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バイト

私が泣いてしまったことにより、また迷惑をかけてしまった。大急ぎで朝食を片付けて、店を開ける準備を手伝った。



「そう言えば、スーさんがいない…。」



全く気付かなかった薄情な自分にダブルパンチで落ち込んでいると、



「昨日の夜、用事があるから出るってさ、先に家に帰っててくれって、ジェスチャーで一生懸命 私に伝えてくれたよ。トモカに心配しないようにだってさ。いい仔だね。」



アサの言葉に一安心した。



「さぁ、トモカのおかげで開店の準備も整った。今日の分のお金も付けとくから、また夕方にここに来てもらおうかね。」



暗に今から店を開けるから、帰るように促される。しかし、空き家の扉を見つけないと帰れない… どうするか悩んでいると、



「トモカ、裏の水場の後ろに家があっただろう?」



昨夜は暗かったし、今朝も気にしていなかったので、首をかしげると、



「そこの裏の家が去年から空き家になってるんだよ。柵でおおわれてる様に見えるけど、一部通れるようになってるからそこから行きな。そうすれば誰にも見つからないから。夕方また待ってるよ。」



アサにそう言われて、私はみんなに挨拶をして裏から柵の切れ目を探した。はじめはつる草に覆われていて、どこにあるのか分からなかったのだが、よく見るとぽっかり口を開けている場所が、一か所存在した。ローブを頭からすっぽりかぶり、どこにも引っかからない様に抜けると、側にあった裏戸? にカギをさして自宅へと帰り着いた。










ドアを閉め、目の前に広がる緑を見ていると、靴も脱がずに玄関先に体を沈めた―――。



「すごく良くしてもらった。仕事まで決まったし、あんなに泣いたのいつぶりだろう…。心が目まぐるしい。でも、イヤじゃない… 」




心地よい疲労に、このまま また眠れそうと目を閉じたその時、



〝ちゅ〟



そばで聞こえた声に思い切り体を起こし、あたりを見渡してみると、寝そべっていた私から少し離れたところにいた。



「スーさん、ただいま。」



〝ちゅ〟



「見当たらなかったから、少しびっくりした。」



〝ちゅ~?〟



「本当だよ…、ちょっと気づくの遅かったけど… 」



〝ちゅ、ちゅ〟




「あッ、スーさん! 仕事決まった。小人の八百屋で日が暮れてから、仕入れのアルバイトすることになった。今日から行ってくるね。」



〝ちゅ、ちゅちゅ?〟



私が夕方から出かけることを伝えると、スーさんが自分もいくと胸元をつかむジェスチャーをする。



「スーさんも行ってくれるの? 今日は用事はないの?」




私がそう聞くと、大丈夫だと(うなず)いてくれた。やはりスーさんが来てくれるとうれしい。安心感が違うのかな…?



「昨日お風呂入ってないから、今から入って、夕方までちょっと寝ようかな。あぁ、忘れるところだった。これ、アサがスーさんに朝ごはんだって。」



スーさんがいなかったのでアサが、バナナの葉のような大きな葉っぱにくるんで、私の昼食とスーさんの分を持たせてくれたのだ。



「お姉さんと言うより、お母さんみたい… ふふッ…」




そんな暖かな気持ちのまま湯船でのんびりして、夕方まで仮眠を堪能した私は、元気いっぱいに初仕事に行く事が出来た。







それからの私の生活は一変した。これまではダラダラと好きな時に起き、食べて、お風呂に入り、また寝るを繰り返していたのだが、小人の八百屋でバイトをするようになって、夕方6時から8時まで仕入れ。そのままの流れで夕飯をごちそうになり、10時前に家に帰ると言う生活をここ1月ほど繰り返している。




ただ、10時に家に帰ったとしても、夕方まで寝ている私はちっとも眠くない… そこで、最近している事は、街の地図を眺めること。ここひと月でわかったことは、この国は中心に世界樹と森があり、その森を囲むように各街が出来ている。




街は東西南北で区切られており、この街は北に位置する街。別名【下りの街】どうして下りなのか尋ねたのだが、笑って誰も教えてくれなかった。そしてこれはどの区画の住人もなのだが、いろいろな人種がいる。



小人族、人族、エルフ族、獣人族、ドワーフ族、人魚族、魚人族、魔族、天族、eat…



天族ってナニ?そう聞くと、側にいたナズナが〝背中に羽の生えている、人族に近い姿をしている種族よ〟と教えてくれた。天使だと言うと、空に浮かんでいる街に住んでるから天族なのであって、決して神様に仕えているモノではないと言われた。野菜も買いに来てくれるお得意さんらしい…。




異種族間で、差別や争いは無いのかと聞くと、よその街ではあるかもしれないが、この街では御法度(ごはっと)なのだと言う。そんなことをするとこの街には住めなくなる。だからこそ、自分たちはこの街で商売が出来ているんだと、スズシロが教えてくれた。




小人族の地位は、ここ以外の街では低く見られてしまい、どの品物も買いたたかれてしまっていたみたいだ。縁がありこの街に移住したことにより、安定して暮らして行けるようになったと話してくれた。



もう20年前の話だと言われた時には、いくつなのか気になったのだが、前ナズナに聞いた時に、女性に年の話は禁句よね~…。と釘を刺されたので飲み込んだ。




以外にもこの地図をくれたのはタビだった。そしてさらに意外な事に、街の地図の自分が行った事のある場所に一つずつコメントが入っていたのだ。



ここの服屋は扱ってるモノもいいし値段が安い。

この本屋には掘り出し物がある。

このパン屋はうまい。

肉屋の夫婦は旦那が尻に敷かれてる。

穀物屋はまた変な物を仕入れてた。

ここはハズレ…




こんな感じで、結構 細かく書いているので見ているだけでも面白かった。

そんな平和な日々に、事件が起こった。



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