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元冒険者のVRMMO物語  作者: アンノウン
1/4

<1>

異世界-地球に来て、はや三年。

俺ことレント・ミズルノ改め水野(みずの)憐斗(れんと)は環境にも慣れつつ、アパートの十畳ほどの広さの一室でのんびり穏やかに暮らしていた。


「日本万歳」


床で仰向けになりながら、元いた異世界との生活の違いに満足して思わず呟くと、目の前に少女の顔が現れる。


「どうしたの...?」


黒髪ショートのいつも眠たげな顔をしている彼女は水野雪。

本名はユキノメ・ぺドルフという名前で、俺と同じく異世界出身だ。

そして俺の幼馴染みでもある。

今は俺の妹という事になっているが。


「ああ、いや何でもない。日本は素晴らしいなって改めて感心してたとこ」


「そう」


「あれからもう三年だもんなー。いやぁ最初来た時はビビったけど時間が立つのははえーなー」


当時14歳だった俺は一つ年下のユキとここ-日本へ転移した。

何故転移したのかは今でも分からないが、当時の俺達は凄く動揺していたのを今でも覚えている。

行く宛もなく途方に暮れていた俺達を匿ってくれた、ここの管理人さんには感謝しきれないな。


「...おっと、そろそろ時間だな」


時間を確認すると、午後一時半でバイト開始時刻は二時からなので準備を始める。

といっても服を着替えるだけなのでさほど時間は掛からなかった。


「じゃ、行ってくるわー」


「ん。いってらー...」


相変わらず眠たげな表情で手を振るユキに手を振り返しながら外へ出る。


季節は秋。

夏が過ぎ、冬の前だという事もあり、暑すぎず寒すぎず、丁度良い気温だ。

涼しい風を肌で感じながら、ボロい階段を降りていく。


「あ、憐斗君じゃないの。こんにちは」


階段を降りると、アパートの敷地内で花壇に水やりをしているお姉さんがいた。


「こんにちは、日野さん」


日野(ひの) (かえで)。俺とユキの恩人であり、ここのアパートの管理人だ。

黒髪ロングの美人さんで、年齢は本人曰くアラサーらしいのだが、どう見ても20代前半にしか見えない若々さで、通りかかる男性の目を惹いている。


「これからバイト?」


「はい」


「頑張ってね〜」


「はい、行ってきます」


軽く会釈した後、俺はバイト先のコンビニへと向かった。


><><><><><><><><><><


「っと、八時か」


今日は八時に切ると店長に言っておいたので、休憩室へと向かい帰宅の準備をしていく。


と、そこで背後に気配を感じたので振り返ると、バイト仲間の姿があった。


獅童(しどう) 大輝(だいき)

明らかに染めたと思われる明るい色をした茶髪に、見た目に反して子供っぽさが残る童顔が特徴の少年だ。


「もう帰んのかー?」


「晩飯作んねーといけないからな」


「俺と同い年ってのにお前はスゲェなぁ」


大輝はそう言うが、冒険者時代は基本的にサバイバルだったのでこの程度苦でも何でもない。寧ろ幸せである。


適当に肩を竦めると、大輝は「そんな憐斗君に!」とタメを作った後、ロッカーから何やら少し大きめな箱を取り出した。


「......何それ」


「開けてみ」


大輝に言われた通り箱を開封すると、何やら頭に装着するであろう機械とそれを繋ぐ機械、そして【IFO】という名のゲームソフトがあった。


「何が目的だ...」


「いやぁ?俺はただ苦労している憐斗君に少しでも楽しい思いをしてほしいだけだよ?」


「本音は?」


「雪ちゃん紹介してくれ!」


やはりか…

コイツといい他の奴といい、一回ここに来ただけで、そんなにユキの事を好きになったのだろうか?

確かにユキは昔から声を大分掛けられる位には顔は整っていると思うが、小さい時から一緒にいたせいか、恋愛感情は感じられないのだが。


「その件に関してはちゃんとユキに言ったけど無理だったって言ったじゃねーか」


「くっそぉ...!どうにかして雪ちゃんと喋りてぇ!」


「そういや、これ返した方がいいか?」


ゲーム自体には興味はあるが、本機とソフト合わせて十万円は入った財布が吹っ飛ぶくらいなので、流石に申し訳ない--と思って返そうとしたのだが、それを見た大輝は何か閃いたかのように目を開くと、


「そうじゃん!ゲームの中で会えるじゃん!」


と叫んだ。


「...は?」


何を言ってるか分からなかった俺に、大輝は説明を始める。


「だから、俺が今渡したVRMMORPGの新作【IFO】の中だったら喋る事が出来るじゃん!って話をしてるんじゃん!」


「あぁ、そういう事」


確かにVRMMORPGなら可能だろうな。

だが、それはユキがやらないと始まらないだろう。


そんな俺の考えを察してか、大輝はニヤリと笑った。


「大丈夫だ問題ない!こんな事があろうかと、もう一つ用意しておいたのだぁぁぁあ!」


何ともう一つ同じ箱を取り出した大輝に流石に動揺を隠せない。

コイツ...マジだ。

俺にやらせてユキを誘うためだけに二台も揃えるとは...。


「...お前金持ちなんだな」


「まぁ、俺ん家が結構な金持ちだからな。だから実際ここで働いてるのも暇潰しなんだぜ?」


予想はしていたが、その通りだったとは。


「っと!んなことぁどうでもいい!帰ったら雪ちゃんとゲームしてくれよな!俺のバイト終了時間は十時だから、十時半に『王都エルディア』の噴水広場で待っとくから絶対来てくれよな!」


大輝はそれだけ言うと、仕事へ戻っていった。


「...帰るか」


俺も二つの箱を持ってその場を後にした。

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