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花の雫  作者: 深澤雅海
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番外編1-2


「ねえリアン、トラサル伯爵のお話を代わりに聞いておいてくれないかしら」

「ねえリアン、リンカー国の使者のお相手を頼める?」

「ねえリアン、この書類頼めるかしら。明日までにね」


「ナーのためでもあるのよ。償いたいと思っているならこれくらい平気でしょう?」


 げんなりするくらい王女にこき使われていた。


「いい様に使われていますね」

 ため息をつく俺の目の前にジョイが紅茶を置いた。

「使われているというか、遊ばれているというか」

 王女に頼まれた書類を横に避けて紅茶を味わうことにする。


 俺のせいで偽物が逃げられなかったと攻めてくる王女は、俺が何も言えずにいるのをいい事に色々仕事を押し付けてくる。

 俺は今まで人質らしくほぼ軟禁状態で、多少王女の婚約者として挨拶する以外は与えられた居住区内でおとなしくしているのが仕事だった。

 今は王女から毎日何かしら押し付けられる。


「しかしこれだけリアン様に仕事を流してくるというのに、王女は今までと変わらずお忙しい様子ですね。元々の仕事量が膨大と推測します。多少助けてあげるのも、逆に恩が売れて良いのでは」

「嫌味を言わず素直に可愛く手伝ってくれと頼まれたなら俺も文句言わず手伝える」

 気持ちの問題なのだ。


 仕事自体は簡単だ。

 誰がやってもいいが、名目上、地位の高い奴がやった方がいい仕事ばかりだ。


 今頼まれている書類に関しても、それほど重要なものはない。各所からの報告書や提案書だ。読んで必要だと思えば王や王弟、大臣や各機関の上層部に流すだけだ。

 この国の組織機関、仕組みを知っていれば誰でもできる仕事だった。

 俺がやっていい仕事なのかは微妙だが。


「もうすぐ昼食ですがこちらにお運びしますか」

「ああ、片手でつまめるものを頼む」


 誰でもできる仕事だから後回しにされるのだろう。たまりにたまって膨大な量だった。食べながらでも進めないと終わらない。

 ため息をつき何気なく窓の外を見ると、少し離れた所にいた人物と目が合った。相手は慌てて隠れようとするが残念ながら遮るものがない。


「そういえばジョイ、スイユとはどうなったんだ?」

「馬に蹴られたいんですか?」

「この前王女に渡した焼き菓子、もうひと箱あっただろ? 持って行っていいぞ」

 窓の外を示してやると一瞬驚いた顔をした後、嬉しそうに笑いやがった。

 

 さっさと行けと部屋から追い出す。

 俺はこのところ押し付けられた仕事のせいで偽物にほとんど会えていない。

 ため息が出た。


 再び窓の外を見るとジョイとスイユは笑顔で会話をしている。

 ジョイと俺は主従関係だが、同時に友人でもある。

 友人の幸せは喜ばなくては。


 そう思いつつもため息が出るのを止められなかった。



この後9に続きます。

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