ツイてない俺の話。
初投稿作品ですm(。_。)mペコリ
誤字・脱字あると思いますが、是非お付き合いくださいっ!
(*≧∀≦*)ノ
人が生きていく中で、転機になるような大事件というのは突然やってくる。
それは人に限らず、動物、虫、植物、星や生命体とは呼びにくいものでも、きっとそういう風にできているのだろう。
転機は本当に突然やってくる。
それがそのモノにとって良い事だろうが悪い事だろうが、お構い無しにやってくるのだろう。
俺の人生には、二つの転機が訪れた。
はじめの転機は俺が生まれる前、自分の誕生日に両親を事故で亡くしている。
母親のお腹の中に居るときに起きた事故だったらしく、亡くなった両親の親、つまり俺の祖父母からすると、“残された希望”として大手術のもとに取り出された赤ん坊が俺である。
“奇跡的に無事だった赤ん坊”は地元の新聞に小さく載ったと祖父が言っていた。
そんな普通とは違う状況で生まれた俺を、我が子以上にとても大切に育ててくれた祖父母。
「元気ならそれで良い!」は祖父母の口癖。
好きな事を家計の許す範囲で自由にやらせてもらいながら、甘く、時に厳しく育てられてきた。
そんな俺も早いもので気付けばもう三十三歳、結局、二人にひ孫を見せてやることはできなかった。
子供どころか三十三歳にして彼女も居ない、居たこともない!
寝坊した朝、街角で食パンを咥えた女の子とぶつかる事もなく今日まで生きてきたのだから、彼女が居ないのもしかたがない話だ!と、誰か言ってくれ。
クソッ、彼女欲しかった!
とにかく、物心付く前から祖父母が親として存在してくれていたので、俺自身は事故に対しての悲しみ等は感じていない。
だが、祖父母は亡くなったあの時まで、事故の時の悲しみを胸に抱いていたことは間違いないだろう。
「おめぇの父さん、母さんのとこさやっと行けるわぁ」と言っていた悲しくも優しい笑顔は、とても印象深く俺の心に残っている。
祖父母の旅立ちが俺に訪れた第二の大きな転機――とは、ならなかった。
確かに多少の不幸を気にしない俺でさえ、暫く鬱ぎ込む程、とても悲しい別れだったが、それは明確に違うと分かっている。何故か?
二度目の転機はなんの変哲もない“普通の日”の筈だった、“今日”やって来たのだから。
そう、今日はなんてことこない、普通の日だったんだ……。
田舎街で大学に行かずに就職を選んだ俺は就職企業の二度の倒産を経て今の建築会社に入社、そんな俺は建築現場の作業員としてこき使われるべく今日も仕事場へと車を走らせた。
◆◆◆
昨日、やっとあの難攻不落だったゲームをクリアしたし、やる気は上々!天気も良いな、雲一つな……ん!?ナンダアレ?
一瞬見上げた空の端に何かが映った。
少し先のあそこ、新手のパフォーマーか?………ッッとかいってる場合じゃねぇ!!
人だ! 人が小さいビルの屋上にいる!落下防止柵も手摺も見当たらない屋上の端に!!
それは誰の眼にも、一目でヤバい状況と確信できる立ち位置。
俺は車を急ブレーキで止め、すぐに車から降り、ビルに向かって走った。
「こんな田舎で!テレビドラマじゃあるまいし!何で俺が通る時間にっ!」
俺は悲鳴に近い文句を吐き出しながら全力で走った。
ビルはもうすぐそこ。俺は走りながらビルを見上げ、見間違いであることを祈るようにもう一度屋上を確認した。
人!女性だ!やっぱり居る!
状況的に向こうもこちらに気付いているはずだが、俺に対する反応を見せない。
ビルは三階建、すぐに中にさえ入れれば、全力で走り階段をかけ上がりさえすれば、三十秒もあれば彼女の元に行けるはず。
俺はスポーツ、ゲームなどの遊び、仕事でさえも考えるより先にやってみる!やってダメでも出来るまでやればいいだろ!という矛盾を押しきる単細胞の感覚派。
自他共に認める“脳筋野郎”だ。であるからして、俺とは違う“頭の回転が早い人達”が思い付くような救助方法をこの状況で思いつくはずが無い。
「ハァ!ハァ!ドアは……!?あそこか……!!」
もし鍵がかかってたら横の大きな窓を割って入ろう、きっと人助けの為なら許してもらえる!
