第四話 冒険者デビュー!
俺は、朽ちたドラゴンの肉片を見つめた。
本当にこれは、俺がやったのか……?
いや、この剣の力だな。
でも……何だろう、何か不吉なモノを感じる……。
もしかして、俺はとんでもない事をしたのだろうか。
もしかして……いや、これでいいかもな。
「クロ!!」
香織……。
「クロー!!」
凛……。
「クロさーん!!」
舞……。
今は、こいつらの笑顔を守れたことに喜ぼう……。
「ありがとな……皆……」
俺は、スッと体の力が抜け、その場に倒れた……。
悪い、皆……。
俺の意識は落ちた……。
「クロ君っ!」
「……あ?」
「お、気がついた? 僕だよ、僕!!」
「ん? うああ!? 誰だてめぇ!? ここは……」
「安心して、夢の中だよっ。現実の君は無事だよっ。もちろんお友達も」
「ああ、ならよかった」
「で、おまえあん時のスピーカーの奴だよな? 俺に何の用だ?」
「そうそう、君に色々と教えておかないといけない事があるんだ!!」
「俺に……?」
「うん、ドラゴンに踏まれる時、君を助けた武器のことは覚えてる?」
「ああ、光ってたやつだろ? あれがどうした」
「それがね。あの武器、神器――魔剣・グラネリウスっていう、武器でさ。君たちに授けるつもりで、空から落としたのだけど……香織ちゃん、魔剣捨てちゃった」
「はああ!? 何で!?」
「君がよっぽど大事だったんだろうね、倒れた君に急いで駆け付けたからね、夢中で捨てたんでしょう」
魔剣を捨てたのは、怒り所だけど。
まあ、大事にしてくれたみたいだし、いいか。
「それで、何かマズイのか?」
「そうでもないけど……誰かがその剣を拾ったんだ」
「魔王側か?」
「いや、それはないと思う!! この辺に魔王側の奴は興味ないだろうし」
「そうか……情報ありがとな!! んじゃ、起きるわ」
「あ、もう一つ! 目が覚める時、歯を食いしばりな!」
その言葉を最後に、俺の視界はグニャリと曲がり、閉ざされた。
そして、意識が戻って来た。
あいつの言うように、歯を食いしばって目を覚ました。
バチンッッ!!
頬に強烈な痛みが走った。
目の前には、泣いている香織。その横にいる凛と舞。
香織の暖かい手が俺の頬に当たっている。
しかし、痛い。歯を食いしばってよかった。
香織が手を引っ込めると、口を開いた。
「バカ…………無茶をするな」
「へっ、女を守るのが男であり、紳士だ」
「だがっ……」
「ビンタ結構痛かったから、許してくれ。な?」
俺がそう言うと、香織はコクリと頷いた。
そして、凛と舞も俺に声をかけた。
俺は、全て大丈夫とか言って、心配を減らした。
「つか、ここは何処だ……?」
「ここは、冒険者ギルドの医療室ですっ。クロさんが寝ている間、町を見つけたましたので」
「そうか……俺が寝ている間に……。ちょうどいい! 冒険者登録するぞ!!」
ベットの布団や毛布を除け、ベットから降りた。
少しよろめいたが、全然問題ない。
俺は歩きだし、部屋のドアノブに手をかけた時。
「おおおおい!! 目が覚めたか!?」
一瞬で俺の視界が、木製で出来たドアの木目に埋め尽くされた
そして、顔面に痛みが走った。
ドアが顔面に直撃するのって、こんなに痛かったんだ。
俺は、ドアの陰から、体を出し、ドアを開けた人に言った。
「あ……おかげさまで」
「あああ、ごめんね!! 痛かったでしょ!? 今治すね!!」
そう言って、薄い緑の髪に赤い眼の少女には、右手の平を俺の顔面に向けた。
何をするのかと、見ていると。
掌から、優しい心地よい光が俺の顔を包んだ。
痛みは消え、顔に出来た赤い腫れも治った。
これは、ち、治癒魔法!?
