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第三章 ~『奥義修得とトーナメント』~


「アリス、初戦の対戦相手が決まったぞ」


 ニコラとアリスは対戦相手を探すべく、手分けしてエルフリアで情報を収集していた。ニコラは先に宿屋に戻っていたアリスと合流する。


「聞いて驚け。アリスの初戦の相手はランキング百位だ」

「百位! それほどの実力者と良く対戦を組めましたね」

「高額なファイトマネーのおかげだな」

「先生、本当にありがとうございます」


 アリスはニコラが自分のために退職金を使い果たしたことに苦々しい想いを感じていた。成果を出さなければと、拳を握り込む。


「気にするな」

「ですが先生。この試合に勝てたとしても、次の試合はどうするのですか?」


 対戦相手に用意するファイトマネーは無限に用意することはできない。何か金策を考える必要がある。


「そこはぬかりないさ。試合は賭けの対象になる。俺が盗賊から奪い取り、貯蓄してきた財産すべてをアリスに賭ける」

「えっ!」

「そしてその金を次のファイトマネーにあてるんだ。これを繰り返せば、階段飛ばしで上へと昇れる」

「なるほど、さすがは先生です!」

「だが忘れるなよ。この方法は一度負ければ終わりだ」

「一度も負けられないのは実践も同じです」


 アリスは冒険者としてモンスターたちを何体も相手にしてきた。彼らに情はなく、一度でも敗北すれば、モンスターに食われる運命だ。そんな緊張感の中で修行してきたアリスにとって負けられない闘いはいつものことであった。


「私の相手はどんな人なんですか?」

「グレイブという名前のダークエルフの大男で、闘い方はオークスに近い、筋肉と闘気でごり押しするタイプだ。ただ一つ差違があるとするなら残忍さだな」

「残忍さ?」

「相手がギブアップしても殴り続けるそうだ。だから対戦相手が中々決まらず、アリスとの試合も組めたのさ」

「…………」

「グレイブはアリスの顔をゴブリンに近づけてやると公言しているそうだぞ。恐ろしくなってきたか?」

「はい。怖いです。ですが――先生と一緒なら怖くないです」


 アリスは手を組んで恐怖を振り払う。彼女の瞳には闘志が宿っていた。


「アリス、試合は三日後だ。それまでに一つ技を教えておく」

「技ですか?」

「この技は武闘家コルンが残した三大奥義の内の一つだ」

「伝説の武闘家の技……私に習得できるでしょうか?」

「できるさ。理解すればさほど難しい技ではないからな。まずは簡単な手本を見せる」


 ニコラはアリスの手を取り、薬指の付け根の部分を押し込むように触る。すると彼女の手から闘気の膜が消える。


「せ、先生、いったい何を」

「敵の闘気放出を一時的に止めることができる。闘気外しと呼ばれる奥義だ」

「凄い、これなら……」

「莫大な闘気量を保有している敵でも、その防御を突破することができる」


 特にアリスは闘気量が少ないため、相手の防御を突破できる技を習得する価値は高い。


「この技はどのような仕組みなのですか?」

「それを話すには闘気の仕組みについて話す必要がある。アリスは普段放出している闘気がどんなものか知っているか?」

「身体能力や肉体強度を向上させるものですよね」

「その通りだ。では闘気はどこから生み出される」

「そ、それは……」

「答えはまだ学者の間でもでていないが、武闘家コルンは独自の理論でこう結論づけた。筋肉と筋肉の隙間に闘気を放つ孔があり、そこから噴出された闘気を筋肉が吸い込むことで、肉体の働きが活性化しているのではないかとな」

「つまりはその孔を潰し、闘気の出口を塞げば――」

「相手の闘気放出を止めることができる。もっともこの孔は時間が立つと元に戻る性質があるらしくてな。闘気放出を止められるのは一定時間だけだと覚えておけ」

「無敵の技ではないということですね」

「そうだ。それにこの技は相手の闘気放出孔を潰さないといけない。矛盾するようだが、相手の闘気の防御を一度は超える必要があるんだ」

「それでも使い道は大いにあります」


 アリスは奥義の修行を開始する。彼女はまた最強の道を一歩進み始めた。


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