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第一章 ~『到着した姫様』~


 暴漢から助けられたアリスがシャノア学園にたどり着いた時には既に試合が始まっていた。リング場で圧倒的な闘気を放つ優男と、一般人とさほど変わらない闘気を放つニコラが睨みあう姿はまるでライオンがウサギを捕食しようとするさまだ。


「アリス様、お待たせしました」


 シャノア学園の学園長であるサテラがアリスを出迎え、用意された主賓席に座るよう促す。理事長のサテラよりも豪華に飾られた椅子を見て、アリスは首を横に振った。


「私は学園の生徒になります。一人だけ特別待遇は遠慮させていただきたいです」

「これは失礼しました。アリス様はエルフの国王様とそっくりですね」

「お父様と知り合いなのですか?」

「はい。シャノア学園とエルフ領は親密な関係にありますから。今度エルフ領に姉妹校を建設する計画もあるのですがご存じですか?」

「知らなかったです。お父様は私に大事なことを何も教えてくれませんから。きっと信用されていないのですね」

「アリス様はこれからのお方。国王様からもアリス様を一流の戦士にして欲しいと頼まれております。きっとシャノア学園を卒業する頃には、国王様もアリス様を認めてくださるはずです」

「はい。私、絶対に強くなって見せます」

「その意気です、アリス様。それはそうと道中に暴漢に襲われたとお聞きしました。無事だとは事前に知らされていましたが何かあったのですか?」

「実は――」


 アリスはニコラに助けられたことを話す。もちろん返り討ちにしたオークからニコラが金を奪った話は伏せていた。


「私の馬鹿な弟が役立ったようで嬉しいです」


 サテラはアリスの話を聞いて嬉しそうに頬を綻ばせる。口調には誇らしげな感情が含まれていた。


「一つ教えて貰えないだろうか?」


 ニコラと優男の試合の光景を眺めるイーリスがサテラに訊ねる。


「構いませんよ」

「あの男はどこか怪我でもしているのか?」


 イーリスは路地裏でニコラと戦った時のことを思い出す。彼女の攻撃を避け、軽々と投げ飛ばしたニコラの闘気は、現在リングの上で彼が放っている闘気とは比べ物にならないほどに大きかった。


「まさか私を助けるときに、どこか傷めたのでしょうか……」


 アリスの顔が見る見る内に青ざめていく。瞳には涙まで浮かんでいた。


「違いますよ。弟は怪我なんてしていません」

「ならあの闘気量はどういうことなのだ?」

「それは試合を見ていればすぐに分かりますが、一言で説明するとしたら、弟は試合をするつもりがないのですよ」

「それはワザと負けるつもりということか?」


 イーリスの言葉にサテラは諦観を含んだ表情を浮かべながら首を横に振る。


「弟は試合ではなく、喧嘩をするつもりなのです」


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