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王女×死霊術士=世間知らず 異世界へ!!  作者: 鵠居士
引きこもり’s、異世界へ
7/59

閑話:祝福って反則です。

なんで勇者を召喚するのか

それは、召喚された勇者が力をもっているからだ

世界を越えてやってくる勇者にされた人

哀れな被害者に世界は最初で最後の贈り物をする

それが勇者の力

世界は対象になったもの、巻き込まれたものを、区別したりしない

世界にとっては、そんな違いなど些細なことに過ぎないからだ



トールは不運だった



三回


彼は世界を越えたことがある。

しかも、その全てがただただ巻き込まれただけ


一度目は、小学生の時

仲の良かった五人の友人たちと遊んでいた最中、五人の足下に現れた召喚陣に友人たちを追いかけて入ってしまった。

この時、必要ではなかったトールはすぐに還された。

神隠しから、たった一人帰ってきた子供。

トールは生まれついた故郷から離れることになった。


二度目は、中学生の時

放課後、図書室で本を読んでいただけだった。

当番の図書委員の少女を飲み込む光の洪水に飲み込まれたら、異世界だった

聖女とされた少女を愛した国王によって殺されそうになったとき、一度目の召喚で得た力でそれを退け、召喚陣を起動させ還ってきた。数分も経っていない図書室に戻れたトールは、高鳴る心臓を抑えて帰宅した。トールは再び、その地を離れることとなった。


そして三度目。

進学した高校で、クラスメートと廊下ですれ違った瞬間。

呆然と絶望するトールを、勇者と称えられたクラスメートは励まし寄り添ってくれた。

でも、それを快く思わない勇者を慕う者たちに、トールは殺されてしまった。


メルリーウェの力で人では無くなってしまったが、トールにはそれがようやく掴めた幸せの始まりになった。


だって、もう巻き込まれて、理不尽な目にあわなくてすむのだから。




セイは幸運だった。


彼は優等生だった。

成績優秀でスポーツも得意だった。

委員長を任され、教師の信頼も、クラスメートの尊敬も、彼には与えられていた。

姉弟、両親、祖父母、親戚、家族の全てが彼の優秀さを誇り、愛していた。


文化祭で女装喫茶を実施した。

彼にとって、それはとても楽しくて、またしたいと感じた。

でも、それはとてもとても言い出すことができないもので、厳格な家族が許すわけのないもので、

彼は、ずっと、ずっと、それを抱えて日々の生活に戻っていった。


それから数年、学校から家に帰る途中、

人気のない道路の真ん中で気鬱に足が鈍り、深いため息をついた瞬間

足元の地面が消え去り、異世界に落ちてしまったのだ。


彼が落ちたのは、暗い暗い闇の奥底

目を覚ました彼が見たものは、爛々とした目を自分に向ける無数のモンスターたち

ふと頭に過ぎった知識で、彼は自分が与えられた祝福が何なのかを自覚した。

そして、彼はモンスターたちを支配した。


モンスターたちに囲まれて過ごす中、

彼はふと気づいた。

ここでなら、僕は自由だ!


高位のモンスターたちなら言葉を交わすことができた。

そんなモンスターたちに、彼はお願いをした。

「服が欲しい。」

知恵をもつモンスターたちは、それぞれが彼に似合うと思う服を集めてきた。

装飾品も集めてきた。

彼は、好きなだけ自分の好きな姿をすることが出来るようになった。

自分の姿にあわせ、ヨーロッパのお城をモチーフに住む場所を整えた。

城の中も、モンスターたちが集めてくる装飾品で彩っていく。

楽しい 楽しい 時間が過ぎていく。


そんな生活を続けて数年経った。

支配したモンスターのおかげで、彼は少しもその姿を変えることなかった。

それも彼の能力の特色のひとつだと知っていた。

こんな楽しい生活が続くのなら、このままでいい、元の世界に帰らなくてもかまわない。彼は思った。


でも、人々がそれを許さなかった。


勇者が現れた。


勇者を召喚する術をもつ唯一の大国が、彼と同じように祝福を与えられた勇者を召喚した。

勇者は仲間を引き連れ城に向かってきた。

モンスターたちは、彼を守ろうと勇者に向かって行ったが、次々に消えていった。

まぁ、これもテンプレかっと諦めた彼。

一つ驚いたことがあった。

勇者一行を監視している彼の視線に、同じように影から見ている姿が見えた。

それは、小学生の頃共に遊んだ友人、事件に巻き込まれ追われるようにして転校していった幼馴染が成長した姿だった。

思わず声をかける彼の姿に驚きをあらわにした幼馴染。

それでも幼馴染には嫌悪する様子は無く、赤らめた笑顔で「綺麗だ」と褒めてくれた。

認められたことが、許されたことが嬉しくて、色々話をした。

すると、幼馴染はもう死んで、可愛らしい主人の下で新しく楽しい人生をはじめているという。

そして幼馴染は言った。

テンプレ通り魔王は勇者に倒されるのならば、魔王も死霊として仲間になればいい、と。


勇者によって殺された後、彼の体は幼馴染によって幼い死霊術士のもとに運ばれた。

死人として甦って初めて口にしたのは、戦いの最中削ぎ落した勇者の指。

幼馴染と半分ずつにして食べたそれによって、勇者の祝福の一部を得ることができた。


可愛らしいご主人様にだけ従う、好きなことが極力許される、新しい人生を始まった。



トールに与えられた祝福

①『持たざるもの』物体の重さを変化させる力

  条件:視線の中に入っていること。半径五メートル以内にあること。

②『夢描く手』錬金術

  条件:手で触れること。鮮明に思い浮かべることができること。

     使ったことがあること。

③『インベントリ』収納空間

  条件:閉ざされた空間であること。そうであると術者が認識すること。

セイに与えられた祝福

『友達100人出来るかな』使役する力

  条件:100本ある鎖で繋ぐこと

     (対象の存在力に応じて鎖の本数は変化する)


勇者の祝福

『スキル確認』相手の全てを見ただけで看破する

   条件:視ること。相手と声を交わすこと。

→トール・セイは勇者の肉片を食べたことで、名前と職業だけ見ることが出来るようになった。

  

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