巻き込まれモブのオタクだって
メルリーウェにとって、僕であり、家族である、仲間が全員揃った。
嬉しい。
そんなメルリーウェの感情が伝わってくる。
僕も、嬉しい。
元の世界で、二度の異世界召喚のせいで失ってしまった家族。
そんな家族のような仲間がそろう。
そして、何も縛るもののない、僕たちが自由に生きることができる世界での新しい生活がまっている。
不安はある。
だって何も分からない、仲間以外の知り合いもない、世界だ。
でも、些細なものだ。
やんちゃで豪快なバルト兄さんは、庶民の生活に通じている。基本的に庶民の生活に接したことがないメンバーの中で常識とかを教えてくれる。
気まぐれで優しいイスト姉さんは、裏世界に通じている。暗殺者をしていたっていうだけあって、よく暗殺術っていうやつを教えてくれるし、犯罪にあわない方法を教えてくれる。
厳格でいて思慮深いジェウスは、貴族社会に通じている。上位貴族の出身というだけあって、動きも綺麗で隙がない。聖王国以外の土地のことや、僕たちが知らないようなことまで嫌がらずに、面白可笑しく教えてくれる、そうだなお父さんみたいだった。
セイは・・・妹かな?
小さい頃は、しっかりもので苛められてた僕を守ってくれて兄貴面してたんだけど・・・
どっちにしろ、すごい頼りになる奴に代わりない。
頭が良かったセイ。祝福で魔物なんかを敵に回さない力をもっているし、魔術の才能がある。
前の世界で、一つの血に一つの魔法っていう常識を読み解いて、少しずつだけど魔法の幅を広げていたくらいだ。この世界でも、魔術師だった男の知識を飲み干して魔術を使いこなすに決まっている。
皆に翁っていわれている、フェウルおじいちゃん。
聖神に仕える司祭さまで教皇の片腕。
僕らには優しいおじいちゃんだけど、バルト兄さんやジェノスさんが言うには教皇の敵となる勢力を退けた手腕は悪魔と噂されるほどだったそうだ。
交渉力とか人身掌握術が得意らしい。
これからの生活でも頼もしいよね。
ラストル王子様は、リーウェちゃんの異母兄で第二王子様。
冷酷無慈悲とか悪逆非道とか噂されていたみたいだけど、リーウェちゃんや僕には優しい感じでしかめられた怖い表情のせいで勘違いされている気がする。
有能で死ぬまでは政務にも関わっていたらしいけど、死霊になった後は適度に関わりながら趣味に没頭していた。趣味らしい趣味がないっていって趣味探しから始めたのが可愛いよね。絵を描いたりとか小物を作ったりとか、優秀だから何でもできちゃって困っていたらしい。
そんな王子様なら、宝飾職人も似合うと思うんだよね。
心が躍る。
こんな仲間たちと一緒に、新しい生活に向けて、
僕には、物を出すしかできないから。
ゲームとかで蓄えたもので、多分僕は物量チートってやつになってる。
でも、ゲームの中で使うことができた武器も現実の身体では使えるわけがない。
文系に無茶言わないでほしい。
だから、僕は皆に物を出すしかできない。
それが心苦しいし、あまり人と関わるのも苦手。
・・・でも、頑張ろう。
皆と仲間だと、家族だと胸を張れるように頑張ろう。




