表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/74

♡第1話♡ 自称天才少女コペニュ登場!!

 聖女として真面目に生きてきました。

 神に与えられた力を極めるため、聖女や魔法使いが通う学校にて、勤勉に励んできました。

 自ら学級委員に立候補し、授業では積極的に手を上げ、掃除もサボらず、毎日庭の花に水をやり、雪にも、夏の暑さにも負けず、丈夫な体を持ち、欲はなく、決して怒らず、なんだかんだ。


 そうやって積み重ねてきたエリーナ()の人生が、ある日突然凶刃に襲われたのです。

 校内の聖堂にて祈りを捧げていたときに、何者かによって、後ろからグッサリと。

 これが神が定めた運命ならば受け入れましょう。

 ですがせめて、せめて犯人は誰かなのだけ知ることができたのなら。

 それだけが、唯一の心残り。


「いったい、誰が……」


 私は最後の力を振り絞り、聖女の力で霊体となりました。

 もう生き返ることはできなくても、真相を知るために。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 などと意気込んでから早一ヶ月、犯人どころかその手がかりすら掴めていません。

 魔法学校の教師たちも、警察も、証拠一つ見つけられない状況です。

 私も幽霊としてあの子やこの子のあんなところやこんな場面を覗いてみたのですが、まったく成果は得られませんでした。トホホ。


 そして季節は春。新学期を迎えて……。


「というわけで、入学早々悪いのだが」


 厳格な校長室の中心で、老いた校長が一人の生徒に告げました。

 私の死の真相、犯人捜しに協力してほしいと。


「ふ〜ん、なるほどねえ」


 12歳程度の少女が、にやりと頬を釣り上げます。


「それでこの、飛び級でルイツアリアに入学した超天才、コペニュちゃんを呼んだわけなんだ」


 コペニュ、それがこの子の名前です。

 ややふっくらした腕、ピンクのツインテール、強気な眼差し。

 パンツ見えちゃうんじゃないかってぐらい短いスカート。

 一見バカっぽい子供のようですが、15歳から入学できる魔法学校に12歳で入学した大天才、らしいです。


 犯人がわからず手詰まりになっているとはいえ、無関係の少女に頼るのはいかがなのでしょうか。犯人を知りたいのは私も同じですが。

 それになんだか、生意気そうな……。

 いえいえ、見た目で人を判断してはなりません。

 大切なのは中身。魂で判断すべきだと、神の教えに書いてありました。


 人の悪い面ではなく、良い面を見るようにすべきなのです。

 もしかしたら本当は、とても真面目で正義感に溢れた素晴らしい少女なのかもしれません。


 コペニュが嘲笑するように校長先生たちを見つめました。


「こ〜んなちっちゃい子に頼るなんて、せんせーたちって情けな〜い♡ ざ〜こざ〜こ♡ 教師の面汚し♡♡ 税金泥棒♡♡」


 ……は?


「まあいいよ、そのエリーナってやつのことは知らないけど〜、ちょちょいと解決してあげる♡ なんせ私、せんせーたちと違って大天才だから♡♡」


 なんだこのクソガキ。

 なんで呼び捨てなんだよ。こちとら先輩だぞ先輩。

 ちくしょうめが、中身まで生意気じゃないかよ。こんなのに犯人見つけ出してほしくなんかないわ。

 逆に未練が強まるわ。悪霊になっちまうわ。

 

 マジで? マジでこいつに頼むの?

 いやいやいや、無理無理無理、無理なんですけど。年上に敬語を使えない調子乗ってる子供とか、私が一番嫌いなタイプの人間なんですけど。

 そんなやつに貸しを作りたくないんですけどっ!


 ……申し訳ございません、やや口調が乱れてしまいました。


 コペニュちゃんは子供ですものね、これくらいの発言は大目に見なければなりません。

 神に仕えし者として、一人の人間として。


「でもさ〜、見返りがほしいんだよね〜。わたし〜、タダ働きって好きじゃないから。そうだな〜、学校の資金の半分が報酬ってどう?」


「さ、さすがにそれは……」


「じゃあやってあ〜げない。ダメダメなせんせーたちだけでがんばってー。そ・れ・と・も、コペニュさまお願いします! どうか手を貸してください! って必死にお願いしたら、考えてあ・げ・る♡ クスクス♡♡」


 おい誰かこのガキをつまみ出せ。

 ていうか校長も頬赤らめてんじゃないよ。実はドマゾだったんかあんた。

 ショックだよ。こちとら殺人犯を知りたくて幽霊になったのに、真犯人を知る前に尊敬していた校長がロリコンのマゾだなんて判明するなんてショックすぎるよ。


 ……あらいやだ、また言葉遣いが。

 と、とにかく、こんな精神的に未熟な子供に協力をねだるのは誤りだと思います。

 彼女の実力は不明ですが、性格に難がありすぎます。絶対ロクなことになりません。


 仮に真相解明しても、犯人にアメを渡されたら黙っているに決まってます。


 校長は大きくため息をつくと、呟くように告げました。

 頼む頼む頼む、前言撤回してくれ、何なら学校から追放してくれ。

 社会の厳しさをこのガキンチョにわからせてやれっ!!


「報酬については検討している。どうか、頼む」


 くっそおおおおおおおおお!!!!!!


「ま、いいけど。こんな事件、パパっと解決しちゃうから♡」


 期待できないけどな。


 まあなにはともあれ、学校で発生した殺人事件の調査が、新たな進展を迎えるのでした。


 不安でしょうがないんですけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