♡第46話♡ マリトリベンジ? 前編
コペニュたちが2年生になってから一週間が経ちました。
新年度特有のワクワクドキドキ感もだいぶ収まってきました。
そんなある日のことです。
「なあ、コペニュ、サーニャ。悪いんだがマリーを見ていないか?」
別のクラスのメラルが訪ねてきました。
去年はサーニャと同じたんぽぽ組だったのにね。絶対にサーニャと結ばれない運命なんだろうね。
「見てないけど?」
「そうか……。私はマリーと同じ『いくら組』なのだが、最近姿を見せないんだ。授業をサボるようなやつではないし、心配になってな」
「具合悪いんじゃない? 寮の部屋に突撃してみよーよ」
「しかしマリーは男。男子寮に女子が入るのは……」
「へーきへーき」
こいつが平気っつーと本当に平気になっちゃうんですよね。
これが主人公補正ってやつですか?
とにかく、マリトの安否が心配なのは私も同じ。
いったいどうしちゃったんでしょうかね。
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「マリー、入るよー!」
コペニュがどーんと部屋の扉を開けました。
そんでもって肝心のマリトですが……床の上でぼけーっと体育座りをしていました。
まるで魂が抜けたように表情に力はなく、ちょうど窓から差し込む日光に照らされて、元気のない観葉植物のようです。
それになにより、驚くべきはその顎!
男の娘キャラにあるまじき、無精髭が生えちゃってるんです!!
あれだけ可愛いに拘っていたのに!! あれだけ女子っぽい外見に拘っていたのに!!
「マリー、どうしたの?」
「あぁ、コペニュさんたち。……こんにちわ」
声にも覇気がありません。
「授業でないの?」
「ふっ、もういいんですよ。もう……いいんです……」
「なにがいいわけ?」
「終わったんですよ、僕の学校生活は」
「はぁ?」
何いってんだこいつ。
ところ構わずいろんな男と卑猥なことして、一番充実した学校生活を送っていたじゃないですか。
「そう、それは5日前のことです」
マリトが長々と語り始めました。
ここは語り部として、短い回想でお伝えしたいと思います。
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サーニャがキリコと挑んだ危険生物退治。
そのときマリトも、新入生の男子とペアを組んでいたのです。
彼の名前は……ソルエ。
「よ、よろしくお願いします! マリー先輩!!」
「……」
マリトは驚愕に目を見開いたそうです。
マリトより小さく、マリトより小顔で、マリトより華奢。
肌は白くすべすべで、目もくりっとしていて、肩までかかった髪はサラサラ。
「僕、弱そうって言われるんですけど、先輩の役に立てるよう精いっぱい努力します!!」
「……そう、ですか」
魔法使いとしての実力は大したことなかったらしいです。
問題は、そのあと。
マリトは見てしまったのです。他の1年男子たちが、ソルエをチヤホヤしているところを。
「おいソルエ、お前メソメソ泣いたりしなかったろうな〜」
「するわけないだろ! 僕は立派な男児なんだ! 先輩よりたくさん倒したんだからな!!」
「本当は女なんだろ〜」
「や、やめろ触るな! 僕は男だ!!」
一見、ただの容姿いじり。
しかし、マリトは察してしまったのです。
あの男子たち、ソルエを性的な目で見ている!!
男に性的興奮しているのがバレないように、あんな意地悪をしているのだッ!!
それからというもの、学校に訪れた新たな「刺激」に、学校中の男たちのくすぶるハートに火がついてしまいました。
1年生だけでなく、2年、3年、さらに教師まで、みなソルエをいやらしい目で見るようになったのです。
まるで去年のマリトのように。
唯一異なる点は、
「もう! お前ら僕をバカにするな!! 僕は男だぞ!!」
ソルエ本人は男子とふしだらな関係になる気がないということ。
が、それが逆にそそられる。逆に劣情が煽られる。逆に興奮するッ!!
逃げる獲物ほど追いたくなるもんだろうがよ男はよお!!
そしてついには、
「なあ君、俺が魔法を教えてあげるよ」
「あなたは?」
「2年のセオだ」
第15話にてマリトと音楽室スケベをした男子すらも、ソルエの虜になっちゃったのです。
以上ッ!! 回想終わりッッ!!
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「セオくんはボクのセフレ第一号だったのに……。それだけじゃない。ボクが築き上げていたハーレムが、次々と崩されていく。あいつに、あいつに……」
「でもそいつは男子とスケベしたい子じゃないんでしょ?」
「いまは、ですよコペニュさん!! ボクにはわかります。ソルエは「男らしさ」に拘ってるようですけど、自分が可愛いと自覚している。そんな自分にドキドキしている。もし一度でも男子とスケベしたら、きっと即メス堕ち!! たかが外れてスケベしまくるに決まってますッッ!!」
マリトの瞳から、涙が一粒落ちました。
「終わりなんですよ。ボクの時代は終わったんです。ボクは……飽きられちゃったんです……」
「うーん、別のキャラで生きれば?」
「どんなキャラですか!? 純粋系はサーニャさんが、真面目系はメラルさんが、生意気系はコペニュさんやアロマさんが既にいるじゃないですか!?」
「ご、ごめん」
そうとう追い込まれてるっぽいですね。
ていうか魔法学校なんだから魔法を学ぶことに集中しましょうよ。
学校はハッテン場じゃないんですよ。
「待てよ……アロマさん、か……」
途端、マリトは洗面所に急ぐと、一秒もかからずに無精髭を処理しました。
「そうですね、忘れてました、アロマさんの不屈のスピリッツ。一度の敗北で諦めちゃダメなんですよね!!」
勝手に落ち込んで勝手に元気になってるよ。
「学校の男子たちの視線を取り戻すべく、マリーちゃんリベンジですっ!!」
はい、次回へ続きまーす。




