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俺がツイてる(プロット版)  作者: 非公開(ごろごろ)
序章 終わりと始まり
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#4 コノセカイ。

 ◇二人が出会ってから、時は流れ◇


 この世界に季節というものが無いのか、はたまたこの村周辺の気候が特別なのか。枯れること無い広葉樹が、緩やかな風に吹かれてわさわさと音をたてる。


 俺はそんな緩やかな風を感じながら、この数年を振り返っていた。脳内会議の参加者は三人の俺だ。


 能天気な俺。間抜けな俺。アホな俺。さぁ、暇だし今まで覚えた事でも整理してみようか。


 この村にはすっかり馴染んだよな。いや、“馴染んだ”は少し違うね……メル以外の村人は俺の存在を知らないのだから。


 けど、一番肝心なメルが俺の事をルアさんと呼んで、なついてくれているんだから良しとしよう。二人で俺の新しい名前“ルベルア”を考えたのも良かったのかもね。


 マドカのままでも良かったんだけど、悪魔になったんだし、どうせなら悪魔っぽい名前を付けてみよう!ってことで二人の知ってる悪魔三体から頭文字を引っこ抜いて作った名前だ。


 そういえば、俺の見た目は端から見ると中々の怖さらしく、「ルアさんが他の人に見えたら村が大パニックになるよ!」と、メルが言っていたな。


 それほど心配しているわけじゃ無いけど、万が一見えちゃった時には何とかするとしよう。多分、名案なんて思い付かないけどね。


 中身がおっさんだからなのか、時間はあっという間に流れた。この世界に来てから三年を迎えたのだけれど、当面はこれまでと変わらず情報収集に焦点を置こうと思っている。


 とはいえ、メルと共に世界について調べ始めて2年半にもなれば、この世界の事はかなり分かってきた。但し、この世界の事なら俺に聞いてくれ!と言えるようになるまでは、後六万年くらいかかりそうだけど。


 なにせ、この世界はとんでもなく広いらしいのだ。聞いた話だけど……ざっと、東京ドーム500億兆個くらい。


 すまん、適当だ。


 田舎育ちは東京ドームの大きさなんて知らないのに、なんでもかんでも東京ドームの数で表しやがって!ばっきゃろー!


 おっと、熱くなっちゃった、話を戻そう。


 古めの地図で確認したところ、未開の地を除いても地球の倍はありそうだった。でも、地図がどれくらいの縮尺なのかは何処にも書いてなかったから、実はスッゴい小さかったりしてね。


 物知りな雑貨屋のオヤジが言ってたけど、海や砂漠などに暮らしている人々もいるらしい。


 おまけに、モルドーの話が本当なら、エンドルゼアという名のこの星は今でも少しずつ成長していて、古い地図を信用しすぎると思わぬトラブルを招くことがあるとか無いとか。


 少し話は反れるけど、メルが一歳を過ぎた頃からモルドーやエリス、村の物知り連中から話を聞きたい時は、俺が盗み聞きをするんじゃなく、直接メルに質問させている。


 可愛いさ真っ盛りのメルに質問させれば、聞いていない事まで満面の笑みで答えてくれるからね。加えて言うと、その中で群を抜いてデレるのが父親のモルドーに他ならない。「ねぇ、お父さん?」の部分だけでも目尻が60°下がるもの。


「こんなこと聞くなんて!メルは賢いねぇ!自慢の娘だよぉ!ご褒美に何か買ってあげようか!何が欲しい?」って必ず言うしね。


 きっと世界一チョロい父親なのではなかろうか。デレすぎて正直キモいけど“折角だから搾れるだけ搾り取っておこうぜ!”作戦は発動済だからこれからもメルを愛でてくれ。


 勿論、メルのお陰で今までの全作戦が成功している。


 モルドーからの戦利品は、この世界では高級な分類である“本”数冊。どこから出てきた金で買っているのかは知らないが、モルドーはご褒美を買った際、必ず“ママには内緒だよ”と言うけど、メルはいつもエリスの前で本を読んでいる。


 お父さんの味方じゃないの!?と思うかもしれないけど、後々バレたりした方が怖いことになるんだぞ。つまり、モルドーの為でもあるんだよ、感謝したまえ!


 まぁ、モルドーは特に何も言っていないけどな。


 メルは今も熱心に本を読んでいる。ちびっ子博士になる日も近いかもしれない。


 入手した本とか村人たちの話によると、この世界では各地に国が転々としていて、それぞれの国には王が存在する。で、村や小さな街は一番近くに存在する国王とその国の所属になるって事だ。


 その境界は曖昧だけど。まぁ、普通だよね?


