表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

 え!? オレの解雇理由「宮廷追放モノが流行ってるから」って酷くないですか? ~倉庫の掃除や整理に使ってたオレのスキルが超有能だった件~

作者: 朔々

 タイトルが気になり見に来てくれた方、すみません。期待通りの展開では無いです。

 私としてはタイトル詐欺では無いつもりですが、釣りタイトルではあるよな、という思いです。

 もし、それでもよいのであれば、読んでいただければ幸いです。


「え!? オレの解雇理由マジで宮廷追放モノが流行ってるからなんですか?」


 この男、とある国の王宮で働いているのだが、今まさに解雇されようとしていた。


「その噂は随分浸透しているようだな。確かに流行に乗った側面はある。

 がしかし、きっちり調査し精査したうえでの解雇だ。決してそれが理由ではない」

「なら何でですか! オレちゃんと働いてますよね?」

「君の仕事は倉庫の掃除や整理だったね?」


 解雇を告げに来た人事部の女は、メガネのズレを直すと冷めた目で男を見た。


「そうです! オレの働きで倉庫の中はピカピカです!」

「だが君の担当は2階北西の第8倉庫だけだ。君の業務日誌にもそう書かれているな?」

「そうです! 他のどの倉庫よりもキレイだと自負しています!」

「1日掛けて君の仕事はあの倉庫だけか?」

「そうです! 第8倉庫は広いんです! 誰がやってもそうなるはずです! オレは誓ってサボったりはしてません!」


 女がひとつため息をした。


「あの倉庫は100年以上昔の嘆願書が納められているだけだ。重要度は極めて低いが、念のために一応保管しているに過ぎない。事実、古い嘆願書は年に1度、纏めてこの倉庫に納められている筈だ」

「はい、年末ですよね? 毎年の事ですから覚えてますよ。それが何か?」


 女はまたため息をつく。そして吐いた以上に息を吸うと、一息に捲し立てた。


「君はバカか? 年に1度しか使われない倉庫を毎日掃除してどうする! そういった場所は年末の大掃除の日で十分だ!」

「じゃ、じゃあオレは何でこの仕事を与えられたんですか!?」

「辞めさせるために決まっているだろう! 君が倉庫の掃除を任される前の業務日誌も調べたが酷いものだった。

 仲間とのケンカ、調度品の破損、給金の前借り、全て1度では済まないだろう!

 これだけ問題行動を重ねてもクビに出来なかったのは、君の使ったコネのせいだ! だが彼ももう居ない、君はクビだ!!」


 女の額に青筋が見える。


「そんな!? オレは真面目に働いてたのに! それに第8倉庫の担当になってからは問題だって起こして無いってのに!」

「それはケンカをする同僚や壊れやすい調度品が無かったからだ!」

「なら給金の前借りは? 確かに以前は何度かしましたが、倉庫の担当になってから7年間、1度もしてません!」

「『1度もしていない』ではなく『出来なかった』だろう! 君の直接の上司は君を避けていた。それに同僚に借りようとした事が何度もあるだろう? 調べはついている!」


 女に全て言い当てられ、言葉が出ずに唸るしか無かった。


「諦めたまえ。どう足掻いても君の解雇は覆らない。

 それにここは王宮だ。末端の雑用係りにも品性が求められる。君にはそれが無い」


 男の目に暗い光が灯る。


「そっか、品性か。なら獣みたいにあんたを襲ってもしょうがねえよなあ?」

「平民による貴族女性への強姦は時として死よりも重い罪となる! 何より! 君がどれだけなぶろうと私は決して汚されはしない!」


 毅然とした態度に安いプライドと下卑た欲望を刺激され、男は獣のように飛び掛かった。


「望み通りブチ犯しグァア!!」


 物影から現れた黒装束の二人に、男は一瞬で組伏せられ拘束されてしまった。


「なんだお前ら!! どけえええ!!」

「君のような素行不良の輩に会うのに護衛を付けない訳がないだろう? ましてや人通りの極端に少ない場所なのだから」

「クソッ!! クソォオオ!! はめやがったなオンナァアアア!!」


 全身を拘束されながらも、なおも暴れる男。


「嵌めてなどいない。全て君自身の行いだ。それに私は君のある部分だけは評価していたのだよ」

「ある部分? ヘッ、チンコの事か? 下品なオンナめ!」


 黙れとばかりに護衛が男の頭を床に叩きつける。


「7年間、ばか正直に毎日この倉庫を掃除し続けた君のクソ真面目さ、それだけは評価していたのだがね。

 まぁいい、連れていけ」


 護衛が男を引き摺って行く。


「ああ、そうそう」


 呼び掛けに護衛が足を止めると、男の顔に笑みが宿った。何か希望を見出だしたのだろう。だがその言葉に相応しくない穢れた笑みだ。


「君は強姦未遂だが、恐らく明犯罪が適用される」

「ああ? なんだそりゃ?」

「未遂故にと軽い罰ですぐ釈放した場合、またすぐに繰り返す、或いは復讐に走る。そんな懸念がある場合、未来の被害者を減らすため、未遂扱いにはしない、という事だ。私の方からもそうなるよう進言しておく」