一か八か!鍵が開いている事を願ってドアに手を伸ばした、その時――!
飛んっ……だ……!?飛び降りた!?
俺の頭は真っ白になる、真っ白になりながら彼女めがけて横に跳んでいた。
三階建てのビルの屋上から飛び降りた人を助けられる、そんな漫画の主人公のような力が俺にある筈がない。
そのくらいの事は分かっているのに、どうしてそうしたのかは自分でも分からない、考えるよりも先に体が動いてしまったのだから仕方がなかった。
それが映画撮影で、俺が映画監督だったならば、彼女が俺の所に落ちてくるまでのシーンはカップラーメンが出来上がるくらいの時間を使うと思うのだが。
残念ながらそれは映画撮影では無かったし、俺は映画監督ではなく建築作業員である。
“あっ”と言う間に、“あっ”と言う間も無い程に一瞬で彼女は俺の上へと落ちてきた。
「よけ……!」
女性は何かを叫びかけた。
――ゴッッ!!
それ以上ない程のリアルな音が響き、一瞬火花のようなモノが散った後、目の前が真っ暗になり俺の音は消えた……。
普通の日だったはずの“今日”と共に。
◆◆◆
およそ意識が無い中での意識とでもいうのか、その中で考えてみるに俺は元々ヒーローのような存在に憧れていたんだと思う。
突然の出来事にその思いが強く爆発し、もし俺に特別な力があったとしたらという期待で、女性を救える行動をとったのかもしれない。
そして結果は明白、俺はヒーローになる事に失敗……きっとあの女性を助けることも出来ずに自らも死んだのだろう。
あの瞬間、彼女は何て言おうとしたのかな?
(「よけ……」)
余計なことすんな!とかかな?ハハ……。
だとしたらちょっと凹む、物理的にも俺の頭は凹んだだろうけどさ。
けど、確かにそうだな……余計だったかもな。
まぁ、死んじまったもんはしゃーねぇか!父さんと母さんは写真でしか見たことが無いから、会っても分からんかもしれないけど、じいちゃん、ばぁちゃんに会えると良いな。
最後に感じたあの衝撃、巨大な鈍器でぶっ叩かれたような衝撃は筋肉自慢の俺にも死んだと理解させるに十分足るものであった。
それからしばらく時間が経ったように感じるのだが、俺は変わらずに遠い意識の中で、もう一人自分が居るかの様に自分に起きた出来事を整理しながらモヤモヤと過ごしている。
とにかく、深澤 円の物話はここまで。
三十三年という短さで、第二の転機にあっさりと幕を下ろされてしまった。
◇
それにしても、いつまで此処に……ん?光が……お迎えか?
いや、何か違う。生きてた?俺、生きてた?
「あふ、えああ、ああ」
声が聞こえる。小さい子の声?赤ん坊の声?うーむ、考えられるのは病院だが、病院だとすると小児科?それとも産婦人科?
だが何故だ?小児科も産婦人科も俺とは関係無いはずだが……目はまだ見えないし、どうしたもんか。
「おめでとうございます!元気そうな女の子ですよ!」
看護婦さんらしい人の声が聞こえる、赤ん坊が生まれたって事は、やはり産婦人科なのだろうか。
「はぁ、はぁ、ありがとうございます。 この子、泣かないですけど大丈夫ですか?」
母親らしき人の心配そうな声からは出産での疲れが窺える。
知らない家族のお母さんがどうして俺の近くで出産しているのかが全く分からないけど、無事に赤ん坊が生まれたみたいで良かったよ。
「大丈夫ですよ、声も出ていますし。健康そうな、普通のお子様ですよ」
看護婦さんらしき人が返事をする、看護婦さん(仮)とでも名付けようか。俺の目はまだ見えないが、それにしても声がとても近い。まるで耳元で話しているかのように近い。
「それでは加護を掛けますね。ホーリープロテクション!」
……ん?聞きなれない単語が聞こえた気がする。いや、モーリープロダクション?それだと看護婦さん(仮)の滑舌は壊滅的なダメージを受けていることになるのだが。
「ありがとうございます、ビショップ ミルザ様」
う……ん。ビショップ?どうやら看護婦さんではなくビショップだったらしい。ビショップて!ゲームじゃないんだから!
