プロローグ ―昼寝から覚めたら
初投稿です。かなり短め。
目を覚ますと、深い森の中にいた。
自分の住んでいるところは確かに都会ではなかったけどここまでのド田舎ではないはず………というよりさっきまで家にいたはずだ。何かがおかしい。隣では妹がすやすやと眠っている。
少しずつ頭が冴え始め、眠る前のことを思い出した。
「蒼、一緒にゲームでもしないか?」
夏休みのある日の昼頃、妹の海が寝起きの状態でそんなことを言ってきた。
「別にいいけど…もうちょっと早起きしような、12時だぞ今」
「そいつは無理な約束だよ蒼」
海は朝に弱い。もともと引きこもり気味で学校にはほとんど行ってない、どころか外にもほとんど出てない。
「引きこもりにそんなことを言っても無駄だ」
胸を張って言うようなことでもないと思うんだけど。
「はいはい、それで何のゲームなんだ?アクションゲームとかは俺苦手なんだけど」
「もちろん知っているとも、でも大丈夫だ!私が初心者ゲーマーの蒼でも大丈夫なようにレトロゲーを選んできたからな」
海が手にしているゲームソフトは確かに古そうだ。まあ、単に我が家が貧しいってこともある。新品のゲームを買うお金はない。
「♪~」
鼻歌を歌いながらセッティングしていく、しかし10分程たっても起動する様子はなかった。
「おかしいな…やり方は間違ってないはず…」
「本体がダメになったんじゃないか?だいぶ古いだろそれ」
不満げな表情だけど仕方ない。海はそのままふて寝し始めた。
「久々に一緒に遊べると思ったのに…」
言動はアレだけど海もまだ中学2年、今年から俺が高校に入ってあんまり一緒に遊べなかったのを寂しく思っていたのかもしれない。
「まあ、今日はしょうがないよ。俺のバイトの給料も近々入るしそのお金で何か好きなもの買えばいい」
「…うん」
とりあえず落ち着いたらしい。しばらくするとすやすやと眠り始めた。…見てるとこっちまで眠たくなってくるな。
…眠たくなって…
そのとき、何かが光ったような気がしたが睡魔には逆らえなかった…。
そうそう、結局二人とも家で眠っちゃったんだよな。
…いやいや、今の状況の説明がつかないな。意味不明すぎる。原因があるとしたらあのゲームだけど…
「ん…」
海が目を擦りながら起きた。
「ん…うん?なんだここ?蒼、何がどうなってるの?」
全く同じリアクション。流石は兄妹。
「俺にも何が何やら、家ではないみたいだけど」
海は頭を抱えている。よっぽどショックだったんだろうな…
「…ふふ…ふふふ…」
いやこれは笑ってるのか?
「最高だよ!これってアレだよ!間違いなく異世界に来たとかそういうやつ!」
「異世界?」
首をかしげる。異世界とは。海は前のめりに話してくる。…興奮してるらしい。
「ほらこの前一緒に見たじゃん!深夜アニメのアレ!」
そういえばそんなのも見たような。
「つまり…どっか別のところにいつの間にか来ちゃったってことか?」
「そういうこと!まさか本当にこんなことがあるとは…」
海はテンションがあがってるけど、それどころじゃない。
まず食べ物、水、そしてお金、何もないからね!しかも人がいたとして言葉がわからないし、色々と詰んでる気がする。
「でもこのままだと三日ももたないと思うよ」
興奮しているところ悪い気もするけど
「…それもそうか。ありがとう、落ち着いたよ」
「とりあえず、移動するか」
まずは…水がありそうな場所を探すか…池とかあるのかな
「そうだね、歩きながら話そう」
こうしてひとまずゆっくりと移動することになった。
…何だか変な匂いがする、甘酸っぱいような独特の匂いだ。
海も気付いたらしく
「蒼、何か変な匂いがしないか?」
「海もか、なんか変な匂いだよな、花が咲いてるわけでもないし…」
変な匂いについて考えていると、ふいににゅるっという音がした。
「今なにか変な音が―」
そう言いながら海の方を見て―
絶句した。
海の髪が―触手になっていた
「蒼?どうしたの?」
「う、海…おまえ、髪が…」
「私の髪が何か―」
海がゆっくりと髪に手を伸ばし―その手は触手となった髪の毛ににゅるりと滑った。
「…」
なんと声をかけたらいいやらわからない。もともと海の髪は綺麗な桃色に染めていた、おかげでなんだか生々しい。
「これが…異世界の洗礼ってヤツか…」
ちょっと芝居がかった口調で言う。
これももしかしたら中二病の妹には興奮ものなのか…?
「いや、普通に嫌だ!なにこれ~‼」
「だよな」
そんなことは無かったらしい。
触手を何とかしようとしてのたうち回る海
これから一体どうなってしまうのやら―
これが俺たち兄妹の奇妙な異世界生活の始まりだった―
読んでいただいてありがとうございました。
少しでも興味を持っていただけると嬉しいです。
頑張って続きを書こうと思います。