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第四章 ~『魔導書のパワーアップ』~


 魔導書の競売が終わっても、オークションそのものは続く。熱気を放つ観客たちを尻目に、会場を後にしたニコラたちは、競り落とした商品の受け取り場を訪れていた。


「金は俺が払っておくから、商品を受け取ってこい」


 ニコラはオークションの運営に落札した商品の金額を支払う。二つの魔導書の料金を合せると、金貨十三万枚の大金である。運営は金貨を受け取ると、背中が見えるようなお辞儀をし、彼の支払いに感謝した。


「先生、魔導書を受け取ってきました!」


 分身魔法と収納魔法の魔導書を受け取ったアリスは、大事そうに二冊の本を抱え込み、駆け寄ってくる。誰にも盗ませないという意志が強く表われていた。


「随分と用心しているな」

「魔導書は盗まれると取り返せませんから。絶対に奪われないように注意しないと」


 宝石のような装飾品と違い、魔導書は一度目を通すと、中に納められていた魔法は使用者のものになる。もし奪われ、本を読まれでもすれば、折角払った大金が無駄になってしまう。


「盗まれないためにも、早速読んでしまえ」

「でもこんな高価な魔法、本当に私が習得してもよいのですか?」

「いいさ。それに金のほとんどはアリスの目利きで稼いだんだ。遠慮することはない」

「では先生に甘えちゃいます」


 アリスは二冊の魔導書に目を通す。淡い光が彼女の身体を包み込んでいく。魔法を習得した証明の輝きだった。


「読み終えた魔導書はどうしましょうか?」

「収納魔法で保存しておけ。役に立つこともあるだろうからな」

「何かに利用できるのですか?」

「魔導書は込められた魔法がなくなると、再び魔法を込めることが可能になる。だから魔導書にも変化があるだろ」


 先ほどまで文字がびっしりと記されていた魔導書の中身が、白紙に変わっていた。どこのページを開いても、文字が記された箇所はない。


「いずれ悪人から魔法を頂戴することもあるだろうからな。その時に白紙の魔導書は必要になる」

「いくら相手が悪人さんでも魔法を奪うのには抵抗が……」

「気にするな。悪人が魔法を使えなくなれば、その分犠牲になる善人が減るんだ。パンやスープを貧民に配るのと一緒さ。慈善活動だと思えば良い」


 アリスはニコラの言葉に納得したのか、何もない空間に手をかざして、裂け目を生み出すと、白紙の魔導書を収納した。


「目的の魔導書は手に入れましたし、次はどうしますか?」

「闇オークションまでは少しだけ時間があるんだよな」

「それにしても随分と開催時間が遅いですよね。何か理由があるのでしょうか?」

「一つは人目を避けるためだろうな。もう一つは、クリスティーゼオークションの客も集めるつもりなんだろ」


 クリスティーゼオークションには富裕層が多く参加している。もし開催時間が同じなら、客の奪い合いになってしまうため、終わってからの開催としたのだろう。


「うん。決めた」

「何をですか?」

「俺はこう見えても組織の幹部だからな。部下に挨拶してくるよ」



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