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第1話:未来からの伝達

「ぐっ・・・おお」

 ゴウゴウと轟く雷。そびえ立つ断崖絶壁。今にも崩れそうな岩の突起にあしをかけ足をかけ、踏ん張る。


「ぬぐぐぐぐ・・ああ!!はぁはぁ・・・」


 上るたびに喉から漏れる嗚咽。しかし彼『三日月奥戸』にはどうしても行かなきゃならない理由があった。その後登ること10分ようやく頂上にたどり着いた。


「なっ・・・!!」


奥戸は絶句した。目に飛び込んできた光景、それは見るからにお姫様にしか見えない美少女がこれまた見るからに魔王にしか見えない巨人の手の中で必死にもがいている姿だった。


『グァハッハッハッハッハ~!姫は貰ったゾ勇者~ハ~ッハッハ』


と盛大に笑う魔王の隅で、もがき苦しんでいる美少女が、目に涙を滲ませた。


「助けて・・・誰か・・・誰かお願い助けてよーーー!!」


どうやら美少女は奥戸が助けに来てくれたのを知らない様子で誰か助けてと何度も叫び、じったばったと暴れている。すると奥戸は、胸いっぱい息を吸い、


「姫—————————————!!今助けに参りました——————————————!!」


と窓ガラスが割れるぐらいの勢いで叫んだ。それを聞いた美少女は奥戸の方に顔を向け、こう叫ぶ。


「お、奥戸!来てくれたのね!!」


と言い返した美少女はこう叫び返す。


「奥戸ぉぉぉ———————!!この魔王を倒すには—————————————!あの伝説の聖剣『ブラッドセイバー』が必要なのよ――――――――!!」


すると今度は奥戸がこう叫び返した。


「姫――――—————————————!!既にその剣はこちらの手の中に—————————————!!」


それを聞いた魔王が目を丸くする。


『ナ、ナニィィィィ!?き、貴様あの聖剣を手に入れたというのか!!』


その問いに答える代わり、奥戸が二ッと微笑を浮かべる。


「ああ、今見せてやる」


奥戸はそういうとウィンドウを出す。あれこれの作業を終えると背中に黄金の剣を納めた鞘が出現した。そして黄金の柄を強引に掴むと一思いに引き抜く。


すると聖剣の全体が、その姿をあらわにした。黄金の柄とは違う白銀色の刃。柄の中心に赤い宝玉がはめられている。刃元付近に巻き付くツル・・・のようなもの。


「これだろ?お前が唯一恐れている伝説の聖剣『ブラッドセイバー』!」


そう言って剣の剣先を魔王に向ける。


『ヌ、ぐぐぐぐ・・・ぬぉぉぉぉ—————————————!!俺がこんな奴に負けるはずが・・・なぁぁぁぁい!!』


そう叫んだ魔王が高々と拳を上げ、勢い良く振り下ろす。それを軽々と避けて、剣を構える。


「貴様が犯した罪、死をもって償うがいい!」


そう言うともう一度剣を握りなおすと、大地を思いっ切り蹴る。そして走り出すと同時のタイミングで魔王は口に力をこめる。口を開けるとその口から炎のブレスが発射される。


そのブレスを素早く避けると、いい考えが浮かんだかのように、立ち止まる。するとそのすぐ後ろでブレスが破裂した。その爆風は奥戸の体を宙に浮かせた。


『ナ、なに—————――!?」


奥戸は剣を高々と掲げると、その剣が緑色の光をまとう。


「くらえ!最強剣術『エクストリーム・バステンド・オーバー』!!!」

             ・ ・ ・

「ハッ」


奥戸は気が付いたときには、両手で直定規を握り締め、机の上にたたずんでいた。


 教師は言葉も出なかったようで、チョークをプルプルと黒板に押し付け、クラスメイトの手からシャープペンシルが床に滑り落ち、カッシャーンと音がした。


 その瞬間、教室が静まり返った。ここでようやく教師が口を開いた。


「奥戸ォォォまたてめーかァァァァァ!!」


奥戸は恐怖と恥ずかしさではなたれ小僧になっていることにきずいていなかった。初めてのことに思えるが、奥戸にとってこの状況というのは普段の生活でよくあることなのだ。


教師が押し付けていたチョークの先がミシッと音を立てて崩れた。

 

「てめーはいつもいつも同じことの繰り返しかァァァグラウンド500周して来いやァァァァ!!!」


これはその後から聞いた話なのだが、あの授業の後にに休み時間に外からヒィィという声が聞こえてきたらしい。


「おい三日月、お前ま~た妄想の夢見てただろ。」


 クラスメイトの坂溝浩二さかみぞこうじがいつものように奥戸をいじり倒す。


「今度はどんな夢見てたんだ~?ん~?」


「いつもの夢~」

 

 浩二の問いにのんびりと答える奥戸。先程の夢がいつも見ている夢らしい。


 『三日月奥戸』15歳。悪森投影学園あくもりとうかげがくえん)の高校1年生。


 成績は中の下。運動神経はバリバリで、テストの点数はさほど悪くはないのだが、成績を下げているのは普段の授業中の態度なのだ。


 そのひどさはもう分かっているであろう。その後奥戸は教師にしっかりと謝罪したようだ。午後5時25分、奥戸は帰り道をトボトボと歩いていた。


奥戸は剣道部に所属していて、いつもは4時半に終わるつもりが、今日は少し長引いたため学校から出たのが5時5分だった。


 幸い奥戸の自宅は学校から徒歩で20分もかからない。


「見つけた・・・『三日月奥戸』・・・」


 不意に声が聞こえた。振り向くとそこには、見覚えのある美少女が立っていた。


「え、て、ど、どうして俺の名前を・・・」


 奥戸が問いかけるとその美少女は、コホンと咳払いするとくちを口を開いた。

 

「うーんカッコ良く言えたのはいいけど、後のセリフ考えていないんだな~」

 

 とのんきなことを口にする美少女に奥戸はこちらものんきな声で更に問う。


「え~っと・・・君だ~れ?」


 すると美少女は急に真剣な顔になり、こちらにやってきてこう言った。


「あたしの名前はビューラ。この世界よりも未来、2118年からきたの。」


 今度は奥戸が口を開く。


「え、ちょちマッチョ。2118年ってことは22世紀からやってきたってこと?それってあれじゃんド〇えもんじゃんぐあ!?」


 最後の語尾はビューラが奥戸のふくらはぎを思いっ切り蹴りつけたことによる。しかしビューラが発した一言に奥戸は想像を超える衝撃を覚えた。


「ふざけない!!いい、重要なのはここからよ!あなたは30年後に心臓の病気で死ぬ。そして転生、つまり来世ではあなたはグリスト・バーンという名を授かり、魔王バーンとして全世界の支配者となる!」


「俺が・・・魔王?」


 奥戸が立ちすくむ道路の横で黒猫が笑うように鳴き声を上げたころ、空は血のように赤く、そして鈍く空に広がっていた。まるで奥戸の恐怖を見過ごすかのように・・・

【続】

  ―次回予告―

 奥戸に忍び寄る影


「奥戸ォォォ逃げてェェェ!」




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