選ばせる意味のない選択肢
「流石は荒野を駆ける宅配業者…こんな早く対応してくれるなんて……」
朝の8時、宅配のお兄さんに引き攣った笑いをされるぐらい、朝日にビビりまくって受け取ったのは件の「ファンタジー・ファンタジー」…
と最近噂の付けながらゲームと現実世界を同時に動き回れるVR機器「ボーダー」だ
電車やバス、会社の休憩時間とか色々な場面で使えるって人気の最新型らしい。ちょうどセットで売ってたから買ってみた。
「にしても、楽しみだなー。説明書説明書……」
家に誰も居ない寂しさを打ち消す様に独り言を呟きながら説明書を読みこむ
「えっと……まずは、電源付けて…その他設定と……」
その他諸々を5分ほどで終わらせ、VRゴーグル?を装着する。薄型のスキューバダイビングのゴーグルがメガネみたいに丸みを帯びて目を完全に覆っている。ヘッドホンの耳部分が付いてる
説明書によれば、右耳のスイッチを押せば完全に透明になってゴーグルをつけていることを他人にバレないようにできるらしい。触れることは可能だし、初期段階の機能だから不備もあるらしいが外で使う人は大体この機能を使っているらしい
最近のVRはゲームに意識を接続して、リアルなゲーム体験を出来る「ブレ・インゲーム」略してBIを売りにしている。脳にうんたらをかんたらしてタンタラになるらしい。
しかし、この「ボーダー」は設定一つでBIを切り替えられる。
ONにすれば他のVRと同じようにBIで遊べる
OFFにすれば意識を接続せずにゴーグルにゲーム画面が映って専用の機器を指に取り付けてプレイできる
「まぁ俺は外に出れないからONのままなんだけどな!HAHAHA!!!!」
ゴーグルの左耳部分にカセットを入れ、俺はVRゴーグルを起動する。
「えーっとこれか、ファンタジーファンタジー」
目の前に出てきたソフトを選び起動する。その瞬間、俺の視界はブラックアウトしてゲームに意識が繋がれる
――――体の反応を観測しました。
俺の視界は10秒もしないうちに復活する。
「おぉ…これが最新のVR…!!すっご…」
目の前に映る世界は先程までいた狭い自分の部屋ではなく、広い森、遠くに見えるいくつもの街、そして小さく見える見たことのない生物…正しくゲームの世界が広がっていた。
「お!っと……なんだ…タイトル画面か」
上を見れば空、下を見れば森、俺は完全に空中に浮いていた。
何かと思い体を動かしてみると表示が出てきた
【ファンタジー・ファンタジー】
【世界を進める覚悟を】
その文章の下に【はい・いいえ】と書いてある。おそらくはいを選べば、何かしらのストーリーが動き出すのだろう。だけどこういう二択っていいえ選びたくなるよね。
俺は「いいえ」と声を出した。が、しかし反応がない
「…?あれ?これ音声認識じゃないのか?」
俺がそう呟くと、選択肢の右上にhelpが出てきた
【選択肢を選ぶ場合はそちらに意識を向ければ選べます】
※ソフト選択画面で音声認識をONにすることもできます
「へぇー最近のゲームは凄いなー!」
最近のゲーム機能にわくわくしてきた俺はもちろん「いいえ」に意識を向けた。すると
【覚悟のない者は立ち去れ】
というメッセージが出てきた。その下に一瞬映った
(素直にはいを選ぶがよい^^)
という製作側のメッセージを見た次の瞬間、視界がブラックアウトし戻った時にはいつもの部屋に戻っていた。
さっき、ゲーム内で動かしたはずの体はゲームを起動する前と一切変わっていない。これが意識によって動かせるVRなのか……と感心してしまった
「…………………………………」
無言のまま、音声認識をONにしてゲームを再起動した俺は、タイトル画面で一通り暴れてから「はい」を選んで物語を始めた。
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「…さっきの撮られてないよね?」
【ようこそ】
システムメッセージ: 称号「物語を始めよう」を獲得しました。
システムメッセージ: 称号「進まぬいいえ」を獲得しました。
視界の左下にシステムメッセージというログが出てきた。説明書にはシステムメッセージはゲームを進行した時に出てくるログと書いていたはずだ。
「それにしても……進まぬいいえって何だよ…」
運営の茶目っ気なのか知らないけど全然嬉しくない称号にため息をついて俺はゲームの世界へと入っていった。
その下に表示されたメッセージを見ることなく
: 『eっれgう繝ゥ=』がファンタジー・ファンタジーを開始しました。
システムメッセージ: WSクエスト『t0.pte』を開始しました。
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