表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/62

小人のお怒り

「こんばんは……。」



「あら、トモカが来たわ。強盗が捕まったニュースが今朝、入ってきたからどうやって知らせようか、みんなで考えていた所だったの。」



そう言ってくれたのはナズナ。



「今日までは、昼間の仕入れだったから、明日から通常業務に戻すね。連絡できてよかったよ。」



スズシロが安心したように話す。



「おい、かッ、変わりなかったか?」



照れているのか、そっぽを向きながら問いかけてくるタビ。



「毎日、トモカはちゃんとご飯食べてるか、早く捕まればいいのにって、うるさくてしょうがなかったんだよ。」



セリが、またしても ちょっかいをかけタビとのケンカが始まった。それを止める、アサ。やっといつもの日常が戻ってきてくれて、うれしかった。



「あの、実は…… 聞いてほしい事と、お願いがあって…、」



そうして私は、ここに捕縛ヒモの使い方を聞きに来たあとから、今日までの一連の流れと経緯を説明すると―――…



もの凄く怒られた。みんなから代わる代わる、お説教されながら、私はうれしくなり笑った。



「みんなが怒り過ぎるから、トモカが壊れたよ~!」


「コグサ、こいつが変だったのは、初めからだ。」


「タビ、いつもそんなこと言うから、女の子が逃げるんだよ。」


「トモカ、私たちが言い過ぎたわ。これ以上ポンコツにならないで!」


「ナズナ…、トモカ、ちょっと休憩しようか?」


「セリ、こんな時に茶々入れない。とりあえず、ご飯にしましょう。久しぶりに、トモカが来てくれたから、張り切ろうかな。」



アサが最後に皆をまとめ上げ、それぞれが落ち着くために、まずは夕飯をご馳走になることにした。

相変わらず、たくさんの品数が並び、とても美味しかった。家でも、食べてはいるのだが、やはりみんなで食事をする楽しさを覚えてしまうと、家でスーさんと二人で食べるご飯は、少し物足りない感じがしていたのだ。




食後のお茶をいただきながら、最初に口を開いたのはアサだった。



「それで、さっきの話の続きだけど、本当に強盗を捕まえたのはトモカなんだね。」



「うん。実は、スーさんと他のねずみ達とで、この街をエリア分けして、夜パトロールしてたの…。もちろん、危ないと思ったら連携取って逃げる練習もしたし、飲み屋のある所は、人が多くて怖かったから、昼間に捕縛ヒモだけ条件付けて、設置だけしてきたから、夜は行ってない。」



私がとりあえず説明すると、みんな少しホッとした顔をしてくれた。しかし、ナズナだけはとてもお怒りだった…。



「確かに、捕縛ヒモの使い方をレクチャーした時に、捕まえるとか、そんなことを言ってたわね。覚えているわ。でもね、まさか本当にやるなんて思わないじゃない!だってあのトモカよ?タビと二人で冗談だと思ってたのよ?捕縛ヒモは、所詮(しょせん)ヒモなの!ナイフとか風の魔法でも切ることが出来るの。本当に無事でよかった……。ねぇ、トモカ‼ 聞いてる?」


私は今までの人生、押し付けられたり、出来なかったことを悪く言われたり、心配しているフリはあっても、ここまで私自身(・・・)を心配してくれる人たちに出会ったことは無かった。




「聞いてるよ。それでも、私は、私のために犯人を捕まえたかったの…。みんなとの時間を邪魔する犯人がイヤだったから――…。それに、これからも続けようと思う…。」



私がそう言うと、反対意見を返そうとナズナが口を開きかけるが、スズシロとアサが待ったをかけ、



「トモカ、自分がどうしたいのか言ってごらん。それが出来るか、出来ないかは別にして、思っている事を話してごらん。」




この言葉に、私はうつむき視線を下げる…。自分の気持ちをさらけ出すのには、勇気がいる。どんな些細な話だろうと、本心を話すと言う事は、もし否定された時、心の柔らかいところに傷がつく…… 

怖くてたまらない。それでも、向き合うと決めたのだ。本気で心配して叱ってくれるこの人たちと、



「私はね、自分に自信がないの…。あっちの世界で否定され続けて、こっちの世界に来て初めは、肩の荷が下りた気がした。でも、でもね―― 人って存在する理由が欲しい生き物なんだよ。わがままだよね…。わかってるんだけど、また誰かの荷物になるのはイヤだ。一人の足で立ちたい。でも怖い。それでも、ここに居ていい理由が欲しい――… 」




沈黙が場を支配する。顔を上げるのが怖い。やっぱり私は何も変わってない――…



「すればいいじゃん。お前の思う通りにやってみろよ。無理ならやめればいいじゃん。捕縛ヒモだけじゃ危ないなら、ナズナがなんか他のもん作ればいいだろ?」



「タビの言う通りだよ~‼ 僕達だって、ここで商売するまで大変な事もいっぱいあったけど、楽しかったよ。」



「そうだよトモカ。無理はせずに、泣きたくなったら俺の胸を貸してあげるからいつでもおいで!」



「セリ、キモ――。仕方ないから、捕縛ヒモに改良を加える。それなら許すわ。」



「ここの手伝いはどうするんだい?あぁ、そのまま継続して、夜にパトロールするんだね。」



「それなら、次の日に安否確認ができるからちょっとは安心だね。」



この日、またまた大泣きで、強盗に懸けられている賞金を取りに来てくださいと、自警団に言われている事や、どうやって取りに行けばいいかとか、話したいことはまだまだあったのにもかかわらず、目が覚めたら朝だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