BEGINS STORY 《未知(みち)のNew Stage(ニュー・ステージ)》
―俺は、酷く恐ろしい『夢』を見て魘されていた。
それは、滝の様に体を打ち付けてくる豪雨の中、
まるで顔をマジックか何かで塗り潰されたかの様に、
声も顔も『暗闇』に包まれた何者かに襲われる『夢』だ。
夢の中の俺は、勇敢に立ち向かった。
だが、そんな力強い俺の意志は空回りに終わった。
俺を襲った何者かが、左手から何か『光線』の様な物を放つと、
それが俺の心臓を貫き、左胸を抉り取るかの様に爆発した。
辺り一面を朱色に染めた血が、雨と混ざり地面を流れていく。
何処かから悲鳴が聞こえた気がしたが、
あまりの激痛に意識が遠のいたせいで、誰の声かは分からなかった。
蝋燭の灯火が消える様に、酷くスローモーションに倒れていくその最中、
俺は飛び上がる様に目を覚ました。
数分程の時間を要したが、何とか荒い呼吸を落ち着かせた俺は、
嫌な汗がじんわりと滲む額を右手で拭く。
(…夢、か…。いや、冷静に考えれば、あんな事が現実である筈が…)
ほっと息を付いたのも束の間、瞬く間に俺の顔は凍り付いていく。
心を落ち着かせようと左胸に手を当てようとした、その時―。
俺の右腕は、『確かに左胸を通り抜けた』。
(…なっ!?)
あまりにも理解し難い状況下の中、俺は我を忘れて自分の左胸を見据えた。
刹那、俺の体と心は戦慄した。
俺の左胸は、『まるで何かが爆発したかの様に、抉り取られていた』のだった。
そう、それはまるで『夢』の中で見た、死ぬ瞬間の『自分自身』の様に。
(…どういう、事だ…!?
まさか、あの『夢』のシーンは俺の―。)
俺が必死に頭の中で考えを巡らせていると、
隣の部屋から若い女性の悲鳴が聞こえてきた。
咄嗟にベッドから飛び降りた俺は、
見覚えのない木製のドアの前に立ち、ドアノブを勢いよく回した。
だが、余程勢いよく回してしまったからなのか、
ドアノブがポロリと簡単に外れてしまった。
「…」
仕方なく俺は、黒色かつ無個性)なヒールを履いた足で、ドアを蹴破った。
何故、男性である俺がヒールを履いているのか。
そんな疑問は、不思議と頭に浮かばなかった。
―登場人物―
???
・何者かに殺される『夢」を見て魘されていた。
見知らぬ部屋、見知らぬベッドで目を覚ました。
何故かヒールを履いている、簡単にドアノブを外せてしまうなど、謎が多い。