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♡第25話♡ コペニュVS聖女……?

 刺客たちには、戦いに敗北すると記憶が消される忘却魔法がかけられているようです。

 メラルの推察によると、かけたのはもちろん洞窟にいた仮面の男。そして負けただけでなく、彼について語ろうとするのも発動のトリガーになるそうです。


 真実は、まだまだ手が届かないほど遠くにありそうです。


「ふぁ〜、よく寝た〜」


 ピンクマンとの戦いから数日後、サーニャは目を覚ましてすぐに黒い手袋を外しました。

 発動した覚えがないのに、チカチカと連続して手が光っているのです。

 修行の成果でしょうか、意図せず無意識で使ってしまうほど、魔法が馴染んでいるようです。


「よし」


 そして視線を周囲に向けたとき、サーニャは異変に気づきました。

 夜が明けていないのです。時刻は6時。とっくに太陽が昇っていてもおかしくないのに。


「コペニュちゃん起きて、なんか変だよ!」


「ん〜、変じゃなくて常識が古いんだよ〜。おやすみ〜」


 名言っぽいこと抜かしながら二度寝するなクソガキ。

 6時を過ぎても夜のままなんて新しい常識……悪くないですね。

 実は夜型なんですよね、私。できればずっと真夜中ならいいのにって思ってました。

 だって朝日は眩しいし昼は暑いし、ロクなことないじゃないですか。


 レジャーに支障をきたす? 陽キャ事情など知りません。


「6時なのにまだ夜なんだよ! おかしいよ!」


「ん〜、時計が壊れてるんじゃない? そんなことよりもう一眠りしよ〜。ほら、こっちおいで。抱いてやるから」


「むむむ〜」


 サーニャは発光魔法を利用して、眩しさでコペニュを叩き起こしました。


「新しい刺客さんの仕業かも!」


「えぇ? も〜」


「ほら、おはようのちゅーだよ、コペニュちゃん」


「んー」


 え? あ、そうですよ。こいつらナチュラルにちゅーする関係になったんですよ。

 といってもおはようとおやすみのちゅーだけですけど。姉妹みたいなもんですからね。

 はい? メラルは知ってるのかって? ……いくら私でも残酷すぎる真実を口にすることはできません。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いや、犯人はわかっている」


 コペニュはサーニャと共に、校長室へ乗り込みました。

 あれから2時間が経っているのに外はまだ夜。どう考えても自然現象ではありません。

 そんでもって校長は、ため息交じりにそう告げたのです。


「刺客ではない」


「じゃあ誰の仕業なのー」


「3年生の、聖女だ」


 聖女? 私の一つ上の学年の聖女に、そんな能力持った人がいましたかね?


「ちょうどいい、君たちに解決を願いたい!!」


 こいついっつも他力本願だな。


「いいよ♡ だって私パーニアスだもん♡♡」


 お前もお前で何でもかんでも引き受けるんじゃない!!


 そんなこんなで、ふたりは校長と共に聖女寮のとある一室の前へ訪れました。

 聖女は全学年含めて30名もいないので、一人一部屋です。


「この先にいる聖女の仕業だ。彼女が望めば、世界は永遠の夜に閉ざされる」


「ほ〜ん。魔法じゃそんなの無理でしょ。聖女の力ってすごいんだね〜」


 なにせ神の力ですから。当たりハズレの差が激しいですけど、当たりならちょっとした気まぐれで世界の常識を変えられちゃいます。

 私の力ですか? 大当たりに決まってるじゃないですか。私に霊体化の能力があるから皆さん読めるんですよ、コペニュとサーニャのイチャイチャを。


「聖女の名前はヌイン」


「校長ならマスターキー手に入るんでしょ? 引きずり出しちゃえばいいじゃん」


「いや女子の部屋に勝手に入るのはモラルに反するではないか。ペアレンツ・ティーチャーズ・アソシエイションを敵に回したくないし……」


 素直にPTAって言えよ。なにカッコつけて正式名称で呼んでんだ。

 人の目を気にする前に世界を気にせえ!!


