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第一章 ~『宣戦布告』~

ざまぁ回までもう少しお待ちください


 シャノア学園は特別クラスの一組と九組を除けば、通常クラスが二組から八組までが存在する。八組に近づくに連れて、戦闘能力の低いエルフ族や人間族が集められたクラスが割り当てられ、逆に二組に近づくに連れて、戦闘能力の高い狼族や巨人族やオーク族のクラスが割り当てられている。そのせいか一組へと続く渡り廊下は、進むに連れて教室から漏れ出す闘気量が増えていった。


「ここだな」


 渡り廊下を抜けた先、目的の一組の教室は九組から最も遠い位置に存在した。大理石の校舎は学園でもトップクラスに大きな建物であり、それぞれの学年の一組だけに許された神聖な校舎である。そんな場所にニコラとアリスは無断で踏み入った。


「先生、ここが一組の教室です。前と後ろ、どちらの扉から入りますか?」

「後ろの扉からこっそり入るぞ」


 ニコラたちが教室の中に入ると、扉を開ける物音を立てなかったにも関わらず、視線が一斉に後ろの扉に集中する。


「やはり一組の生徒は感覚が鋭いな」



 教壇で教鞭を執っていた髭面の教師がニコラの姿を認めると、授業を中断されたことに怒り、彼らに非難がましい視線を向ける。


「授業中だぞ。何をしに来た」

「この教室に俺の生徒をいじめた奴がいる。そいつに会いに来たのさ」


 教室を見渡してオークスの姿を探すと、目的の人物はすぐに見つけることができた。彼女は嘲笑を浮かべながら、隣に座っていた女子生徒と共に、ニコラたちを指差していた。


「おい、オークス。群れから出て来い」

「はっ、なんだい。王族の地位の次は教師に頼って復讐かい。どうしようもない奴だね」


 オークスは立ち上がると、全身から闘気を放ち、臨戦態勢を取る。鋭い視線がニコラへと向けられていた。


「おい、勘違いするなよ。お前と戦うのは俺じゃない」

「だったら誰だい?」

「アリスだ」


 ニコラは背中に隠れるアリスを引っ張り出し、オークスの前に立たせる。


「あんたが私に勝とうってのかい! ウサギとライオンが戦うようなもんさね」


 オークスは教室に響き渡る声で下品に笑う。笑っているのはオークスだけではない。釣られるように教室の他の生徒たちも笑い始める。最弱のエルフが最強のオークに勝つ。それはあまりに馬鹿げた冗談だったからだ。


「今のアリスでは勝てないだろう。だがな、三カ月だ。三カ月あれば勝てる」

「馬鹿を言うんじゃないよ。三カ月で何が変わるっていうのさ」

「そこのへっぽこ教師が教えるなら無理だろうな。だが俺が教えるなら、お前を倒せる実力くらいは身に付くさ」


 ニコラが髭面の教師を指さして挑発すると、教え子の前で馬鹿にされたことが我慢できないのか、彼は怒りの形相を浮かべた。


「随分な自信だが、君は実力で教師になれたのではない。学園長のコネと卑劣な手段によって教師の身分を手に入れただけだ」


 髭面の教師は挑発を返すように口元を歪めると、教壇から降り、ニコラたちのいる教室の後ろの扉へと近づいていく。彼が一歩近づくことに、闘気の圧力は大きくなり、生徒たちはゴクリと息を飲んだ。


「なるほど。刺すような闘気だ」

「私の実力を知って、恐怖したか」

「いいや。見た上でも言える。俺の方が実力は遙かに上だ。だが今は戦えない。学園長が来たからな」


 ニコラは首を振って、前方の扉から学園長であるサテラが入ってきたと示す。髭面の教師は彼の言葉を信じて、背後を振り向いた。


 勝負とは一瞬の油断がすべてを決める。当然決闘の最中に後ろを振り向く愚か者には敗北が訪れる。


 ニコラは男が振り向いている隙に、金的蹴りを放つ。闘気を集中させた足先は、男の睾丸を潰すに十分な威力を持っていた。


「ぐっ、ぐぎぎぎぎっ」


 睾丸を潰された髭面の男は、股間を押さえながら、苦悶の声を漏らして倒れ込んだ。誰が見ても戦闘不能な状態だ。


「覚えておけ。俺もアリスも手段を選ばない。三か月後には必ずお前を倒しに来る。一組と九組の代表が戦う武闘会の場でな」


 最強の一組と最弱の九組が闘う武闘会は、九組という噛ませ犬によって一組の圧倒的な力を学園の力としてアピールするためのイベントだった。当然、誰もが一組の勝利を信じて疑わない。そんな状況で最弱のアリスが勝利する。考えるだけで胸躍る展開だった。


「首を洗って待っていろ」


 ニコラたちは一組の教室を後にする。その背中を見つめる一組の生徒たちから嘲笑は消えていた。


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