♡第52話♡ チーム再び!
「あ、いたいた、コペニュさん、サーニャさん」
ある休み時間、別のクラスのマリトがコペニュたちのクラスにやってきました。
「メラルさんが呼んでます、一緒に保健室へ行きましょう」
回復魔法が得意なメラルは、しょっちゅう保健室でお手伝いをしています。
呼ぶ、とは助けを求めているのでしょうか。
嫌な予感がします……って、最近嫌な予感ばっかりです。
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「やっほーメラル、どうしたの?」
「コペニュ、それにサーニャ♡ ちょっと来てくれ」
ベッドで誰かが眠っていました。
ただ眠っているんじゃありません。何本もの太いベルトで拘束されているのです。
あーあーと獣のように唸って、まるで、先日のソルテくんのよう。
「コ、コペニュちゃん!」
「校長せんせーが言ってたやつかもね」
メラルが眉を潜めます。
「やはり、これが噂の『異常な生徒』か」
「なになに? なんの話ですか? ボクにも教えて下さいよ」
サーニャが懇切丁寧に説明します。
物知りなマリトなら何か教えてくれるかもしれません。
「ソルテくんが、死んだはずの生徒のようになった、ですか。うーん、謎ですね。メラルさんはどうですか? 催眠魔法のせいとか?」
「ないな。催眠にかかった程度で、使えなかった魔法が使えるようになるわけがない。死んだ人間に干渉する魔法も、存在しない。それが可能なら、魔法使い連盟は躍起になってアリア様を復活させようとするさ。となるとやはり、神の力だろうな」
それをラスカが使ってるんですよ。
コペニュが縛られている生徒をまじまじと見つめます。
たしか同じ2年生の男子ですね。
「で、こいつはいつからこんななの?」
「ついさっきだ。たまたま同じ選択授業を受けていてな。急に悶え、暴れだした。拘束具で動きを封じて、こうしている」
「なるほろねー。メラル、治せないの?」
「できればとっくにやっている」
生徒は口からよだれを垂らして、ぐーぐーお腹を鳴らしています。
ソルテのときより獣っぽいです。
あまりにも醜くて、他のベッドで横になっている生徒たちもドン引きしています。
可哀想に、具合が悪くないならいますぐ逃げ出したいでしょうね。
ちなみに、保健室に行ったからってすぐに回復魔法をかけてもらえるわけじゃありません。本当に必要な生徒のみです。
回復魔法に頼りすぎるのは、体を壊すキッカケになるので。
「とりあえず、ソルテのときみたいに気絶させたらもとに戻るでしょ。よし、サードスター」
狭い保健室だから、怪鳥ではなく銀狼を召喚しました。
電気を纏った狼なので、軽く電撃を飛ばせば気絶させられるはずです。
そうコペニュが指示しようとしたとき、
「見て! コペニュちゃん!!」
他のベッドにいた生徒たちが、いきなり苦しみだしました。
そして数秒もしないうちに、白目になったのです。
最初の拘束されている男子生徒と合わせると、4人。
ちょうどコペニュたちと同じ人数。
「一気にたくさん……。なにかされてた様子はなかったのに……」
「ふふ、久しぶりにみんなで戦っちゃおう♡」
コペニュが早速雷狼のサードスターを召喚します。
「いけ! 電気攻撃よ!」
サードスターが、纏っている電気を異常状態の生徒たちに放出しました。
この狼、突進以外にも攻撃手段持ってたんですね。
電撃をくらい、生徒その2が気絶します。ずいぶんとあっけないですね。
っておいおい、放電された電気が、縛られていた異常状態生徒その1の拘束ベルトを焼き切っちゃたじゃないですか!!
その1が起き上がっちゃいます。
「へへ、敵が1匹増えたところで!」
残った3人の異常生徒が、コペニュたちに噛みつこうと迫ってきます。
魔法は使わないのでしょうか? これではただの獣のようです。
メラルが異常生徒その3に手を添え、回復魔法による過剰回復で気絶させます。
マリトも転移魔法でその4を天井付近に移動させ、落下の衝撃で倒しました。
残りはサーニャですが、
「サーニャ! 来てるぞ!」
「大丈夫だよ、メラルちゃん!」
残った異常生徒その1がサーニャに飛びつきます。
こ、このまま噛まれたらどうなるのでしょうか? まさかサーニャまで異常生徒になったりするんでしょうか?
でも大丈夫、なんせサーニャは、去年と違うのですから!
サーニャの肉体がほんのり光ると、異常生徒その1がサーニャをすり抜けました。
全身を光にして攻撃をすり抜ける。サーニャが身につけた修行の成果です。
そして近くにあったパイプ椅子で後頭部を、
「え、えい!」
と殴って、見事倒したのでした。
ていうか最後は物理攻撃かよ。
コペニュとメラルがサーニャに駆け寄ります。
「わー! サーニャ、いつの間にそんなのできたの!?」
「驚いたぞ、サーニャ!!」
「え、えへへ。驚かせたくて内緒にしてたんだ」
一方、マリトは倒れている生徒たちを見下ろしながら、ため息をつきました。
「いったいどのくらい強いのか気になりましたけど、拍子抜けですね」
「前に私が戦ったときは、バリバリ魔法を使ってきたんだけどね」
「すでに亡くなったはずの生徒の特徴が現れていたんですよね? ですけど、これのどこに特徴が出てるんですか?」
「ま、いいじゃん倒せたんだから」
「うーん、それはそうですけど……。とりあえず今回のこと、校長先生に知らせてきますね」
マリトが保健室から去りました。
コペニュたちは気絶した生徒たちをベッドに運んでいきます。
とにかく、こっちはもう安心ですね。
今度はラスカの様子を伺いにいきましょう。今回もあいつが仕組んだことでしょうしね。
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あ、いました。別校舎の屋上から、保健室を覗いていました。
なんだか辛そうに右腕を抑えて、苦しそうです。
「くそっ」
その背後に、あの青い男が転移してきます。
「おい」
「お、お前か……」
「お前か、じゃねえよ。なんだあのざまは」
「一度に多くの魂を現世に戻すと、一体一体の精度と強さが格段に下がるらしい」
「へえ、そうなんだ! ……たく、んな分析どうでもいいんだよ。お前がさっさと使いこなせばいいだけの話だろうが」
めちゃくちゃキレてますね。
上手く行かなくてイライラしちゃってまあ、ザマアミロです。
「……わかってる」
「頼んでいた調査はどうした? メイスとメラルの母親」
「わかってる!」
「チッ、しょせんお前はその程度か。そんなんで好きな女を守れるのかねえ」
「黙ってろ!!」
「ふん、腕が痛むからってビビるんじゃねえぞ」
そう言い残して、青い男は消えてしまいました。
けけけ、このまま失敗が続いちゃえばいいんですよ。
あんまり我らがコペニュと仲間たちを舐めないでくださいよね。
彼女たちは私の死の真相にたどり着き、魔王だって倒した最高のチームなんですから。
ラスカが再度保健室に顔を向け、窓越しにコペニュを睨みます。
「あいつ、厄介だな……」
物凄い形相です。殺意マシマシですよ。
な、なんかまた嫌な予感がしてきました。
いくらコペニュたちが最高のチームとはいえ、ラスカに与えられたのは『神の力』ですもんね。
きっと、もっと恐ろしいことが起こるはずです。
……あぁもう! 本当に大丈夫なの? クソガキちゃん!!




