第一話 生徒会が異世界へ
まさか……ここ……何処だよ……。
俺の目の前には、日本とは、到底かけ離れている景色が映っていた。
剣を装備している男。見慣れない服装。洋風感漂わせる、町並み。
そう、ここは、ゲームやアニメで見る……。
ファンタジー世界だ!!
――十分前――
俺は、神凪 クロ。普通の高校一年生だ。
そして、いつものように生徒会室に呼び出され、仕事だ。
俺は別に、成績がいい訳でもなく、普通の凡人だが、ある方の推薦で生徒会に入った。
「おはよう、クロ! 今日も良い天気だな!! そして、今日も仕事だ、頑張りたまえ!」
「はいはい、頑張りまーす」
俺の目の前にいる、腰まで届く、紅色に近い、赤の髪に黒く澄んだ瞳の女。
この人こそ、俺を推薦した人であり、生徒会長の。
薬師寺 香織。リーダーシップの強い人だ。
俺は、会長と挨拶を交わし、生徒会室の扉を開き、中へ入って行った。
「よう、クロ! 今日もラブラブだね、お二人さん!」
「は!? 俺と会長はそんなんじゃないって!」
こいつは、佐藤 凛。茶色のポニーテールの髪に、黒い瞳。
まあ、可愛いって言えば可愛いんだが、元気過ぎると言うか……。
でも、悪い奴じゃない。多分。
「はっはっは、クロとは、まだそういう関係じゃない、残念だな凛」
「でも、「まだ」 だよね!? そのうち……」
「うるさい、いい加減仕事しろ」
「はいはーい」
俺が話を中断させると、凛は席に着いて、資料などを整理し始めた。
さて、俺も仕事するか……。
「会長!! 大変です!! あ、クロさん、危ない!!」
「え? う、うわああっっ!?」
後ろを振り返ると、直ぐに俺の視界は闇に閉ざされた。
目を閉じたからだ。
そう、ビビって。
そして、一瞬の間もなく、顔面に衝撃が来た。何かぶつかったのだとう。
しかし、痛い。だが、状況を把握しようと、目を開いた。
そこには、散らばった資料の本と、尻もちを着いた、銀髪の髪に、蒼い瞳の少女。
「いってぇ。あ、大丈夫か!?」
「え、あ、はい! クロさんこそ、大丈夫ですか?」
「まあ、少し痛かったかな?」
「す、すみません!!」
「ああ、いいよ。気にしないで」
この子は、星空 舞。真面目で、少し天然な女の子。
男子の評判は、かなり高い! 恋人にしたいランキング、トップ3をキープしている。
ついでに言うと、会長も凛も、トップ3。つまり、この人達が独占しちゃってる。
そう考えると、俺って結構良い位置だな。
それはさて置き、今度こそ仕事だ。
俺は、散らばった本を拾い、舞に渡した。
「そいえば、大変って何があったのー?」
凛が言った、それに舞は、ハッとなり答えた。
「そ、そうでした! 大変です! 放送委員が全員消えたんです!!」
「何? 消えただと?……どういう事だ」
会長が言った、表情には焦りが見えた。
これは、何かありそうだ……。
「分かりません! ただ、放送室の鍵が閉まっていて……」
「鍵が閉まっている……だと……?」
おいおい、マジでどうしたんだよ。
何かヤバい予感がするんだけど……。
その時、生徒会室にある、放送用のスピーカーからノイズが聞こえた。
そして、幼い子供のような声が聞こえた。
「あーあー。こんにちは、生徒会の皆さん。仕事進んでますか? 青春してますか? まあ、いいや。一度しか言わないから良く聞いてね! これから君達が行く世界は、ゲームとかで言う、ファンタジー世界? 異世界? 何でもいいや、まあ、そこに行くんだ。そして、世界を闇で支配しようとしている、魔王を倒してほしい。そして……」
「ちょっと!! 勝手に決めないでよ!」
凛が席を立った。落ち着きのない奴だ。
話を聞いた方が得策だと思うが。
「魔王だが、マモーだが知らないけど、何がしたいのあんた!!」
おい、おま……マモーって、ルパ〇三世の映画の、ペテン師じゃねーか、つか、観てたんだな!
まあ、確かに、あいつの目的は知りたいな。
そして、スピーカーの声主は答えた。
「君たちに、世界を救う英雄として、世界を救ってほしいんだ」
「世界を……救う……ちょっと、待て! 意味が全く……」
「生徒会長さん、つまりね。戦えってことだよ。民のためにね」
「そんなこと、急に言われても困ります!」
舞が言った。そりゃそうだ。急に戦えって言われたら誰だって……。
「おい、俺達は戦闘なんかしたことない。何か武器とか貰えないのか?」
「おお!! そこの黒い髪に死んだ目の少年! 冷静の裏に賢さが視えるよ! 良いだろう、ご褒美に君には、神器を与えよう!!」
「神器? 強い武器ってことだよな?」
「強いってもんじゃないよ、神レベルの力を秘めている武器さ! でも、それを引き出すのは、使用者の君さ」
「ああ、理解した。じゃ、その神器ってのは……」
言い終わる前に、目の前に、血のように滲んだ剣が現れた。
俺はそれを手に取った。
その瞬間、剣から黒い導線が俺の体に繋がった。
「うわ、何だこれ!?」
「それは、君の感情と一体化するための余興さ」
導線は、俺の体から離れ、剣の中へと消えた。
「その剣は、憤怒の剣。使用者の感情が鍵となる、珍しい神器だ。使用者の怒りのレベルが剣の威力に変わる。ようするに、キレたら超強い。でも、普通の時でも、凄く強いけどね」
「そうか……一応礼を言っとく」
「ちょっと、クロ、何吹き込まれたか知らないけど、あんたまで……」
「では、説明おーしまい!! それでは、異世界へ招待しまーす!!」
生徒会室の床全域に、紫に光る魔法陣が現れた。
そして、凄まじい光を放った。
「う……何だこれは!? 皆、手を握れ!!」
「はい!!」
「会長、何これ!?」
「とりあえず、手を握れ、凛」
俺がそう言って、凛の手を握った。
少し頬を赤くして、凛は頷いた。
「皆、幸運を祈るよ!!」
生徒会室から、光が消え。生徒会四人の姿も消えた……。