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元冒険者のVRMMO物語  作者: アンノウン
3/4

<3>

『王都エルディア』

城を中心に、数十メートルの迫力のある城壁で囲まれた街並みで、ロードリア王国を自国としたプレイヤー達の始まりの場所だ。


「うっわ。マジかよ。思ってたよかめっちゃそっくりじゃねーか」


目の前に広がる夕日に染まった石の壁を目に俺は呟いた。

風に乗ってくる草の匂い等を体感して、まるで元の世界にいるような感覚を覚えていると、隣から声が聞こえてくる。


顔を向けると俺と同様に、今このゲームを始めてロードリア王国を選んだプレイヤー達がそこにいた。次々に現れていく事からこのゲームの人気度がうかがえる。


この数分の間にプレイヤーはもう十人を超えていて、俺はそこからユキと思しきキャラを発見した。後ろ姿だけだが間違えるわけが無い。

が、もし万が一、億が一にも声をかけて違ってたら恥ずかしいので、ユキをフルネームで呼んでみる。


「ユキノメ・ぺドルフいないかなー?どこだろうなー?」


すると、そのユキと思われる少女の肩がビクッと震えた。

あ、こりゃ当たりだな。振り返ったユキの顔を見て確信した。


「レント」


相変わらず眠たげな表情だった。


「やっぱお前も髪色以外姿変えなかったか」


「うん。面倒くさかった」


ユキも元の世界の姿だ。俺と同様に髪色は銀髪となっている。


「だよなぁ。何回かイケメンになろうとパーツを選んだんだけどパッとしないしさぁ」


「レントは今のままでいい。普通が一番」


「あはは...そう言ってくれるのはユキだけだよ」


と、ユキと談笑しながら新規プレイヤーの後を付いていく。

エルディアへと入る門は開門されていて、現在内から外へ、外から内へと馬車や人で行き交っていた。


門をくぐったあと、心の中で『メニュー』と唱えると目前にウィンドウが表示される。

そこにはステータスやアイテム、装備など表示されていたが今は無視して現在の時刻を見た。


IFO〈18:00〉

日本〈22:00〉


ふむ。22:00か。大輝との待ち合わせ時間は後30分後だが、このゲーム内では1時間半もあるし俺とユキは少し街を見回る事にした。


「にしても良く出来てんなぁ。マジで現実みたいだ」


「確かに」


「しかも現実に似せるためにNPCは一度死んだら生き返らないんだろ?」


「うん。だから国王とかも普通に死ぬってAIが言ってた」


この世界ではNPCを唯の人形と思わない方がいい。

NPCにも心はあり、ただ同じ事を繰り返すだけの人形とは違う、とクロも言ってたし、NPCと仲良くなって開放されるクエストとかもある。

NPCは俺達と同じ、生きている者なのだ,


それから、適当にぶらぶらと露店を見ながら歩き回っていると、あっという間に1時間半が経った。

そろそろ大輝が来ている筈だ。


「疲れたから休憩がてら噴水広場に行かないか?」


「分かった」


ユキには、大輝が話したいと言ってるのを伝えていないので何も不思議からずに付いてきた。


噴水広場はエルディアのちょうど中心辺りにあるので迷う事なく向かう。


そして数分と経たずに、噴水広場が目に見えたのだが、


....あ、いた。


遠目から分かる程に落ち着きの無いプレイヤーがいる。

外見は違えど、恐らくコイツが大輝だろう。


「よ、ダイキ」


近づいて声を掛けると、ギギギッとサビれた機械の如き様子で振り返った大輝。


「よ、よぉ!レント!お、お前髪色以外変えてないんだな!アハハハハ!」


少しワイルド系に近い顔立ちに、燃え盛るような赤髪のアバターの大地は、その姿に見合わない程に緊張しているのが丸わかりだった。


「レント、この人誰?」


ユキはチラチラと自分を見る大輝を横目に尋ねてくる。


「俺のゲーム友達」


「そうなんだ。ユキと言います」


ペコリとお辞儀するユキに、動揺しながらも大輝も返した。おいおい...大丈夫かよ。


「あー...そうだダイキ。俺達一回も戦闘した事ないからレクチャーしてくれよ」


この先やっていけるか心配だったので助け舟を入れると、一瞬遅れて「ド、ドンと任せてくれ!」と胸を強く叩いて、咽せる大輝。

本当に大丈夫かよ...。


「じゃ、じゃあレントとユキちゃ...さん達戦闘経験初心者にオススメの狩場があるから付いてきてくれ」


気を取り直し、そのオススメの狩場とやらに案内してくれる大輝に付いて行く。


俺達が向かったのは、エルディアの北側の門からすぐの森だった。

因みに、俺達がログインした時に立っていた場所はエルディアの南門付近で、そこにも小さな森があったのだが、そこは初心者殺しと言われる森らしく、俺達にはまだ早いらしい。


