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【IFO】通称【インフィニティー・フリーダム・オンライン】
仮想の世界にプレイヤー自身が入り込んでプレイするゲームーーVRMMORPGの最新ソフトで『ゲームだけど現実』を売りにしている。
五感を完璧に再現していて、痛覚はON,OFFがあるので設定すれば痛みを感じる事も出来る。しかしまあ流石にスリルを求める人しかやらないだろう。
これだけでも他のソフトには無かったが、しかしこのゲームの凄い所はなんと言っても、自分だけのユニークモンスターと時間の加速化だろう。
ユニークモンスター・・・通称ブレイド
このゲームを初めてレベル20になると、それまでの戦闘、性格等々、を総合して自分に合ったブレイドが生まれるらしい。
ブレイドの取る形は千差万別。人型の形もあれば戦車等の兵器にもなったりする。
個人的には剣の形のブレイドがいい。何かカッコイイし。
そして時間の加速化とは、ゲーム内では現実の3倍の時間が進むらしい。
これはバイトをしている俺としては嬉しいものだ。
他にも現実の貴方を反映等と色々と書いてあるが、読むのが面倒くさくなってきたので俺は説明書を閉じた。分厚すぎて読む気になれない。後は適当にゲームをしながら確認すれば良いだろう。
「じゃあやってみますかー」
「うん」
時刻は九時半。
大輝と集合するのに後一時間あるので、慣れようと先にプレイする事にした。
お互い布団に横になって、ギアを装着した後電源を入れると、段々と意識が遠のいていった。
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「ん?」
気づけば辺り真っ白な空間に俺は立っていた。
『こんにちはニャ』
突然どこからか声が聞こえたかと思うと、この空間に唯一置いてある作業用の机の上に黒猫が現れた。
「僕はプレイヤーの案内担当AI、クロって言うんだニャ。君の名前も教えて欲しいニャ」
これはプレイヤーネームを聞いてるのだろう。
特に、決めていた訳では無いので本名であるレントと名乗った。
「そうかニャ。レント君よろしくニャ」
丁寧にお辞儀をするクロに、俺も挨拶を返す。
「早速だけどこれから行く世界で君の分身を作成するニャ」
クロがそう言うと、胸前辺りにウィンドウが表示される。
そこには顔、髪、体格を設定するためのパーツがずらりと並んでいた。
「多っ...」
暫く試行錯誤した後、自分のセンスの無さに気付いた俺は、現実の体と同じにすることは出来ないかクロに聞いてみたところ、出来るらしかったのでそうしてもらった。
オンラインゲームで素顔プレイはヤバいとか何とか聞いたことはあるが、俺が外出する際は買い物かバイト、偶にユキと遊びに行くくらいなので、余り気にしなかった。
最後に俺は黒髪を銀髪に変えた。
この世界では銀髪は、アニメ等の影響を受けてオンラインゲームのアバターで銀髪に設定する奴は結構いる。
が、まあ俺の場合は元の髪色に戻しただけなので、特に銀髪に憧れているわけではなかった。
「次は職業を選ぶニャ。ここで選んだ職業はレベル50を越えるまで変更出来ないから慎重に選ぶといいニャ」
続けて新しいウィンドウが出てくると、そこには剣士を始め、三十を越える職業が並んでいた。
ここは無難に剣士かな。一番使い慣れてるし。
「んじゃあ剣士で」
「分かったニャ。じゃあ次にブレイドについて話すけど説明はいるかニャ?」
「あー、いいです」
「そうかニャ。あ、因みにブレイドが気に入らないからってデータを消したりしても無駄だから気をつけるニャ」
クロが言うには、登録する際にその人の脳波を保存してあるから、VR機器を仮に新しく購入してもその脳波を読み取ってバレてしまうらしい。
それから色々と説明を受けると、最後にどの国に所属するかを決める為に、目の前に各国の景色の画像が映し出された。
騎士の国『ロードリア王国』
妖精の国『ヘルブラム』
機械の国『ガイダール帝国』
海上国家『アクアダイナ』
商業都市『カザネス』
以上五つの国から選ぶ事が出来るらしい。
しかしまぁ、俺達の住んでた世界と似てるなぁ。こういった事を考えた人は凄いな。
ロードリア王国なんて俺が元の世界で住んでたとことほぼ変わんねーし。
「んじゃーロードリア王国でお願いします」
大輝が待ち合わせ場所に選んだ所は確かここだったはずだ。
「了解ニャー。じゃあロードリア王国の王都エルディアに転移させるニャー」
その言葉と共に視界が黒で覆われた。