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王女×死霊術士=世間知らず 異世界へ!!  作者: 鵠居士
二度ある事は三度ある。三度あることは・・・
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そろそろお暇しますか。

「我が国だけでなく、世界中の人々に希望を与え、未来を照らしてくれる彼等"英雄"を、手助けして欲しいのだ。」


英雄達に捧げていた歓迎の声が落ち着き始めると、感慨深いと涙を滲ませて三人の英雄達を見ていた皇帝が、フェウルとバルトへと顔を向けた。

それによって、歓迎の声は完全に消え、広間に存在する全員の視線が二人へと注がれる。


「もちろん、代価を払わぬなどと愚かなことを言うつもりはない。」

手助け。まるで無償で提供しろと言わんばかりの物言いに、フェウルの目は細くなり、表情も乏しいものに変化していた。

暗に非難しているのだと表現する為に作り出した表情だったが、それはフェウルの考えを的確に皇帝達に伝えてくれた。

その表情を見て、フェウルが感じ取ったそれを、威厳ある皇帝としての体面を鷹揚とした動きで示し、否定する。商人の考えにも理解のある王であると、皇帝はフェウルに示す。

「だが、そなたが商うものは、英雄が深く関わっているものだと噂に聞く。なんでも、見たことも感じたこともない技術を用いて、奇跡さえも起こすのだとか。大精霊様方も大いに関心を寄せて頼りにしているとも聞いた。」

「えぇ。私どもが扱っております商品や技術は、とある英雄がもたらした技を辺境にて受け継いできた故のもの。皇帝陛下の耳にまで届いていたとは、光栄に御座います。」

それは、大精霊達も交えて決めた設定だった。

詳しく説明をせずとも、メルリーウェ達の事情を察してみせた、ギルドの大精霊達。

そう言っておけばよいと、この設定には彼らの後押しもあり、誰かしらが情報の真偽を問い質したとしても、『書の大精霊』と『真贋の大精霊』がそれを真実だと認めてみせることとなっている。

「おぉ!やはり、そうなのか。ならば、分かるだろう。この世界に降り立ってくださった英雄が、どれだけの苦労を乗り越えて偉大な功績を残されるのか、が。この彼等に、過去に英雄が起こしてくださった偉大なる行為の成果を、どうか見せては下さらぬか。過去の英雄の恩恵で、彼等の行く末を祝福してはくれまいか。」



つまり、そちらの善意で無償もしくは格安に提供しろってことか。


隣に立つフェウルにだけ聞こえるように、バルトは呟く。

フェウルは、バルトの言葉に噴き出しそうになるのを堪え、鍛え上げている顔の筋肉を全面的に使って次なる表情を浮かび上がらせた。

「お言葉はごもっともなことと存じます。」

ですが…。

フェウルの顔には、憂いの表情が浮かんだ。

おぉ。と歓喜の声を上げかけた皇帝の声を、フェウルは遮った。

「ですが、店からこの地に至るまでに、ありがたいことに多くの商品を様々な方々に購入して頂きました。その為に、私の手元には最早一つの品も残ってはおりません。丁度、帰路につこうと考えていたところだったのです。英雄様方のお役に立ちたいとは思うものの、お渡し出来る品が無ければどうしようもありません。」

誰一人の声も挟ませるものか、という気概さえ感じ取らせるフェウルの息継ぎの間さえ判別出来ない声で紡がれる言葉。

「よろしければ、私共の店まで御出で下さい。店で御座いましたら、一流と胸を張って誇ることの出来る職人達がおります。英雄様方それぞれだけの物となる品を作り出してくれることでしょう。」

そして、フェウルは『神の御業』を用いる。

「『職人達に気に入られれさえすれば、どのような品でも生み出してくれるでしょう。』」

気に入られなければそれまで。諦めろ。という意思を込める。

「職人達は、世の職人の例に及ばず、それぞれに確固としたこだわりがあり、勇気と根性のある人間を好みます。『ですので、どうか私共が帰路に着いた後に、私共に英雄様方のみで"魔の森"を越えて御出で下さい。』そうすれば、職人達はその技術を英雄様方に惜しみなくつぎ込んでくれることでしょう。」

「そうか。…あい分かった。確かに、苦難を乗り越えてこそ英雄の名に箔がつくというもの。そうして得たものにこそ、力はあるというもの。そなたの善意に感謝しよう。」

「恐れ入ります。」

三人の、この世界の何も知らない子供達が彼等だけで行動出来るようになるのに、どれだけの時間が必要になるのだろうか。トールとセイと同郷の世界なのだとしたら、戦うことさえ知らぬ子供だ。何度も遭遇した異世界の手酷い仕打ちによって、戦うことも死にも動じない精神を手に入れているトールや、魔物を率いて世界を壊そうとした程度には人としての心を失っているセイ。この二人並になれとは言わないだろうが、迷い無く剣を振るって同じ人間を殺せるくらいにならなければ、魔の森は越えられないだろう。

