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愛よりも青い海-8

 「じゃあ、行くぞ」

「うん」

恵美は大きく頷いて、手を振った。美雪は圭一に促されながらも、その場を去りがたかった。

「ね、恵美ちゃん。今度は、恵美ちゃんが遊びにきてね」

「え、いいの?」

「うん。歓迎するわ。みんなも、一緒に来てね。学校、案内するわ」

「うん。一回行きたかったの、あたし。みんなにも、言っておくね」

「さよなら」

「さよなら、美雪さん。またね」

無邪気な子のように大きく恵美は手を振った。美雪もその姿を見つつ、その場を後にした。


 単調なリズムで走る列車の中で、美雪はぼんやりと風景を眺めていた。眺めながら、今日の光景を思い出していた。美雪にはいない弟妹たち。美雪の家とは随分違う、楽しげな家族の光景。ひとりひとりが、強い個性を発していて、どこか圭一に似ていた。おおらかで、頼りがいのある母親も、美雪の両親にはない印象を与えてくれた。楽しい一日だったと海を眺めていると、圭一が目の前にジュースを差し出した。

「どうした?」

「うん?なにが」

「随分、ぼんやりしてるから」

「ぅん。楽しかったな、って」

「うるさい奴等だろ」

「でも、楽しい家族じゃない。あたし、ひとりっ子だから、羨ましいな」

「そうか。うるさいだけだよ」

美雪は手に持ったジュースを見つめながら、ぽつりと訊ねた。

「どうして、ずっと、帰ってなかったの?」

「え?」

「来るときに、訊き忘れたじゃない。ね、どうして?」

「……ん」

「あんなに、楽しい家族なのに、お母さんもいい人で」

「……俺さ、…追ん出されたんだって思ってたんだ。ずっと」

「え?」

「家を出て今の学校に行くことになったとき、母さんと随分ケンカして、俺を捨てる気か、なんて、わめき散らしたりしたんだよね…」

「そう…」

「嫌だったんだよ。家を出るの。……ん、やっぱり、家にいたかったんだよな。一人だけ離れるの、嫌だったんだよな。でも、確かに、悪いことしてたし。知ってたのかもしれないな、知られてないと思ってたけど」

「どんなことしてたの?」

「恵美の言うことは確かに本当さ。一番年長だし、父さんも死んじゃったし、なんとか、弟や妹たちを楽しませてやろうと思ってた。


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