ONCE STORY 《Hey what's the purpose(なあ、何が目的なんだ)?》
―前回のあらすじ―
・尊達の前に現れた謎の球体、SORA。
非常に生意気なSORAの登場により、精神的に疲れていく尊達。
そんな彼らにとどめを刺す様に、SORAは衝撃のカミングアウトをした―。
―砂が一粒も零れ落ちない砂時計の様に、永遠に続く沈黙。
それ程、SORAの口から発せられた真実は残酷な物だった。
《…ククククククッ。流石にだんまりか。
俺様としては、間抜け面で「何の事か見当も付きません」と恍けるか、
顔をグチャグチャにして慟哭してくれた方が、イジりがいがあったんだが。
まっ、其処に『物理的に』死んでる奴らが二人いるもんな。クククッ》
俺と琴音の心情などお構いなく、
ずけずけと心に土足で踏み込んでくるSORA。
城戸、葛城、雪村が言葉の代わりに暗い視線を送ってきた。
「…」
SORAの言葉は、確かに客観的に見れば的を射ている…、
というか至極当然の事実を述べているに過ぎないのだが、
改めてその事に触れられてしまうと、
俺と琴音の心に影が落とされるという事ぐらい、考慮して欲しい物だ。
「…じゃ、じゃあ、ここはつまり…『天国』、って事?」
《いや、正確には此処は『天国』じゃあねぇ。
かといって『地獄』でもない…。
言ってみれば、生と死の『境界線』。
筋肉馬鹿にも分かる様に置き変えれば、『グレーゾーン』って奴だな。クククッ』
琴音の質問に、意外にあっさりと答えを返すSORA。
さりげなく蔑まれた城戸だが、状況が状況故に、
突っ掛かる様な行為はしなかった。
生と死の『境界線』。
SORAの言葉を頭の中で巡らせていると、一つの答えが浮かんだ。
「…つまり、今の俺達は『浮遊霊』の様な存在…。
と、捉えていいのか?」
《クククッ。残念だが、その解釈は六十五点だ。
たかだか三文字の漢字で説明できる程、
今のてめぇらは単純な存在じゃあねぇんだよ》
SORAが翼を腕の様に器用に動かすと、
突如SORAの背後に、SF映画に出てくる様な『転送装置』が、発光しながら現れた。
「う、うおぉ…!す、凄ぇなこれ!」
「た、確かに凄え…」
「…そう?」
『転送装置』を見て心を踊らせている城戸と葛城。
そんな二人の姿を、呆れている様な視線で見詰める雪村。
これがいわゆる、『男と女の違い』、なのかもしれない。
《乗りな》
重圧な扉が自動的に開かれた『転送装置』に、
先陣切って乗り込んだSORAが俺達に向けてそう言った。
「…何処に連れていくつもりだ?」
《安心しな、危ねぇ所には連れていきゃしねぇよ。
まあまあ性悪な俺様だが、多少は信用した方が身の為だぜ?クククッ》
高笑いしながらそう言うSORA。
俺と琴音以外の三人は、
不審に思いながらも、重く足を動かし始めた。
(…性格悪い事、自覚してたんだね)
(…あいつの場合、何かの皮肉にしか聞こえないがな)
こっそりと耳打ちしてきた琴音の言葉に、俺はそう返事をする。
《おい!其処のてめぇら!
俺様の陰口を言ってる暇があんなら、さっさと乗りやがれ!》
どうやら、俺と琴音の会話が聞こえていたらしく、SORAが声を荒げる。
仕方なく俺達が小走りで『転送装置』に乗り込むと、
どんな素材で出来ているのか分からない、異質な雰囲気を放つ扉が閉まった。
《さ、着いたぜ》
「早っ!?」
俺達五人の気持ちと声が重なった、歴史的瞬間だった。
《クククッ。俺様はてめぇらの常識で理解される様な、
浅い生き方をしたつもりはねぇぜ。クククッ》
話しを終えたSORAが翼を動かすと、扉がゆっくりと開かれる。
不安な足取りで『転送装置』から出た俺達の視界に映ったのは―。
雲一つない青空から溢れ出ている滝に、
宝石の様に輝いた果物の成る樹木。
小鳥達の鳴き声が子守唄の様に響くその場所は、
まるで、神話上に出てくる『楽園』の様に、
神聖な雰囲気に満ち溢れる空間だった。
―登場人物―
尊
・相変わらず頭が切れるが、
SORAからは『六十五点の質問』だと返された。
城戸、葛城、雪村とは違い、慎重深い様子を見せた。
逢坂琴音
・SORAの「自分は性悪だ」という発言が気になったのか、尊に耳打ちしていた。
尊と同様、SORAの事は慎重に探りを入れている模様。
城戸一真
・今回もSORAに『筋肉馬鹿』と言われたが、
状況が状況なのでだんまりだった。
特撮オタク故か、SORAが操作する『転送装置』に心躍らせていた。
葛城健斗
・一真とは違う理由で、
『転送装置』を見て感嘆していた。
雪村七海
・『転送装置』を見てはしゃいでいる男二人を見て、呆れていた。
SORA
・翼を動かす事で、『転送装置』を自在に操れる力を見せた。
実は最初に現れた時も、この『装置』を使っていた。
その『転送装置』に尊達を乗せ、
彼らと一緒に神聖な雰囲気の場所へ転送した。