「おい、おまえ、今の……」
「ああ、私、治癒神官なんだ!」
治癒神官……パーティメンバーには必要不可欠な、回復職。
ヒーラーが居ることで、前線は体力を気にせずガンガン行ける。
なにより、攻撃に専念できる。
しかし、一体この人は……。
俺を助けてくれたのか? きっとそうだろう。
謎の女をマジマジと見ていると……。
「そんなに、見つめちゃいやんっ」
「あ、悪い」
「え!? そこ認めちゃうの? 正直者ぉ~」
「正直で悪いか?」
俺が言うと、女は左右に首を振った。
そして、女は口を再度開いた。
「私は、セレナ・ミスティル 職業は治癒神官よろしく!」
「ああ、俺は、クロだ。職は決まってないが、剣士を希望する」
「私は、香織。職は決まっていない。よろしく頼む」
「あたしは、凛。職って何? あたしら働くの?」
「自己紹介中に質問を混ぜるな。後で教える」
俺が言うと、凛はコクリと頷き、続けた。
「えっと、ボカボカ殴るのがしたいです。よろしくっ」
ボカボカって何だよ……。
「私は、舞です。職は皆のお手伝いが出来れば何でも……。よ、よろしくお願いします!!」
「おう、クロにカオリにリンにマイだな。よろしくっ。んじゃ、こっちに来て」
セレナは、部屋から出て、下に続く階段に俺たちを誘導した。
そして、階段を下り、広い部屋に出ると。
「「おらおらおらぁぁ、酒だ!! 酒!!!」」
男たちが、ワイワイと騒いでいた。
活気があって良いのか、バカなのか……。
セレナは歩き始め、部屋の奥のカウンターに向かった。
カウンターには、若い受付嬢が笑顔で迎えてくれた。
なかなかの美貌だった。
「すみません、冒険者登録したいんですが……」
「はい、新人さんですね。こちらに、ご名前と希望の職業をリストから選んで記入してください」
俺はペンを握り、紙にペン先をつけた。
名前は、クロ・カンナギでいいよな? いいか。
で、職業は……おっ、剣士有った。
ん? 魔道師……?
俺が魔道師の文字を見ていると、受付嬢が説明してくれた。
「魔道師は、魔法ではなく魔力を使い、多彩な攻撃をしていくスタイルで、魔法使いとは違うのは、杖などを使わず、魔力そのものを放出するので剣を使いながらも戦えるのが特徴ですね。ですが、魔力にも使える属性、種類が限定されてしまいます」
「ほう、じゃ、魔力ってのは、どうやって覚えるんだ?」
「それでしたら、後ほど私が教えます」
「おう、頼む」
俺は、職業を魔道師に決め、書類を書き終えた。
香織と凛と舞も書き終えたらしく、こちらに戻って来た。
そして、何にしたか、言いあうことになった。
「まずは、私から……剣士にした」
「おお、香織さんらしいですっ。かっこいいです!!」
香織は恥ずかしげに答えた。
結構合っている気がする。
「あたしは、武闘家! 喧嘩の仕事だ!」
「凛もなかなかだぞ! 良いと思う」
おいおい、喧嘩の仕事って、ヤクザじゃねーか。
くれぐれも喧嘩する相手間違えないでほしい。
俺はそう願った。
「わ、私は、治癒神官にしました! 皆の役に立てるよう頑張ります」
「おう、期待してる」
俺が言うと、可愛らしい笑顔を見せた、舞。
この、皆の笑顔を永遠に守りたい。
俺は、そのために戦うんだと自分に命じた。
魔王討伐より、三人の命が優先。
それが俺に命じられた、義務だ。
「よし、パーティとやらを組もう。三人で」
香織が言った。たしかに良い記念になりそうだ。
「これからは、あたしたちずっと一緒ってことでしょ?」
「まあ、それに近いな」
「おお、では、名前とかどうする? 〇〇騎士団とか?」
「凛さん、そんなんじゃダメだと思います」
「う~ん、そうか。じゃ、何にする?」
香織がカウンターのペンと紙をとり、何かを書き始めた。
そして、机にバンッと、置いた。
そこに書いてあった文字とは……。
「生徒会……これがパーティ名だ!!」