始まりは突然に
僕は今でも思い出す。君と出会ったあの日のことを。
正門坂の桜が満開に咲き乱れたこの日、僕、佐藤一星は坂上高校へ入学した。僕は正直、不安と恐怖に駆られていた。それは、中学時代のあの思い出したくもない日々があったからである。どうしよう、震えが収まらない。そして、気が付いた時には入学式は終わっていたのだった。
クラスが発表されて僕は教室に入った。そして静かに席に座った。周りを見渡してみるともうグループが出来ていた。僕はまた1人だ。そうして下校の時間となった。自転車通学である僕は暗い気持ちでペダルをこいでこいでいた。すると
「うわっ!」
道のへこみにタイヤを取られて転倒した。
「はー。もう生きていても良いことないな…。」
僕はそう小さく呟いた。すると後ろからブレーキ音が聞こえてきた。
「ちょっと、大丈夫?ケガしてるじゃん!」
えっ、僕は驚いた。だれかに心配されたのなんていつ以来だろうか。寄り添ってくれた黒髪の女の子はまるで天使のように輝いて見えた。
「えっ、だ大丈夫。」
「手、擦りむいてる!ちょっとじっとしてて。」
女の子と話すのも久しぶりな僕は凄く緊張していた。それと同時にドキドキしているのを感じた。なんて素敵でいい人なんだろう。
「はい。これで大丈夫だよ!もう気を付けてね。」
「あ、ありがとう。」
な名前、聞かなくっちゃ!
「じゃあ、またね!」
彼女はそのまま走り去ってしまった。名前も学校も何も聞けなかった。
次の日、学校でいつものように本を読んでいた。でもなぜだろう。全く集中できない。そして気が付けば彼女のことを考えてしまっている。でも、その後は彼女と再会することもなく季節は夏を迎えた。