「あ、そういやダイキって今何レベなんだ?」


森に向かう途中、俺はまだ確認していなかったステータスを思い出して聞くと、大輝は良くぞ聞いてくれたと言わんばかりの顔でこちらを見てきた。


「俺のレベルは51だ。おっと、これだけじゃ俺がどれくらい強いか分からないな。トッププレイヤー達が現在64。つまり、俺はかなり強いぜ?」


調子が戻ってきたのか、したり顔でレベルを言う大輝。


「そりゃー凄いな」


トップと10くらいしか変わらないというのはかなりやってるんだなぁ。


「だろうだろう!でもレントにユキさんも俺がいるからすぐ強くなれるぜ!」


そう言って、ユキの方をチラチラと確認する大輝だったが、ユキは余り聞いていないのか欠伸をしていた。


「レント...俺って嫌われてるのか...?」


不安になったのか、大輝が小声で聞いてくる。


「いや、ユキは人見知りだから緊張してるのかもしれないぞ」


「ホントかっ!よかったぁー煩かったかなーってちょっと思ってたんだけど」


「いや煩いのは煩いぞ」


「気をつけます...」


そんな感じで森前に到着した俺達。


「ここにはどんな魔物が出るんだ?」


「ゴブリンとかホーンラビットとかだな。大体名前だけで分かると思うけど、ゴブリンは緑色の皮膚をしたチビでホーンラビットは角の生えた兎だ。どっちも弱いけど万が一になったら俺が助太刀するからそれまで自分でも戦ってみてくれ」


「了解ー。あ、そういや死んだらどうなるんだ?」


「死んだらデスペナとして丸一日ログイン出来なくなる。因みに丸一日はこの世界では三日だからな」


「そりゃガチ勢さんには痛いかもな」


「痛いなんてもんじゃないな。ガチ勢なんて食べる時間も惜しいからって一日中インしてる時もあるから、デスペナくらったら発狂するんじゃねーかな」


なんて奴らだ。


「ま、ガチ勢の話は置いといて、そろそろ行こうぜ!」


やっと見せ場を作る事が出来る事に気合いが入っているのか、意気揚々と森の中へ入っていく大輝。


「レント」


そこで今まで黙っていたユキが口を開いた。


「ん?どした。アイツが苦手なのか?」


うんとか言ったらどうしよ。気まずくなりそうなんだけど。

しかし、考えていた事は無く、ユキは首を横に振った。


「違う。...その」


何だか言いづらそうだな。トイレか?


「...私にも構ってほしい」


俯きながら俺の裾を摘んで言うユキ。

いつもは表情が乏しいユキが、今回はまるで甘えん坊の子供みたいで俺は思わず笑ってしまった。


「むぅ...笑う、な」


恥づかしいのか頬を朱に染めつつ、ぽかぽかと胸辺りを叩いてくるので、頭を撫でてやる。


「クククッ...ふぅ......悪かった悪かった。いやーユキちゃまがそんなに甘えん坊だったなんて知らなかったでちゅからー」


そう言うと、更に顔を真っ赤にしたユキは拳の力を強めてくる。

が、まぁ全然痛くないので、更におちょくると、遂にキレたユキは俺から離れると魔法の詠唱を始めた。


...は!?魔法!?


「深淵なる闇よ、邪なる光を無と返せ」


「ちょちょちょっと待て!?何でこのゲームの世界で『ブラックホール』が使えんだよ!?」


ユキを中心として黒紫の魔法陣が展開されていく。

いやありえないぞ!もしこのゲームに『ブラックホール』があっても俺とユキはまだレベル1。こんな伝説級の魔法なんて覚えてるわけがない!一体どうなってんだ!?


「『ブラックホール』」


詠唱を終えると同時その魔法の名を口にすると、ユキの頭上には全てを無に返さんとする球体状の渦が出来ていた。


「悪かった!ごめんなさい!ユキ様!もうしませんから許してください!てか運営止めろ!どういう事だよ!?」


本物と分かった以上、かなりマズイので必死に謝る。


が、しかし


「大丈夫。ここはゲームの中。当たっても死なない」


そういう問題じゃねぇだろ!何で使えんだよ!

そんな事を考えている内に『ブラックホール』が放たれる。


どうする...どうするどうするどうする。

『ブラックホール』なんて化物魔法を無効化するのはあるはあるが、俺にも出せるのか!?ゲームなのに?


そうしてる間にも『ブラックホール』は迫ってきていて--


--考えてる場合じゃねぇ。ユキが出せるなら俺にだって出来るはずだ!


やるんだ!


「『ゼロイド』!」


その言葉を口にした瞬間、俺の右手には漆黒の色を貴重とした剣が握られていた。


「き、キター!俺にも出来たぁぁぁあ!!」


喜んだのもつかの間。俺の目前には『ブラックホール』が迫っていて--

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