俺の名前は
『冒険者ギルドに向かおう』
矢印に従って訓練所を出て冒険者ギルドへ向かっていく
結局職業は「あなた」しか表示されず、諦めて選択した後、何故か全ての職業についての説明を1時間ほど聞かされた。
剣士、魔法使い、槍使い、盗賊、聖騎士、賢者、魔物使い、暗殺者………
明らかに上位職もあったけどバグかなんかだったのか…
職業「あなた」についての説明もないまま、人型のかかしに攻撃の練習をさせられて訓練所のチュートリアルは終了した
そうして、次なる指令『冒険者ギルドに向かおう』が出たわけだ
相変わらず人気のない街を1人トボトボと歩いていくといつの間にか矢印が光の点となって止まっていた。
顔を上げると「冒険者ギルド」と名前が表示された
「うぉ…アニメとかでよく見る冒険者ギルドだぁ…」
大きな剣と盾のエンブレムがついた木造の建物に感嘆のため息が出る
「よしっ!行くか……たのもっうわ!?」
ギルドへ一歩踏み込んだ瞬間、突然辺りがうるさくなった
「次どこのクエスト行く?」
「誰かパーティー組みませんかー」
「店員さん、お代わりいただけますか?」
「あ、新しい人入ってきたね」
「ホントだ、あの子どんな名前にするのかな」
「男性の初期の見た目、私好みなんだよねぇ…」
「ククク……愚民どもが……何も知らずに笑っていられるのも……」
「厨兄さん、ロールしてなきゃモテるのに…」
「おっしゃあ!今日は豪遊じゃ!」
「回復ポーションたっけぇ…」
「夏休みの宿題って終わらせたー?」
おそらく、ギルドに入ったら他のプレイヤーが自動的に表示される仕組みになっているようだ
…にしてもガヤガヤし過ぎてない?ガチのファンタジーじゃん
一先ず矢印に従ってたくさんあるカウンターの中の一番右端へと歩いていく。カウンターについても何かが起こるわけでも、説明が出てくるわけでもなく数分の時間が過ぎる。
誰もいないカウンターの横では女性NPCとプレイヤーと思われる男性が話している
「あのー…すみませーん…」
恐る恐るカウンターの奥へ声を掛けると、目の前にサッ…と顔の怖い男が起き上がってきた
「………なんでしょうか」
「え、あ、えと…あの…」
予想外の登場に怖さが勝ってただドもるだけの俺を見た男は手元の何かを確認した後、こちらを見た
「…登録者、ですね。少々お待ちください…」
ガサゴソと後ろの棚を漁った男の手には複数の書類があった
「これに、氏名と種族、可能なら職業をご記入ください」
その言葉と共にメニュー画面が目の前に表示された
あなたの名前は?
『 』
あなたの種族
『魔族:吸血族』
あなたの職業は?
『公開する・公開しない』
【登録する】
お、おぉ…ついに名前登録まできた…
名前をチュートリアルの最後に決めさせるゲームは意外に多い
このゲームもそういうやつの可能性はあるし、これでチュートリアルから解放される…?
そんなことを考える俺に男は、名前を悩んでいると思ったのか助言をしてくれた
「名前に悩むのならば次にギルドに立ち寄ってクエストを受注する際に記入頂ければいいですよ」
『ギルドのクエストは名前を決めないと受注が出来ません。名前を決定していないプレイヤーは他プレイヤーには名無しのプレイヤーと表示され、フレンドなどの機能を利用できません。名前は後から変更可能です』
「なるほど……いや、大丈夫です。ここで決めちゃいます」
職業については公開するのは何故か良くない気がしたから公開しないと設定した
あとは名前だ
「んー………」
本名は流石にダメだし…レントとかレンはたくさんいそうで区別付かなくなりそうだしなぁ……
うーん……これでいくか
垣崎蓮人、それと……まぁ、ヴァンパイアのヴァ
ゲームの世界観的にも横文字の方がいいだろうし、種族に合わせた名前だから…
ダサくないダサくない…まぁあとから変更も出来るらしいし……
よし……俺の名前は
名前
『ヴァレン』
種族
『魔族:吸血族』
職業
『-非公開-』
【登録する】
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