表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある冒険者の一日

 太陽の光が降り注ぎ木々の隙間から照らしている。俺は極力音を立てないようにして茂みから今日の獲物の様子を窺う。見る限りでは2体しかいないようだ。獲物の名はゴブリン。人間と同じくらいの身長に盛り上がった筋肉を持ち、緑色の皮膚をもった怪物(モンスター)だ。奴らは粗末な布で作ったであろう腰巻と木を荒々しく削ったこん棒を身に着けている。奴らの恐ろしい所は人間と同じように群れることだ。いや、一ヵ月で子供が大人になる成長速度と繁殖力を考えれば人間以上か。

 幸い今いるゴブリンは通常種のようだ。俺は腰に降ろしている剣と背中の弓を確かめた。矢は15本ある。奴らとの距離はそこまで離れていない、これなら俺の腕でも十分届く。背中の弓を手に持ち、矢を取り出してゆっくりと引き絞る。この一射で一体は確実に仕留めないと厄介なことになる。

 俺は気づかれない様に注意をしながら狙いを定め、矢を放った。

 矢は狙い通りにゴブリンの頭を背後から打ち抜く。俺はそれと同時に飛び出しながら腰の剣を抜く。

 仲間が死んだ事で呆然としているもう一体に、そのまま駆け寄り剣を振り下ろす。碌に反応もできないまま斬られてそいつは死ぬ。

 俺はゴブリンの耳を削ぐと矢を引き抜き、素早く辺りの反応を確かめた。


「どうやら、仲間に気づかれてはいないようだ。」


 ゴブリンという奴らは群れて行動をする。それは2体程度ではなく、本来なら10体はいてもおかしくない。こいつらははぐれたか、それとも仲間と別れて行動していたか、だ。

 どちらにしろこのまま此処にいても良いことはなにもない。俺は周りに注意をしながら森の中に隠れる。



 --------------------------------------------------------------------------------



 町に戻り、いつものように冒険者ギルドに向かう。通りは人々で賑わい、旨そうな匂いが辺りに漂っている。朝から森に行っていたから腹も減っているし、換金を終えたら飯にしよう。

 そんなことを考えながら歩いていると、見慣れた看板と騒ぎ声が聞こえてきた。

 冒険者ギルドに入ろうと立付けの悪い扉を開いて中に入る。正面に見える受付とその横の換金所の周りにはいつものように人が集まっている。大体は誰が何を仕留めてきたかを見るだけの野次馬だが、時々変にちょっかいを出されるので面倒くさい。

 真っ直ぐに換金所に向かい担当者に声をかけた。


「ゴブリン5体だ。換金をしてくれ。」

「討伐証明はございますか?」


 腰に下げた袋を持ち上げ、目の前のカウンターの上に置いた。


「では、確認をさせて頂きます。」


 担当者はそう言うと、中を見て耳を一つずつ取り出して確認をすると、


「確かに確認いたしました。それでは銀貨5枚になります。」


 そうしてカウンターの中から銀貨を取り出して渡してきた。

 俺はそれを受け取り、冒険者ギルドから出て行った。

 冒険者なんていうのは限りなく底辺の存在だ。一部の上位の奴らでもなければその日暮らすのに精一杯で、朝から討伐に行き、命を懸けて戦っても飯と宿代で消える程度の金しか稼げない。

 いくらでも替えが効くから、ギルドの方も俺みたいな下位冒険者の顔も名前も覚えるなんてしないし、俺の方も何も話すことはない。

 今日も宿に帰って、飯を食って、装備の手入れをしたら、寝るだけだ。

 冒険者に夢はないし、いつ死ぬかも分からない。

 それでも俺は、明日もまた朝から森に行ってゴブリンと戦うんだろう。

 今日生き延びたように、明日もまた生きるために。



銅貨→銀貨→金貨 の貨幣価値です。10枚ごとに上がっていきます。

普通の食事なら銅貨5~10枚で、宿は一泊銀貨3枚です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 何の変哲もない冒険者の何でもない日常が書かれている [気になる点] もう少し話に起伏が有っても良いかな? [一言] 小説を投稿しようとお思ったら同じ名前の作品が既に投稿されていたでゴザル>…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