そういう意図を持って『神の御業』を持って植えつけられた言葉だった。

「では、私共は急いで店へと戻る事と致します。英雄様方のご来店を、心からお待ち申し上げております。『それでは、失礼いたします』。」


そう言うと、フェウルはバルトを引き連れて、その場を後にした。呆気に取られて事の成行きを見守るしかなかったバルトの友人ニックは、バルトに腕を引かれるようにして広間から、そして城からも連れ出された。

王の許可を取っているのだから、誰一人としてフェウル達の後を追うこともなく、その前に立ち塞がるものもいない。

何の妨害もなく城を出たフェウルとバルト、そしてニックは、メルリーウェ達が待っている店へと帰っていった。



「うん。そう。フェウルさん達と帰るよ。」

その頃、商人達とのやり取りに飽きたトールは席を外し、トイレの中にいた。

商人達とのやり取りを楽しみ始めていたメルリーウェは、クインや『風花』の面々に任せ、もちろんトールが思いつく限りの護りの道具を身に付けさせた上でテーブルに残し、トールだけは店への連絡を行なう。

場所を落ち着け、帰る術を見定めてからと遅らせていた連絡は、心配で心待ちにしていたイストやセイ、無関心を装ってみせるラスにまで苦言を呈されたが、まずは無事でよかったという喜びを持って迎え入れられた。

自分達がまだ世界に居ること、それでメルリーウェが同じ世界の中で召喚され、無事で居ることは分かっていたイスト達だったが、身体は無事でも心が痛めつけられるということも充分に分かっているだけあって、心配で仕様が無かったのだと、トールは理解した。

彼等の心情に気づいただけに、申し訳ないと声だけを繋げる道具の前で、深々と頭を下げて謝った。

僕はまだ、日本人なんだな。

などと、頭を下げ終えた後に思ったことは、何だか気恥ずかしくて道具の向こう側にいるセイにも言えなかった。

"何でもいいから、道具を使ってチャッチャッと帰ってくればいいのに。"

"そうだね。車とか…。トール君も車運転出来たよね。なら、軽トラとか出して、ね。"

イストの提案に、セイがそうだそうだと同意している。

「まぁ…うん。乗れるけど。」

トイレの中にはトール一人。声は繋がっているとはいえ、周囲には誰一人としていない環境では、トールも緊張することなく声を出す事が出来る。

「この世界の道路の状況が分からないから、なんとも言えないよ。」

トールとセイが育った地は、田んぼが身近にある田舎と呼ばれる町だった。その為か、幼い頃から軽トラは身近にある第一の車だった。ノリのよい老人などになると、軽トラの荷台に何人もの子供を乗せてくれたし、時には簡単な運転も教えてくれた。家から田んぼまで全て私有地だったその老人は、背が伸びる高学年辺りになればハンドルを握らせて運転もさせてくれた。

それは公になれば非難される行動ではあったが、今のトールにとっては良い経験だった。

ハンドルとギアの操作だけという運転でも、それは扱った経験となって、トールの能力の糧となる。ゲームでも運転という行為を何度もしていることから、トールは簡単に車-軽トラ、戦車、スポーツカー、ジープなどをこの世界に生み出すことは出来た。

だが、実際に車を出して運転しようにも問題があるのだと、何回も異世界というものを経験しているトールは知っていた。

車が無い世界において、道路は酷い状況にあった。

そもそも、舗装という概念がないのだから仕方がないのもあるが、細く木や鉄などの固い素材で作られた馬車の車輪ならば振動さえ我慢すれば上手く走り抜けることの出来る道ならば存在する。だが、ゴムで出来ている車のタイヤでは動けなくなったり、下手をすればパンクする恐れもある。車の車幅が通り抜けられない道もあるだろうし、雨など降ればぬかるみによって身動きが取れなくなる。そんな事情を知っている為、車での移動は難しいとトールは判断していた。

山道などでも作業する軽トラならば、普通の車でも行けない道でも大丈夫な可能性は高い。なにより、定員などというものを考えなければ、荷台に何人でも乗れるだろう。

そう考えれば、セイが軽トラを提案したのも分かるには分かるが…。

"そうか…。そうだよね。道がねぇ…"

「何時か、工事車両を使って舗装させたら、車も出してみるけどね。」

"それも楽しそうだね。"

「この世界のことをリーウェちゃんと観察しながら、帰るから。…いざとなったら、ヘリでも出して帰るよ。」


そういったものを利用するゲームも経験した。

だから、生み出すことも出来るし、簡単な操作も理解している筈。

本当にいざとなった時の考えであり、それを使うくらいなら何らかの魔道具を生み出すことになるだろう。トールはそう考えながらも、異世界にヘリを出現させて運転出来たら面白そうだなという好奇心から、そう言ってのけた。

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