ONCE STORY 《Hey what's the purpose(なあ、何が目的なんだ)?》 Part3
―前回のあらすじ―
・幻想的な『世界』に着いた瞬間、尊達を置いてけぼりにするSORA。
残された彼らは、呑気にそれぞれ思い思いの行動を取る。
だが、SORAがそんな尊達の言動を許す筈もなく―?
《…―おいてめぇら。
なに俺様の事を無視したまま、イチャついていやがるんだ…?》
頭上から、明らかに激昂しているSORAの声が聞こえてきた。
そういえば、SORAの事をすっかり忘れていた。
「いっ!?いい、イチャイチャなんてしてないよっ!」
《論点は其処じゃねぇだろうが、馬鹿か!?
俺様はてめぇらの為に、来たくもねぇ所に連れてきてやってんだ!
少しは感謝しやがれ!》
(…?俺達の為?それは一体、どういう…)
顔を真っ赤にして否定している琴音に、
SORAが勢いに任せて放った言葉。
それが俺の頭の中に、鉤爪の様に引っ掛かった。
「むかっ!なんだよ、馬鹿って!
た、確かにボクと尊君は、今はまだそういう関係じゃないけど…。
君に馬鹿にされる様な関係じゃないよっ!」
《ああはいはい、悪かったなこの脳内お花畑の首無し女!
そこのてめぇらも、変身ポーズ教室を勝手に開いてんじゃあねぇ!》
少しズレた反論をしている琴音や、
知らない内に愉快な遊びで盛り上がっているトリオに、
喉が裂けないか心配になる程の怒声を浴びせるSORA。
(…このままでは、『水掛け論』ならぬ『怒声掛け論』だな…)
そう思った俺は、琴音とSORAの『怒声掛け論』に介入する事にした。
「…すまない、SORA。お前を無視してしまった事は悪かった。
悪い事をした後に聞くのは烏滸がましいとは思うが、
さっきの『お前達の為に、来たくもない所に―。』という言葉、
それは本心から出た物なのか?」
《…はぁ…。だったら何だよ》
ぶっきらぼうな返事をしている辺り、
どうやら本心による言葉だった様だ。
それを確認出来た俺は、
続けて話し始める。
「生憎だが俺達はSORAとは違って、
この『世界』の事も詳しくは知らないし、
『転送装置』を操作出来る様な力もない。
…俺に至っては、自分の事は愚か、
琴音の気持ち汲み取る事も出来ない様な男だ」
「そ、そんな事―!」
「だから、悪ぶってなどいないで、俺にお前の『本心』を打ち明けてくれないか?
それがどんな物であろうと、俺はそれを受け入れる。受け入れてみせる」
琴音の言葉を遮ってでも、俺は真に心の底から湧き上がってきた言葉を、
俺の『本心』をSORAに伝えた。
《…ったく。素直に謝る気持ちがあんなら、
最初っから俺様を無視すんじゃねぇよ》
沈黙を続けていたSORAが、無愛想な口調と声色でそう言うと、
ぷいっと体を一回転させ、そのまま黙って進み始めた。
「…むー、本当にムカつくなあ、あのSORA…。
…あれ?何で尊君、笑ってるの?」
「…ああ。少し、な…」
SORAの事を『ムカつく』と言っていた琴音とは違い、実は俺は気付いていた。
物凄いスピードで飛んで行った先程とは違い、
俺達の歩く速度に合わせてくれている、
SORAなりに打ち明けてくれた『本心』に。
―登場人物―
尊
・いがみ合っている琴音とSORAの『怒声掛け論に介入した。
SORAに「悪ぶらないで、本心を打ち明けて欲しい」、という言葉を伝える。
SORAの些細な言動で本心だと察するなど、
SORAに対して妙に鋭い所を見せた。
逢坂琴音
・激昂しているSORAに論点がズレた返答をするなど、
尊に劣らない天然さを見せた。
勢いに任せてさりげなく、
尊とはもっと親しい関係になりたいと口走しっている。
SORAの事を「ムカつく奴」と称しており、
そういう面においては尊より疎い様子。
城戸一真
・健斗と七海に変身ポーズを教えている所を、SORAに怒られた。
葛城健斗
・一真による変身講座を、
割と興味深く見ていた模様。
雪村七海
・変身ポーズを教える一真、それを熱心に眺めている健斗を、
何だかんだ暖かく見守っている。
SORA
・自分を無視してイチャついている尊と琴音、
変身ポーズ教室を開いている一真達に激怒していた。
口調こそ悪いものの、彼らを想って行動している事を尊に看破される。
その後も無愛想な態度は変わらないが、
彼らの歩く速度に合わせるなど、根は悪い奴ではなさそうだ。