「同じ女子の私らなら良いわけね」


 てなわけで、コペニュたちは校長からマスターキーを貰いました。

 そして扉を開けた瞬間、枕が飛んできてコペニュの顔面に直撃したのです。


「ぐえっ」


「入ってこないで!」


 そこにいたのは、ボサボサの髪をした色白の少女でした。

 あ〜、見たことあります。会ったことあるっすわ。廊下ですれ違いましたね。

 ヌイン先輩、引きこもりの問題児聖女。成績は悪くないのですが、とにかく人付き合いが大嫌いな根暗な聖女です。


「コペニュちゃん大丈夫!?」


「こんやろー、私に一発喰らわすとはいい度胸してんじゃない」


「で、でも勝手に入った私たちも悪いよ。……ご、ごめんなさいヌイン先輩。で、でもどうして夜のままにしているんですか?」


 先輩は掛け布団に包まると、ダンゴムシのように丸まってしまいました。


「もう嫌なの! 学校やなの! 怖い先生たくさんいるし、クラスメートは話しかけてくるし」


 そういえばこの先輩、たしか一人の時間が増えるって親に騙されて入学したらしいですね。

 とことん人見知り。どえらい他人恐怖症。

 でも、それで何故朝を消したのでしょうか。


「だけど本当に嫌なのは、私が3年生だってこと。あと半年で卒業しちゃう。地元に帰ったら親の店を継がされちゃうし、聖女として就職するにしても知らない人と関わる仕事ばっかりだし、結婚も無理だし。嫌なことばっかり。大人になりたくない。朝なんか消えちゃえばいい!!」


 理由がめっちゃ生々しいじゃん。

 ガチでよくある悩みじゃん。

 

「け、けど時間が止まっているわけじゃないですよね? 朝が来なくても時がくれば卒業しちゃうんじゃ……」


「なんでそんな酷いこというの!?」


 この世で最も強力な魔法、それが『真実』なんですよサーニャちゃん。

 ヌイン先輩は決して逃れられぬ将来という怪物を前に、ついに泣き出しちゃいました。


「ずっと子供でいたいよ。社会の底辺だとか存在していない人扱いでもいいから人間関係から遠い世界にいたいよ」


 こいつは重症ですね。

 力づくでは解決しそうにありません。彼女の心の闇を払わなければならないのでしょうけど……。

 と、コペニュがむむむと熟考しだしました。たいして頭良くないのに。


「ひらめいた! ヌイン先輩、あんたに足りないのは、癒やしよ!!」


「癒やし?」


「そう。弱った心を満たしてくれる人。明日への希望をくれる人。心の支え。そんな人がいれば、考えも変わるわ!!」


 ほう。


「でも、そんな人、私にはいないよ……」


「なら私が、と言いたいところだけど、いくら私が天才でも子供。こういうのは年上の女性に頼むのがベストよ」


 ほうほう。


「メロ〜ンちゃんを連れてくるよ。ほんわかしてるし、うってつけでしょ!!」


 いいじゃんいいじゃん。悪くないよコペニュ。


「ついでに魔法でメロ〜ンちゃんのおっぱいから母乳でるようにして、授乳すれば完璧だね!」


 あーもー台無しだよ。

 最後の最後でちゃぶ台ひっくり返されちゃったよ。

 だいたいなんだよ母乳がでるようになる魔法って。全国の悩めるお母さんたちみんなが欲しがるわ。


「コ、コペニュちゃん、そんな魔法あるのかな?」


「メイス先輩に聞いてみよー!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 コペニュとサーニャは手分けしてメイスとメロ〜ンを連れてきました。


「で、母乳魔法ってあるの? メイス先輩」


「あるよ。もちろん使える」


 だろうと思った。もはやこいつ神様だろ。


「私としては使うのは構わないが、メロ〜ン教諭はどうですか?」


 メロ〜ンはやや悩んだように、う〜んと唸りました。


「そ、それで朝が戻ってくるならぁ」


 数十分後、メロ〜ンの母性によってヌイン先輩はスッキリし、無事に朝が戻ってきました。

 実際どんな様子でスッキリしたのか、詳しくは有料版で。


「ちょ、ちょっとコペニュちゃ〜ん。おっぱいミルク止まらないよぉ!」


「しょうがないな〜。私とサーニャが全部飲んであげる」


「え! 私も飲むの!?」


 聖女一人を倒すのにこの労力。やはり神の力は侮れませんね。

 めでたしめでたし。ていうか強制終了です。

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