プロローグ ~『勇者パーティを追放されました』~
本作を書籍版で読まれた人は第2エピソードのジェシカ編からお読みください!!
書籍版ではかなりの量を加筆しています。また特別編も含めています!
是非書籍版の方も読んでみてください
「ニコラ、お前を俺たちのパーティから追放する」
「え?」
突然の追放宣言にニコラは絶句する。二年前、彼は魔王を倒すべく結成された勇者パーティの一員として選ばれた。働くことが何よりも嫌いな彼は、当初その誘いを拒絶したが、あまりに熱心な誘いと、武闘家として修行の一環になるのではという期待から、とうとう首を縦に振った。
それから仲間と共に魔人や魔物と戦い、苦難を乗り越えてきた。そして魔王まで残りわずかという局面で、突然リーダーの勇者から追放を宣言されたのだ。受け入れられるはずもない。
「納得できるはず――」
「勇者様の言うとおりですわ」
反論しようとしたニコラを許さないと、女剣士が獣でも見るような視線を彼に向けながら、腰に提げた剣を抜く。
「ど、どうした、いったい。俺たち仲間のはずだろ」
「お前のような卑怯者が、俺たち勇者の仲間なはずがないだろう。今までは便利な駒として使ってやったが、お前の悪評のせいで、勇者の金看板に傷が付く」
「そんな勝手な――」
「勝手なのはどちらですか!」
魔法使いの少女が杖を片手に魔力を集中させる。敵対の意志が全身から溢れ出ていた。
「私はあなたから冒険者としての技術を教わりました。おかげで私は強くなれました」
「だろう! やはり俺は必要な人材だ!」
「しかし今となっては後悔しています。あなたのせいで私は卑怯者の弟子扱いですよ。初対面の人から卑怯者と呼ばれる気持ちが分かりますか!」
「長年連れ添った仲間から卑怯者と呼ばれる気持ちなら分かるぞ」
「あ、あなたのそういうふざけた性格が大嫌いなのです!」
ニコラは反論を口にしようとするも、グッと堪えて我慢する。このまま険悪な関係が続けば、待っているのは戦闘だ。
「だが本当にいいのか。俺が抜けてもこのパーティはやっていけるのか?」
「問題ない、勇者である俺がいるからな。だろ、みんな」
「「はい、勇者様」」
女剣士と魔法使いは勇者に熱い眼差しを向ける。その視線は憧れの仲間に向けるものではなく、恋する乙女が慕う相手に向けるものだった。
「俺はお邪魔ということね」
ニコラは三人の様子を見て、自分がハーレムの中に混ざった不純物なのだと悟る。このままパーティに残留しても良いことはないと判断し、追放を受け入れることに決めた。
「なら俺は去るよ。魔王討伐頑張ってくれ」
「任せておけ。なにせ俺は勇者だ」
勇者は侮辱するように鼻で笑うと、目障りだから消えろと、手を振って追い払う。屈辱を覚えながら、ニコラはおとなしく、その場を後にする。
「背中を見せたな!」
ニコラが背を向けると同時に、勇者は剣を抜き、ニコラに斬りかかる。追撃とばかりに女騎士の斬撃と、魔法使いの炎魔法が彼の身体を痛めつける。傷を負い、地に伏せる彼を見下ろすように、勇者は一言口にした。
「お前の装備は俺たちが有効活用してやるよ。達者で暮らせよ。無職君」
勇者たちはニコラの全財産を奪い取り、魔王討伐の旅を再開した。一人悔しさと痛みで悶えるニコラは「どちらが卑怯者だよ」と言い残して、気絶した。身ぐるみを剥がされた彼に残されたのは、激しい憎悪の感情と、二度と働くものかという意志だけだった。
第一話公開です。誤字脱字がありましたら、感想かメッセージを頂けますと幸いです(*^_^*)