わり、
また力を、技を放つ。