 今、俺達が住んでいる“ワプル村”だと所属する国は“ベクール”で、ベクールの王はトーラス・ドラフォイという名前みたい。


 日本の感覚で言うとトーラスが名 、ドラフォイが姓にあたる。姓は貴族しか使わないらしいから、何かの間違いでモルドーが貴族になるか、メルが貴族と結婚しない限り姓を持つことは無い。


 へぇー。って話だよね。んで、俺達が気になったことは、もっと他に沢山ある。


 冒険者として世界を旅した事があるっていう、村長のジジイの話だと世界にはかなり沢山の種族が存在しているみたい。俺の知ってるアニメやゲームでもお馴染みなドワーフやエルフ等の亜人も存在するとか。


 種族の名前を聞くだけでもファンタジーを感じて心が踊る、ぜひ逢ってみたい!


 ドワーフやエルフの女の子に囲まれてあんなことやこんなことに、グフフフフ!あっ、囲まれるとしても俺じゃなく、メルか……チィッ!


 一番肝心な話だと、この世界の“安全度”についてだろうか。


 メルと話しをする時の内容でも “いつか旅をしてみたいね” という話になることが多々あるもんな。


 その時のためにも“安全度”が最重要事項になるのは間違いない。建築現場でも“安全第一”は絶対条件だもん。


 それについて、モンスターの有無は重大な要素だけど、残念ながらモンスターは存在するみたいだ。


 村の周りじゃ小さなモンスターすら見かけないけど、それはもしかしたら毎日マナを喰いまくっている俺の仕業かもしれない。でも、普通は街や村の外に出るとモンスターがいるとか。


 “モンスターは怖いよ”って本によると、モンスターの発生には大気中に多量に含まれる“マナ”と呼ばれるエネルギーが関係してて、そこから発生してると書いてあった。


 同じ本によると無から発生するモンスターも居れば、多量のマナを体内に宿した動物が変異してモンスターとなる場合もあるみたいだ。


 モンスター、魔族、人種族は分けて考えられていて、魔族が人種族と違うのはマナから生成した魔力を使う事。人種族はもエルフもドワーフもひっくるめた総称で、人種族にはモンスターに対抗するための様々な職業があると載っていた。


 ちなみに、人種族はエレメントという魔素から魔力を生み出すと書いてあった。


 俺の頭じゃあの数の職種を全て覚えるなんて到底無理。分かったのは大まかな事だけだ。


 商人や農民など生活を支える“職人(ライフ)”。


 それとは別に、モンスターや魔族とかから人々を守る者、各地の洞窟や魔巣等に潜り珍しい宝などを持ち帰る者を総称して“冒険者(ローグ)”と呼ぶ。


 大きくはそのどちらかで分かれているらしい。例えば人に職業を聞かれたとき、“あなたは何者ですか?”の返答は“私は商人です”で良い筈だ。


 じゃあ、ライフとローグで分けてる意味は?と思ったけど、単純に協会がライフ協会とローグ協会に分かれているだったね。


 それぞれの職には異名持ちという、各地のギルドの中においてトップレベルの者達が存在していて、もし商人として世界に名を轟かせるほどの人物になれば、“商王”なんて呼ばれることになる。


  俺の中の商王のイメージはぽっちゃり体型で紫の髪をしたおっさんなんだけどなぁ……。


 ローグの方だと、例えば剣を極めに極めた者は“剣神”と呼ばれるらしい。


 ここでまた不思議がひとつ。ライフでは極めても“王”の称号までなのに、ローグだと“神”と付く異名持ちがいくつか存在するって違い。


 それだけモンスターが脅威で、ローグが重要視されているという事なんだろうか。メルを危険に晒すわけにはいかないし、俺はどんなモンスターが現れても倒せるように鍛練を欠かさず行わなきゃ。


 といっても、俺の修行は単純明快。


  “魔法の秘密”って本で勉強した時に気付いたけど、俺の体は魔力体。モンスターや魔族と共通で魔力の保有量が直接的に戦闘力になるようだ。


 しかも俺の場合は普通の人と違って、魔族の魔力の源であるマナも吸収できる上に、自身の核の大きさが足りず、これ以上魔力を貯められないよ!どないしよ!という事態にならない。なぜなら俺には核なんて無いんだもん。


 マナとエレメントさえあればいくらでも魔力を溜めることができるのだ!グフフ!


 自由に姿や形を変えられる!固さも自由自在に調整できる!単純な攻撃として影を剣のようにして伸ばす・飛ばす!なんて事もできちゃう!