……なんか変だと思ったんだよ、俺だってさ。ハハハ……うん、どうやらそういうことらしい。こういう時、人は焦るべきところなのか、喜ぶべきところなのか。
ここは日本じゃないのか。というか、やはりさっきの出来事で俺は死に、違う世界に来てしまったってことか。俺の身には現実的に起こり得ない転生というレア事象が起こってしまったようだ。
アニメもゲームもラノベも大好きだったし、転生あるあるがあるとしたら俺の場合も例に漏れず当てはまるだろう。
ふぅ、何となく今の状況は想像できたけど、目がまだ見えないのが切ないな。
きっと俺は可愛い赤ん坊に……。
あれ?そういや女の子って言ってなかったか?むむむ、異性になっちまったのかぁ……男と恋愛……か。出来る気がしないんだが!
まぁ、女の子とも付き合えなかったんだけどな。
でも心配は要らないだろ!多分こういう場合でもなんとか出来ちゃうのが転生者の特権だろうし!というかそうであってくれ!
とりあえず、ずっとふわふわ揺れてる体に力でも込めてみるか。全身の感覚を研ぎ澄ませ、アニメでやってた拳法女子・ニーヤオみたいに謎の気を集めるんだ!
――スイーーーン!
ふぁ!?何事か?体が軽い?飛んでる?フライングベイビー!?
妖精?俺は妖精に生まれ変わったのか?先程居たビショップさんは魔法的なものを唱えていたし、魔法があるなら妖精がいても不思議じゃない。
「あきゃっん!」
赤ん坊の声。俺?俺が喋ってる?
いや待て待て感覚が無い!赤ん坊って自分の意思で喋ってる訳じゃないのか!?なにこれ怖い!
むぅ!やはり優先するは目かっ!全神経を目に集中させ息を大きく吸い込んだ(つもり)。
するとビリビリと力がみなぎってきた。ぼんやりしていた白い光に色が入る。
見え、てきた……見えた!
木造の優しい雰囲気の家の天井だ。天井が……近っ!!眼が見えて分かったが、俺は天井のすぐ下をふわふわと浮いていた。
見下ろすとそこには横になり休む大人の女性がいて、その隣に赤ん坊が入れられた揺りカゴが大切そうに置かれていた。
どうやら赤ん坊は俺の生まれ変わりでは無かったらしい。人間として転生出来なかったのは少し残念だ。が、そうなると俺は何者なのか気になるところ。
妖精ならまだ良いのだが、ハエや何かだとしたら……ゾッとする話だ。確かめねば!自分の姿を映すべく、俺は窓の前へと向かう。不思議な事に、大きく息を吸った時から体は自由に動かせている。
どうやら息を吸うことで力がみなぎる体らしい。窓の前、映った自分。
黒い、とにかく黒い。
二本の角?に見えなくもない影、ぽっかり真ん丸で黄色い目。
目以外は全て黒い、黒の中に黄色い目があり口のところがたまに赤く裂けて見えている。
……悪魔?恐ぇぇぇえええ!!可愛くねぇぇぇ!
気絶するほど恐ろしい見た目。と言うほどでは無いが、地球人百名に街角アンケートをお願いしたならば、悪魔という返答が八割近くにはなるだろう。
…………って、うぉい!!悪魔?影?嘘だろ!?
いや、これってどういう扱いになるんだ!?
手なんて体から離れて浮かんでるだけだし、就職活動の時とか困らないのか?絶対ヤバいだろう!
悪魔だぞ?悪魔というかシャドウというか。
我輩は悪魔である、脚と腕はまだ無い。とか言ってる場合じゃねぇ!
んぁ~、けどまぁ、虫嫌いの俺的にはハエよりは良かったか。
よく見ると赤ん坊と俺の間に黒っぽい線が繋がっているけど、線というか、これは影なのか?考えることは苦手だし、とりあえずこの繋がった影でも手繰って赤ん坊に近づいてみるか。
「きゃ!あうぅあぁ。んにぃ」
俺が見えてるのか分からないが、こっちを見て無邪気に笑う名前も知らない赤ん坊、今のところ嫌悪感は持たれて無いようで安心だ。
俺もこの赤ん坊もこれからどうなるかは分からないが、こうして第二の人生……?悪魔だから、悪生?
アクセイだと響きが嫌だなぁ。
影生?が始まってしまったのである。