 男は確信を得たかのように笑みを深めた。


「良いのかぁ?そんなことして。オレが死んだら逆行転生して今度こそあんたをメチャクチャにしてやんよ!!」

「言っただろう? 貴族女性への強姦は罪が重いと。君はもう、安易に死ぬことすら許されない」


 なおも喚き、罵り、悪態をつきながら男は引き摺られて行く。


「死よりも重い罰とはなんなのでしょう?」

「さあ? それは私達には関係の無い事です。仕事に戻りましょう、後は単なるサボり魔だけのはずです」


 人事部の女は残りの護衛と共に第8倉庫を後にした。


 それから数日後、女は上司と二人、デスクワークに追われていた。そんな忙しい中、休憩代わりにと雑談に興じる上司。


「そう言えば君の捕まえた例の男だがね、使用人寮の自室の他に、市井に部屋を借りていたみたいだね」

「二重生活、他国のスパイだったのですか? あの程度の男が?」

「違う違う、そんなのじゃないよ。彼はそうだね、文字狂いとでも言っておこうか。部屋中本で溢れていたそうだよ」

「給金の失せ先はそこでしたか」

「凄かったみたいだよ。僕の知りあいが検分したんだけどね、並みの書店よりも多いんじゃないかって言ってたから」

「末端の雑用係りの給金では足りない訳ですね」

「そうなると、君の見立ても間違ってた事になるね?」


 嫌みかとこっそり上司を睨む女。だがそこには居たのは、自慢げに鼻を高くした中年の男だった。

 女はそこで思い出した。彼は少し発言に配慮が足りないだけの、ただの気の良いおじさんだということに。


「クソ真面目に働いてた事ですか?」

「そうそう。彼は愚直なまでに職務に忠実だったのではなく、ただ単に職場の環境が彼にとって楽園だっただけなのさ! まさに僕が最初ににらんだ通りさ!」

「私もまだまだですね」

「そうだね、君が僕の域になるにはせめてもう20年は精進しないとね!」


 この発言も嫌みでは無いのだろう。現に女の歳に20を足しても彼の年齢には届かない。


「それから彼、取り調べ中に転生だとかスキルの覚醒なんて事を頻繁に言ってるみたいだけど、転生は調べようが無いからともかく、スキルの覚醒なんてあり得るのかい?」


 上司はスキルを持たないが故に、スキルに関する知識も乏しい。そこで虚偽判定のスキルを持つ女の出番だ。


「いいえ、あり得ません。最近その手の娯楽本が多く出てるので、影響を受けているのでしょう」

「そっか。物語の主人公に自身を投影するって言うのはよくある事だけど、彼の場合はもう、影響と言うより妄想だよねぇ。

 それにしても君詳しいね?」

「夫が好きなので」


 女は答えた瞬間、マズイ、と眉根を寄せた。


「確か10歳下だったね、学生だっけ?」

「魔法学院を今年卒業予定です」

「じゃあ18か。良いなあ、青春。僕もその頃妻と出逢ってね、あ、ところで『夫が好きなので』ってどっちの意味?」


 女は内心舌打ちをした。この男はおじさんの癖に恋バナが好きで、また長くなりがちなのだ。仕事が溜まっている状況の今、付き合っていられない。


「それよりそろそろ手を動かして下さい」

「僕は君ほど器用じゃないんだ。おしゃべりしながらじゃ、書類の読み書きなんてできないよ」

「また今度話しますから今は働いて下さい」

「君この話題になるといつも逃げるじゃないか」


 誰得なおじさんの膨れっ面でこの話はおしまいだ。 



 ここまで読んでいただきありがとうございます。


 宮廷追放モノなんてジャンルが有るかは分かりませんが、私なりに最近ランキング上位を席巻している宮廷追放モノを書いてみました。

 如何でしょう、やはりタイトル詐欺でしょうか。


 ほぼセリフだけで中々に読みにくかったかと思いますが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