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愛よりも青い海-7

 少し太陽が傾きつつある下で、圭一と美雪は家を出た。門の前に立ち並ぶ見送りが多くて、美雪は恥ずかしくなった。何か一大イベントでもあるような、そんな見送りに向かって圭一は大きく手を振った。弟妹たちも大きく手を振り返した。美雪もそれに合わせて手を小さく振った。圭一の母親は、心配そうな顔でじっと見つめていたが、美雪が手を振るのを見ると、ゆっくりと頭を下げた。美雪はそれを見て驚いて頭を下げた。横では圭一が大きく手を振って、またなぁ、と叫んでいる。美雪は母親と互いに顔を見合わしながら、目を離せないままその場を立ち去ろうとした。

 角を曲がって家族の姿が見えなくなった時、後ろから恵美が駆け寄ってきた。

「あ、ちょっと」

そう呼び掛けてきた恵美に圭一は怪訝な顔をして応えた。

「なんだ」

「あ、お兄ちゃんじゃなくて、美雪さんに」

恵美はそう言うと美雪に近づいてきた。

「あの……、お兄ちゃん…のこと、お母さんは悪く言ってたけど、本当はそんなことないんです。あたしたちが、苛められたときとか、かばってくれて、お父さんがいなくて淋しいときとか、元気づけてくれるために、色んなことしてくれて、それが、あんまりいいことじゃないこともあって、それで、怒られて、あ、それに、みんなの代わりに怒られてくれることもあって、ずっとずっとお兄ちゃんにかばってもらってたんです。……だから」

「なんだよ、恵美、わざわざそんなこと言わなくても」

「…でも、お兄ちゃんのこと、誤解したら」

「大丈夫だよ。俺は、学校じゃあ、ちゃんとやってるから」

「でも……」

「なんだよ、まだ、心配なのか?」

恵美は圭一の顔を見ていたが、くるりと向き直って美雪の顔を見つめた。

「お兄ちゃんのこと、嫌いにならないでください。本当にいいお兄ちゃんですから」

「なんだよ、恵美」

「よろしくお願いします。あたしからのお願いです」

恵美はそう言うと深々と頭を下げた。美雪は面食らってしまって言葉を失った。が、そんな恵美を見て、微笑ましくなった。

「ね、恵美ちゃん。大丈夫よ。あたし、中川君のこと、信じてる。本当に、いい人だもの」

「本当ですか?」

「うん」

「…お兄ちゃんのこと、……好き…ですか?」

「え……。…うん」

恵美はそれを聞いて嬉しそうに微笑んだ。

「なに言うんだよ、美雪。恵美もバカなこと訊くな!」

「んん、いいの。ね、恵美ちゃん」

「うん。安心しました。やっぱり、そうだったんですね」

「そう、ってなんだよ」

「お兄ちゃん。美雪さんのこと、呼び捨てにしてて、知らんぷりはないでしょ」

「あ……」

急に照れた様子を見せる圭一に、恵美と美雪は顔を見合わせて笑った。


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