 ハァハァ!


 あらゆる攻撃の時に出すスピードも自由ゥゥ!それら全てを魔力によって行えちゃうんです!!奥様見てください!この完璧なボディーー!無駄が無い!!ヒャッハーッ!


「(ん?ルアさん、何か言った?)」


(『何も言ってないよ』)


 危ない危ない、知らず知らずのうちに息が荒くなってたみたいだ。


 んで、魔法使いになりたい人は魔法の勉強に数年を費やし、魔方陣や詠唱を覚え、さらに上を目指すならそこから派生を研究したりと天才じゃない限りは努力に努力を重ねないと強くはなれない。


 だがしかし、そぉーーんな努力も必要無いんです!!


 そんな苦労や努力をすっ飛ばして大気中のマナを喰らい続ける!喰らったら体を自由に動かす練習をするだけ!


 何故ならこの悪魔ボディーー!体そのものが魔力体でありぃィ、思い通りに魔力を使うことが出来るのだからァ!


 その上、このマナ吸収機能を使えばここら一帯のマナを吸収することで村の周りで新たなモンスターが発生することも無くなるんです(多分)!!奥様!?一石二鳥なんですよォォォォ!


「(ルアさん?)」


(『何も言ってないよ』)


 ハァハァ。興奮しすぎてうっかり中二病(じびょう)が出たみたいだ、危なかった。


 つまりはこの体、想像以上に便利な作りだったってわけ。でも、実際にモンスターに遭遇したことがある訳じゃ無いし、いざモンスターと出会ってみたら俺より強い奴らばかりの世界かもしれない。


 もし俺がやられたりして居なくなったら、メルはどうなるだろうか。


 メルは女の子だけど、元・剣士の村長のジジイから剣を習っていて、筋が良いと誉められている事が多い。


 力の弱い人族では、女剣士というのは少ないらしいけど、村に攻撃魔法の使い手がいないらしい(・・・)ので、魔法の代わりの攻撃手段として、剣を習っている。


 メルは普通の人族よりずっと力が強いので、このまま剣を鍛えても強くなれる可能性は大きいと思うんだけどね。


 ビショップのミルザから回復魔法も習っていて、三歳とは思えない学習能力だと周囲の人間は驚いている。


 すでに回復魔法のヒールを使えるようになったメルに大人達は村始まって以来の天才児だと騒いでいた。


 それもそのはず。 本来、人は長い鍛練により体内のエレメントというものを増やしていき、溜まったエレメントを使い魔法を生み出していると載っていた。


 三才児ではその体内のエレメントが魔法を使えるだけの量になっているはずが無く、学力も無いのだから、大人達が騒ぐのも当たり前だ。


 なので、少しでも怪しまれないようにするためにメルも努力している。


 回復魔法のなかでも比較的簡単な魔法のヒールなのだが、初めてヒールを使えた時のメルは“うわぁぁい!使えた!使えたよミルザ様ァーーー!やったぁ!”と天才子役さながらの名演技を披露してくれた。


 その子、チートやでぇぇぇぇぇぇ!!


 中身は三歳児ちゃうでぇぇぇぇぇぇぇえぇ!!


 と思ったが、知ってるのはもちろん俺だけだ。村人達は盛大にその成長ぶりを語り合っていた。


 この世界では学校が義務化されている訳では無いらしいが、メルの神童ぶりに歓喜したモルドーは将来を見据え、学校へ行かせる事を決めた。


 学校は“ベクール”に在り、十才から利用可能という決まり事になっているとか。


 十歳から利用できるとはいえ、利用する人の多くは十八歳から行くらしい。説明を聞いた限りでは日本で言うところの大学にあたる役割だと思う。それまではこの村でのんびり暮らすことになるのだろう。


 とは言っても子供の成長は早い。きっと、あっという間にその時は来るだろう。


 モルドーとエリスはもちろんの事、村の連中もメルが学校に行ったら寂しがるだろうな。まぁ、心配するなモルドー、お前達の分までたっぷりメルを可愛がってやるよ!


(『グヘグヘヘグフフ』)


 あっ!やっちまった!力みすぎて声が……。


 本を読んでいたメルが“バッ”と本で顔を隠す。


「(き、気持ち悪い笑い方しないで……!こっち見ないでっ!!)」


 メルは本の上から眼だけを出すと、俺に凍てつく視線を放った。これぞ改心の一撃!!


(『グハッ!』)


 野生の悪魔(元おっさん)は倒された!!……ごめんってば!!


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