3. 初めての冒険へ
アズワールの家から少し歩いて、洞窟に到着した。
なんだかRPGに出てきそうな洞窟だな。
「ここがその洞窟、そんなに凶暴な魔物はいない…と思うんだけどね~」
前も聞いていたことだけど、強い魔物はいないらしい
「何か変わった様子とかはあったの?」
「う~ん、ウチが前ここに入ったのは一ヶ月くらい前なんだよね~、そのときは特に何もなかったんだけど」
アズワールは首を捻る。
そんな話を聞きつつ洞窟へと入っていった。
洞窟の中は想定していたより明るかった、灯りがあって視界もいい
「ランプは要らなかったかな」
暗いと思って買ったんだけど
「明るいのはこことこの一個下くらいまでだよ~、その先は真っ暗」
「…何階層くらいあるんだい?」
そういえば海は暗いのが苦手だった
「う~ん、4かな。そこまで深い洞窟でもないしね」
ならそんなに時間はかからなさそうだ。
ふと思った
「アズワールって魔物と戦った経験とかあるの?」
「あー、まぁまぁかな、この洞窟たまーに魔物が出るから。でも、そんなに強いのとは戦ったことないよ?」
とはいってもこのメンバーの中で最も頼れるのがアズワールであることに変わりはない
…なんだか情けない気もするけど
「アオたちはどんなもん?」
思い返してみると―
「…グスマンくらいかな」
カンナがタイロンに行くまでで倒した魔物の名前を挙げた
グスマンっていうのはネズミのような魔物、そのときは木の棒で殴って倒したが町の人に聞くとタイロンだともっと凶暴らしい。
けど一匹だけだったしなぁ
「このくらいの大きさだったよ」
海が小さく円を描く、三十センチくらいだ
「エサが少ないとこだとそのくらいだね~、でもタイロンだと一メートルは余裕で越えるよ」
「一メートル⁉」
なかなか想像はできないけど、ヤバイってのはよくわかった
この洞窟はタイロンからもそう遠くない
もしかしたらとんでもない大物が出てくるかもしれない
そんなことを考えていると
「キ!」
大きめのグスマンが現れた!
カンナくらいの大きさだ
「お、大きすぎない⁉」
「言ったじゃん、おっきいよ~って」
アズワールは言いながら銃を構え、躊躇なく一発二発と撃った
「ギギギ」
ダメージは入っているようだがそのままこちらに向かってくる
「動きは直線的だから大丈夫!焦らずにしっかり狙って~」
アズワールはそのまま銃を撃ちながら指示を出す
かなり慣れた感じだ、いてくれて良かった
俺も杖に力を込める、すると白い光が灯った
「そのまま!真っ直ぐあれに向かって撃つだけ!」
「わかった!」
迫ってくるグスマンに狙いを定め―
「シャイニング!」
一番基礎の光魔法で唯一の光の攻撃魔法。
光属性の魔力を敵にぶつけるシンプルな魔法
効くのか自信はなかったんだけど
「ギギギ…」
グスマンはばったりと倒れた
多分九割がたアズワールのおかげだろう
「いやー、アオすごいじゃ~ん!初めてとは思えないよ~」
とはいえ褒められると嬉しいことは嬉しいよね
「いやいや…あれカンナと海は?」
カンナと海はというと―
「…」
腰が抜けているらしかった
「さっきはちょっとだけ情けないところを見せてしまったね、でももう大丈夫。心配いらないよ」
「そうそう、別に魔物を怖がったとかそういうわけじゃないからね!本当なんだから!」
二人はそう言うが声が震えている
引きこもりのメンタルを期待してはいけない
カンナが怖がるってのがちょっと意外だった
「まあまあ、ウチも最初はびびりまくってたし」
俺もちょっと腰が引けた
自分の体くらいの生き物が襲いかかってきたら普通に恐怖を感じるだろう
「こればっかりは慣れの問題なんじゃないかな」
「そうそう、しばらくウチとアオで相手をするよ!余裕があったら援護してね~」
確かにアズワール一人でも十分強いしね
「いや、今度こそ―」
海が口を開こうとしたそのとき、
「ギー!」
「グスマン!?」
海の真後ろに大きめのグスマンが現れた!
アズワールと俺が攻撃使用とした瞬間
「ギー⁉」
グスマンは触手に吹っ飛ばされ―
奥の洞窟の壁に当たり動かなくなった。
アズワールは唖然としたまま
「えっと…どういうことか説明してもらってもいい?」
当然の反応だと思う。
「異世界…呪い、それで触手が…ふーん」
アズワールはウンウン頷き
「よくわかんないね!呪いは聞いたことあるけど見たことはないし」
それでも表情は明るい
「ごめん、なんか言いづらくて」
会った段階で言っておいた方が良かったな
「全然いいよ!なんかその辺は適当でもいいよ!ウチにとっては力強い味方だしね~」
幸運なことにアズワールは特に触手を問題視しなかった
だけど―
「でも街では隠した方がいいかもね~」
「うん、見せるつもりもないし」
海自身は好ましく思ってないけど
「今回は触手が助けてくれたってことかしらね?」
「意図してやったんならすごいと思うんだけど」
多分違うだろうから、触手にも意志があるんだろう
色々と突っ込みどころは多いが触手はどうやら海を守ろうとしてくれるらしい
それならそこまで触手のことを気に病む必要もないかも
「そうなのかな…うわっ!顔に近づけるんじゃなーい!」
もしかしたら触手が喜んでるのかもしれない
触手に顔をヌメヌメにされる妹―
こんな光景見たくなかったなぁ
週一くらいのペースでやっていきたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。