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第三章 ~『ケルンの闘う理由』~


「相手が阿呆で助かったな」


 ニコラはアリスの初戦突破に笑みを浮かべる。しかしアリスはすべてニコラに任せてしまったことが釈然としなのか、曖昧な表情を浮かべていた。


「私、何もしていないのですが、本当に良いのでしょうか」

「タッグマッチは相手からの提案だ。アリスが気にすることではない。それにトーナメントは無傷で勝ち上がることが重要だ。ケルンの奴も分かっているようだぞ」

「え?」


 ニコラがリングを見上げると、次の試合の勝敗はすでに決していた。勝者はダークエルフの長、ケルンだ。対戦相手のダークエルフは自分のリーダーを勝たせるために棄権したのだ。


「ボスを勝たせるために国王になれるチャンスを捨てるんだ。ダークエルフたちの結束が固いことの証拠だな」

「ケルンさんは昔から人望がありましたからね」

「そういえば昔からの知り合いなのだったな。奴はなぜ革命を起こそうとしたんだ? 本当に復讐のためなのか?」


 慈悲深い母親のおかげもあり、ケルンはハイエルフからも好かれていた。他のダークエルフたちのように不遇な目に遭うこともなかったはずだ。現状に満足している人間は、改革を求めない。なぜ武力蜂起を起こしたのか、ニコラはそこにケルンを倒すヒントがある気がした。


「ケルンさんは仲間思いの人でしたから、彼自身が満足した人生を送っていたとしても、仲間の思いを汲んで革命を起こしたのかもしれません」

「仲間のため。そういう気持ちがあるのかもしれないが、俺はケルンから強い意志を感じるんだ。他の理由はないのか?」

「……確証はありませんが心当たりなら」

「聞かせてくれ」

「ケルンさんは生き別れた妹、つまりはイーリスのことを溺愛していました。だから彼は幼少の頃から大人になったら行方不明のイーリスを探すのだと常々口にしていました」

「それが革命にどう繋がるんだ?」

「これはあくまで推測ですが、ケルンさんは国王の地位を手に入れ、その力で探すつもりなのではないでしょうか」

「おいおい、いくらなんでもそんなこと……」


 あまりに馬鹿げた理由だが、完全に否定することはできない。それはニコラが目的のためなら手段を選ばない性格だからこそ、他に方法がないなら自分もそうするかもと考えてしまったからだった。


「なぜケルンさんが革命を中断し、国王戦を開催したのか、思えば不思議でした」

「ハイエルフの残党に新国王を納得させるためだろう」


 王位を簒奪するより、国王戦というルールに則り、王座を決める方が皆の納得を得やすい。ニコラはそれこそがケルンの狙いだと読んでいた。


「そういった狙いもあるかもしれませんが、私はイーリスを探すために、国王戦という目立つイベントを開催したのではないかと考えています」

「もしアリスの推測が当たっているなら……その情報使えるな」

「まさか、先生……」


 アリスはニコラが何を考えているのか察する。それは悪魔のような戦術だが、勝率が大きく上がったと、ニコラは口角を吊り上げて笑うのだった。


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